2018.08.05

ベスト4返り咲きまであと一歩に迫った東京成徳大学、パワーの源は朝夜7杯のごはん

「悪い流れを断ち切れなかった」と試合を振り返った東京成徳大の洪潤夏[写真]=山口剛生
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 2009年の大阪インターハイ以来のベスト4はもうすぐ目の前だった。2009年といえば山本千夏や篠原恵(ともに現富士通レッドウェーブ)を擁し、渡嘉敷来夢(現JX-ENEOSサンフラワーズ)らのいる桜花学園(愛知県)と頂点を争っていたときである。

 東京成徳大学高校(東京都)。

 吉田亜沙美(現JX-ENEOS)らの代に千葉インターハイを制し、それ以前にも3回のインターハイ女王になったことのある、いわば古豪である。しかし近年はもうひとつ全国上位の壁を乗り越えられずにいた。

 だが東海インターハイでは3回戦で、女子日本代表候補にも選出された今野紀花を擁する聖和学園高校(宮城県)を破って、ベスト4進出の可能性は高まったかに見えた。四日市商業高校(三重県)との準々決勝でも、前半は間違いなく東京成徳大学のリズムでゲームは進んでいた。いや、それでもリードが8点に留まっていたのは、もしかすると四日市商業のペースだったのかもしれないが、少なくとも前半の東京成徳大学は遠香周平コーチのプランどおりにゲームを展開できていたはずだ。

 しかし後半に入ると四日市商業がリバウンドを支配し始め、また田中万衣羽が次々に3ポイントシュートを沈めてきて、前半のリードを第3Qで吐き出してしまった。そして第4Qの立ち上がりで逆転を許すと、巻き返すきっかけをつかめないまま敗れてしまった。68-77である。

 ポイントガードの洪潤夏が言う。

「途中からリバウンドを取られ始めて、そこから悪い流れを最後まで断ち切れませんでした。オフェンスではゴールに向かわず、逃げたプレーをしてミスをしてしまいました。そうした弱さがベスト4に行けない理由だと思います」

 前半はボールを持っている選手がドライブを仕掛け、ボールを持っていない選手もゴールにカットするなど、積極的なプレーが多かった。リバウンドやルーズボールへの意識も高く、何より球際の争いで四日市商業を圧倒していた。それがあったからこそ「東京成徳大学が久々にベスト4に入れるのでは」と感じたのだが、後半になるとそれらが急に影を潜めてしまった。あの前半のパワーはどこへ行ってしまったのか――。

 聞けば「愛知に来てもご飯をたくさん食べているんです。朝はお茶碗3杯食べて、夜は大きめのお茶碗、どんぶりより少し小さいサイズですけど、それで4杯食べています」と洪が教えてくれた。それが前半のたくましくて、パワフルなプレーを生み出したわけだが、後半はそのエネルギーさえ切れてしまったようだ。

 ただインターハイに向けて取り組んできた東京成徳大学の新たなバスケットは着実に進化してきている。前からディフェンスを仕掛け、チェンジングディフェンスで相手の目をそらし、オフェンスでもコート全体を使い切る。ボールマンはもちろん、オフボールの選手も裏を突くなど、相手の嫌なところを突いてくる。フィジカルコンタクトもご飯の力で簡単に負けない体になりつつある。

 遠香コーチは言う。

「そうしたバスケットはまだ始めたばかり。もちろん反省は大事ですが、このメンバーで全国のベスト8に来たことは評価していいと思います。自分たちのバスケットを信じて、これからの練習に取り組めば、その延長線上にウインターカップがあると思っています」

 古豪・東京成徳大学は今、何度目かの進化の途中にある。

「このメンバーで全国のベスト8に来たことは評価していい」と語った東京成徳大の遠香コーチ[写真]=山口剛生


文=三上太

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