2018.08.04

明成に完敗した尽誠学園…今こそ偉大なる先輩、渡邊雄太の言葉をかみしめるとき

2回戦で姿を消した尽誠学園[写真]=兼子慎一郎
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 明成高校(宮城県)と尽誠学園高校(香川県)の対戦は2回戦屈指の好ゲームになるだろう。

 そう予想していたが、ふたを開けると87-75で明成の完勝だった。尽誠学園は頼みのアウトサイドシュートが効果的に決まらず、“尽誠バスケの真骨頂”ともいうべき球際での争いでも明成を上回ることができなかった。

 「ゲームでも負けたけど、勝ってほしいポイントでも負けてしまいました。選手には『尽誠バスケ、ここにあり』というところを見せてほしかったですね。(明成を相手に)けっして簡単なことではないと思うんですけど、そこにはこだわりたかったです」
尽誠学園の色摩拓也コーチはそう振り返る。

試合は明成が12点差で勝利し、3回戦へ駒を進めた[写真]=兼子慎一郎

 選手たちも今頃、改めて自分たちが自分たちのバスケットをできずに負けたことを悔いているだろう。もしそうであるならば、数日前に先輩から聞いた話を思い出してほしい――。

 以下、その先輩の言葉。

「僕はサマーリーグが始まるときチームで3番目のユニットにいたんだ。でも夢であるNBAのコートに立つためには、たとえそのポジションでも準備だけは怠らなった。そしていざサマーリーグが始まると6番手、7番手として起用されることになったんだけど、それまでしっかりと準備をして、努力もしてきたから自信はあった。何が言いたいかと言うと、色摩先生がよくおっしゃっている『準備』をしっかりしてほしいということなんだ。また先生はある試合で『想定外のことを想定内にしてくれる選手がいた』と言ったそうだけど、僕らのときにはそんなことは言ってくれなかった。自立している選手がいたってことだよね。そう言われる選手がいたってことは、その代がうらやましいし、一方で(言われなかった自分たちにとっては)悔しい」

 明成との試合でも、入ることを前提にチームを作ってきたシュートが入らないという想定外のことが起きたときに、たとえばファウルをもらったり、リバウンドやルーズボールを取ってセカンドチャンスを作るといった、「想定外を想定内にする」選手が出てこなかった。つまりは自立ができていなかったわけである。

 またその先輩はこんなこともしてくれた。

 色摩コーチは練習に入らなくてもいいと言ったが、「いや、やらせてください」と練習に入り、3対3のラリーをすることになった。すると先輩が最初にしたのは、チームメートになった2人に「名前は?」と聞いたそうだ。

 その瞬間、色摩コーチは選手たちを集めて、こう言ったそうだ。

「これが渡邊や!」

日本に帰国した際、渡邊は尽誠学園を訪れていた[写真]=Yasushi KOBAYASHI

 以下、色摩コーチの述懐。

「バスケットはコミュニケーションが必要ですよね。渡邊くらいなら後輩たちに『キミ』でもいいわけです。でも彼はそうせず名前を聞くことでより緊密なコミュニケーションが取れるようにしたんです。練習後にも何かしゃべってほしいとお願いしたら、さっきのような(上記)の話をしてくれたんですね。彼はこちらが思っている以上のことを言ってくれるんです。そのあとで『お前、すごいなぁ』って言ったら、何て言ったと思います? 『高校時代に色摩先生から学びました』って。なんてできた子なんやって思いましたね。NBAに近づいても、彼はそれだけ謙虚なんです」

この敗戦を糧に尽誠学園は前に進む[写真]=兼子慎一郎

 最後の話はちょっとした笑い話だとしても、東海インターハイで敗れた尽誠学園にはそうした先輩――NBAのメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んだ渡邊雄太が示してくれる最高のお手本がある。それはプレーそのものというより、尽誠学園のバスケットがどういうものであるか、それをすることで自分がどう成長できるのかを示すものである。

 選手たちはその言葉を今、どう受け止めるか。明成戦の敗北と、渡邊が示した言葉の意味を合致させることができれば、冬にはもう一回り成長した尽誠学園が見られるだろう。

文=三上太

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