2018.08.06

主力を欠いた福大大濠、悔しい敗戦ながらも堂々とした見事な戦いぶり

土屋大輝
深刻なケガを抱えながらも3回戦のコートに立った土家大輝 [写真]=山口剛生
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 主力がいない。それが何だというのだ。

 福岡大学附属大濠高校(福岡県)が開志国際高校(新潟県)を相手に見せた怒とうの巻き返しは、そう言わんばかりの圧倒的な気迫があった。

 何度も報じているように、「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」の福大大濠はU18日本代表活動で主力3人が不在。これを早くから見越して準備を積んできたが、1回戦の美濃加茂高校(岐阜県)では、司令塔で得点源の土家大輝が右ひざのじん帯損傷という深刻なケガを負った。

 2回戦は出場を見送り、3回戦は治療の末にギリギリの状態で出場。「二次傷害が起きないことを確認した上で、痛みを覚悟でがんばらせましたが、後半は足にきてキレがありませんでした。3人いない練習はしてきたけど、4人いない練習はさすがにしていなかったですね」と片峯聡太コーチは明かした。

相手のシュートを防ぐ木林優 [写真]=山口剛生

 前半を36-48で折り返し、後半は一気に点差を広げられた。第4クォーター開始3分時点でのビハインドは25点。しかしここから一挙7連続得点の猛攻を仕掛ける。木林優や平松克樹の3ポイント、田邉太一らの速攻が決まり、試合終了まで3分を残して10点差まで追いあげた。

 特筆すべきは、その途中で土家が5ファウルにより退場したことだ。その後コートに立ったのはキャプテンの山本草大以外、全員下級生。エースの退場で一気にトーンダウンしてもおかしくない状態で、その勢いはいよいよ増した。最後は73-86で敗れはしたが、片峯コーチが今大会のテーマに掲げた「堂々とプレーすること」を体現した試合だったと言える。

 今大会に限らず、今季の福大大濠はどんなに点差の離れた試合でも「最後まで戦い抜く」という強い意志が感じられるチームだ。その中心にいる山本は、大会前からチームメートにこんな言葉を掛け続けたという。

「4人抜けようが、5人、6人抜けようが、日本一という目標は変わらないし、負ける気はしない」

主力の多くを欠いても、キャプテンの山本は最後まで諦めずにチームを鼓舞 [写真]=山口剛生

 山本はキャプテンとして、個の強さではなくチームとしての強さを追求しており、「日本代表の3人が合流して、土家が回復したとしても、福大大濠というチームが強くなるわけでは決してない」と言いきる。

 この試合の前にも「たとえ土家が出られなくても目標は絶対変わらない」と繰り返し、試合中も会場に響き渡るような大きな声で仲間を鼓舞した。片峯コーチは終盤の追いあげを「山本以外全員下級生で、あそこまで気持ちを出せたのは大きな収穫」と評価したが、田邉は「みんながいくら下を向いても、草大さんが『まだまだ』と支えてくれたのでがんばれました」と振り返る。

14得点7リバウンドを挙げた田邉 [写真]=山口剛生

 今大会、福岡県勢はともに決勝戦を前にトーナメントから姿を消した。つまり、ウインターカップの出場権は1チームにしか与えられない。今季、福大大濠と福岡第一高校(福岡県)は公式戦で6回対戦しており、いずれも福岡第一が勝利。福大大濠が国内最難関とも称される福岡県予選を突破するためには、理想のチームを完成させることが必要不可欠だ。

 11月3日。運命の一戦で彼らの真価が問われることになる。

文=青木美帆

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