2018.05.08

昨年に小野秀二氏を招へいの能代工業、原点「弱者のバスケット」で名門復活の気配

能代カップのホストチーム、能代工業が躍動 [写真]=青木美帆
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 5月3日から5日、秋田の能代市総合体育館で、「第31回能代カップ 高校選抜バスケットボール大会」が開催され、夏に地元インターハイを控える中部大学第一高校(愛知県)が全勝優勝を果たした。

 春先からこの時期にかけて、男子高校バスケ界隈では多くの交歓大会が開催されるが、能代カップはその中でもひと際特別な大会だ。多いときは2000人ほどにもなる観客が見つめる中、選りすぐりの強豪校たちがダブルヘッダーでメインコートを戦う。

 12月のウインターカップを見越してチームを作っていく各校にとって、今大会における勝敗はあまり意味がない。各校が様々な戦術や選手の組み合わせを試しながらレベルの高い相手と切磋琢磨し、チームの可能性を探った。

 その中でも、優勝した中部大第一は非常に大きな「発見」に成功している。

 中部大第一はこれまで、中村拓人、青木遥平、矢澤樹、小澤幸平、ブバカー・ンディアイエというスタメンに、深田怜音、バトゥマニ・クリバリ、井戸光邦らが絡むスタイルで戦っていた。大会2日目以降はアクシデントによって小澤と深田を入れ替えざるを得なくなったが、これが意外にもフィットした。

「今までは小澤とブブカー(ブバカー)、怜音とバット(バトゥマニ)という組み合わせだったけれど、試したら思いのほか良かったですね。チームは絶えず変化するもの。いろいろなことを試してみるといいプレゼントが来るのかなという印象です」(常田健ヘッドコーチ)

 星野京介(現大東文化大学1年)、坂本聖芽(現東海大学1年)という2大エースは抜けたものの、層の厚さと機動力が増したことで、得点力は向上。今大会はスティールからの速攻で多くの得点を稼ぎ、非常に完成度の高いバスケットを見せた。

全勝優勝を果たした中部大第一 [写真]=青木美帆

 もう1つ、今大会で特筆すべきは、ホストチームである県立能代工業高校(秋田県)の躍進だ。

 盛實海翔(現専修大学3年)を擁してウインターカップ3位に輝いた2015年を境に、能代工業は低迷期を過ごしていた。2016年、2017年はウインターカップ不出場。能代カップでも2年連続で1勝もできていない。

 しかし昨年よりOBで日立サンロッカーズ(現サンロッカーズ渋谷)、アースフレンズ東京ZのHCを務めた小野秀二氏がアソシエイトコーチとして指導にあたるようになり、有望な下級生も多く入部。風向きが変わり始め、今大会は2勝を挙げた。

 相手がボールを下げたところで手を出す。留学生のリバウンドは着地のタイミングを狙う。平面でしつこく粘り強く守り抜く――。サイズや身長に恵まれない選手を勝たせる、能代工業の原点でもある「弱者のバスケット」に、経験豊富な小野アソシエイトコーチの戦術が加わり、小気味いい戦いぶりを見せた。

 洛南高校(京都府)の吉田裕司HCは、大会の総括を聞いた一言目に「久々に強い能代が復活しつつある。これはうかうかしていられないと思った」とコメント。明成の佐藤久夫HCも選手たちに、能代工業のマンツーマンを学べと話したという。ライバルチームたちを戦々恐々とさせる、名門復活の息吹が感じられる大会となった。

 最後に、今大会で輝いた選手を紹介して、締めくくりとしよう。

中村拓人(中部大第一3年)

185センチの長身ガード。テクニックを駆使した幅広い得点パターンも魅力的だ。今後の課題は余裕を持ったゲームメイクと、言葉を使ったリーダーシップ。

飯尾文哉(洛南3年)

昨年は先輩たちに任せていた部分が多かったが、今年は「アベレージで20点以上決められる選手になりたい」と意気込むエース候補。鋭いドライブから得点を量産した。

■浅井修伍(福岡大学附属大濠3年)

197センチの長身を持ちながら3ポイントを打てる、ピカイチの将来性を備えた選手。昨年まで線の細さが目立ったが、今年は10キロの増量に成功し、たくましさが増した。

■新田由直(能代工業3年)

1年次からコートに立ち続けるチームの魂。188センチの上背はインサイドプレーヤーとしては小さいが、泥臭く体をぶつけ、ボールに絡んでチームを鼓舞し続けた。

文・写真=青木美帆

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