6月22日から24日まで和歌山で行われた「第65回近畿高等学校バスケットボール大会」。男子は洛南高校(京都府)が3年ぶり33回目の、女子は大阪薫英女学院(大阪府)が10年連続32回目の優勝を遂げた。
優勝した大阪薫英の安藤香織コーチが言う。
「選手たちは決勝戦の内容がよくなかったので微妙な表情をしていましたが、その悪い内容で勝ったのだから私の方から『これを自信にしよう!』と言いました」
一般的に多いのは選手が勝って喜び、コーチは勝っても「内容が良くない」と厳しい表情になるのだが、今大会の大阪薫英はその逆をいく形となった。むろんそれには理由がある。
「今大会は”チーム力”と”チャレンジ”をテーマにしていたんです」(安藤コーチ)
チームの精神的支柱であり、プレー面でもチームを引っ張るキャプテンの北川聖が左足首をひどくネンザし、今大会の出場を見合わせることになった。さらに6月18日に大阪府北部を襲った大地震で学校の体育館の天井が落ちた。近くの公立高校に体育館を借りるなどをして対応を試みたが、今大会に向けた詰めの練習は決して十分なものではなかった。さらに不運は続く。近畿大会の最終日、準決勝まで陰に陽にチームに貢献してきたパワーフォワードの内海海が、決勝戦の前半でケガのため途中退場を余儀なくされてしまったのだ。
そんな中での優勝である。内容は決して喜べるものではなかったかもしれないが、一人ひとりがステップアップし、前半の10点ビハインドから逆転優勝につなげたのである。
「個人的には今大会の10連覇も狙っていました。選手に言うと硬くなってしまうので言いませんでしたが、これだけが(前任の故)長渡俊一先生から続いているものなので」
苦しい状況の中で勝ち取った10連覇は選手にとっても、安藤コーチにとっても次への大きなステップにつながる勝利だったわけだ。
一方の決勝で敗れた大阪桐蔭高校(大阪府)は、昨年のウインターカップ優勝から大幅にメンバーが入れ替わり、チームスタイルもガラリと変わった。そうでありながら、目を見張るようなトランジションと、正確な3ポイとシュートで大阪府のライバルを追い詰めた。しかし「気を付けよう」と指示して入った後半に間が生まれてしまい、近畿大会初優勝がその手中からポロリと落ちてしまった。
「替わりのメンバーが少ないので、インターハイまでには替わりの選手を鍛えたい」
森田久鶴コーチは府内でもしのぎを削り合う全国レベルの相手との対戦の中で、改めて課題を明確にしていた。
3位は奈良県1位の奈良文化高校と、京都府1位の京都精華学園高校。どちらも決勝に進んだチームを苦しめる戦いをしていただけにインターハイでの活躍に注目したい。
文・写真=三上太