2018.08.09

「崖っぷちからの覚醒、そして飛躍」開志国際・和田蓮太郎

準決勝、決勝の大一番ではそのポテンシャルを思い切り発揮した開志国際の和田蓮太郎[写真]=山口剛生
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

「お前にはもう期待しない」

 そんな言葉を指揮官に突き付けられた心境はいかほどだったのだろうか。

 昨年のウインターカップ予選に敗れて以降、開志国際高校(新潟県)の和田蓮太郎は暗闇の中でもがいていた。

 197センチの長身がありながら走力があり、3ポイントやドライブもできるオールラウンダー。中学時代は本人いわく「リバウンドとミドルシュートくらいしか武器がない選手」だったが、富樫英樹コーチに見込まれ次々と新しいプレーを授けられた。

 伊藤領(現東海大1年)という大エースが卒業したチームの核に、和田を据えたい。富樫コーチにはそんな思惑もあったのかもしれない。小池文哉は新チーム発足当初を「自分たちが怒られない時でも和田はずっと怒られていた」と振り返る。和田自身も怒られるのは期待の表れだということをよくわかっていたが、調子はますます落ちた。

「がんばろうとしすぎて空回りして、ミスが多くなって逆に落ち込んでという負の連鎖で…。北信越大会の時は活躍するどころか、試合にもあまり出られなくなりました。スタートで使ってもらってもダメなプレーをしたらすぐに下げられて、すごくつらかったです」

 そしてインターハイ前に告げられた、冒頭の言葉。どん底の状態で入った大会でも和田は存在感を発揮することができなかったが、下級生の頑張りや、ダブルキャプテンを務める小池と小栗瑛哉がチームを引っ張る姿を見て、ついに自分自身の壁を越える。

身長197センチ、高い打点から放たれるシュートが和田の魅力だ[写真]=山口剛生


「これが最後。自分がもうやるしかない」

 試合前には自分にそう言い聞かせ、準決勝、決勝は見違えるように活躍した。準決勝の明成高校(宮城)戦では16得点10アシスト、決勝の中部大学第一高校(愛知県)では18得点11リバウンドと、異なる項目でダブルダブル(得点、アシスト、リバウンドのいずれか2つの項目で10以上のスタッツを残すこと)を達成。これまでは「器用貧乏」(富樫コーチ)に働いていた彼のオールラウンドなプレーが、大舞台でようやく真価を発揮した形だ。

 富樫コーチは決勝終了後、ひとしきり初優勝の感想を語ったのちに、取材陣の質問をさえぎるように「うれしい誤算だったのは和田」と話した。「やれるなら最初からやってくれよとも思いましたけどね」と笑いながら、なおも「うれしい……」と噛みしめるように言葉を発した。

 この夏、自身のリミッターをはずすことに成功した、全国最強の大型オールラウンダー。ウインターカップではどのような怪物に成長しているか、今から楽しみだ。

まだまだ限界は見えない。将来どのような選手に育っていくか、楽しみな逸材だ[写真]=山口剛生


文=青木美帆

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