2018.07.31

【インハイ女子展望】今夏はチームとしての組織力に注目

本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 2018年は年齢制限のない女子日本代表候補に2人の高校生プレーヤーが選ばれた。しかし彼女たちを擁するチームがそのまま高校バスケット界でも上位に進めるとは限らない。「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」女子はチームとしての組織力が注目される大会になりそうだ。トーナメント表を4つのブロックに分けて、展望してみよう。

 左上のブロックは4つのブロックの中で最も激しい戦いが予想される。安城学園高校(愛知県)は県予選こそ桜花学園高校(愛知県)に敗れて2位での出場となったが、その後に行われた東海大会でしっかりとリベンジを果たし、インターハイの第1シードを勝ち取っている。しかし順当に勝ちあがれば、ベスト8を賭けた3回戦で岐阜女子高校(岐阜県)と当たることになる。岐阜女子は東海大会で3人の主力選手を欠きながら、意地と粘りで3位の座をもぎ取った。伝統的なディフェンスは安城学園ならずとも攻略は簡単でないだろう。そこを突破したチームが対戦するのは、それぞれ地方ブロック大会でベスト4以上に入った京都精華学園高校(京都府)、県立足羽高校(福井県)、県立津幡高校(石川県)と、札幌山の手高校(北海道)の熾烈な戦いを制したチームになりそうだ。

第1シードに入った安城学園 [写真]=加藤夏子

 左下のブロックは九州ブロック大会を制した精華女子高校(福岡県)と、四国ブロック大会を制した聖カタリナ学園高校(愛媛県)が半歩リードしている。どちらも強豪であることは間違いないが、特に昨年のウインターカップに出場できなかった聖カタリナ学園が全国の舞台でどんな反撃の狼煙を上げるのか。しかしそれぞれ3回戦で対戦する可能性が高い大阪桐蔭高校(大阪府)と明星学園高校(東京都)も組織としての力が高い。絶対的なエースがいない分、インターハイ予選や地方ブロック大会で露見した課題をいかに克服できているかが勝敗を左右しそうだ。

 右上のブロックも左上のブロック同様の激戦が予想される。第3シードは、今年度の日本代表候補にも選ばれた奥山理々嘉(3年)を擁する八雲学園高校(東京都)。しかし初戦で北信越ブロック大会2位の開志国際高校(新潟県)との対戦が予想される。また3回戦で対戦する可能性が高い浜松開誠館高校(静岡県)は高い組織力が持ち味で、全国のトップクラスと引けの取らない戦いができる。ベスト4を賭けた争いには桜花学園が勝ちあがってきそうだ。今年の桜花学園はスーパースターこそ不在だが、選手らがそれを十分に認識し、攻守のバランス、内外のバランスを非常にうまく取っている。その桜花学園にしても2回戦で昭和学院高校(千葉県)と当たると予想されるなど、序盤から気の抜けない戦いが待っている。中国ブロック大会を制した県立徳山商工高校(山口県)の戦いぶりにも注目したい。

180センチのオールラウンダー、奥山は今大会注目の選手だ [写真]=加藤夏子

 右下のブロックは第2シードの大阪薫英女学院高校(大阪府)と、奥山と同じく今年度の日本代表候補に選出された今野紀花(3年)を擁する聖和学園高校(宮城県)が、こちらも半歩リードしている。しかし大阪薫英女学院が3回戦で当たる可能性の高い県立四日市商業高校(三重県)も力はある。東海ブロック大会こそ安城学園に敗れてベスト4に入れなかったが、それに近いだけの力を持っており、決して侮ることはできない。また聖和学園が2回戦で当たるのは奈良文化高校(奈良県)と県立小林高校(宮崎県)の勝者だが、その2チームも近畿ブロック大会、九州ブロック大会でそれぞれ上位に勝ち進んでおり、虎視眈々と下剋上からの上位進出を狙っている。

日本代表候補メンバーにも選ばれた今野 [写真]=徳原隆元

 今年は大会直前まで「FIBA U17女子ワールドカップ」が行われており、上位進出が予想されるチームから主力選手が参戦している。もちろんU17女子日本代表にはワールドカップでの活躍を期待するが、視点をインターハイに移せば、その影響が各チームにどう出るかも勝敗を左右するだろう。それだけに今年のインターハイはエースの活躍というよりも、チームとしていかに組織力を高めているかに注目したい。

文=三上太

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