2019.12.23

最後は力尽きるも、エース・佐賀の離脱をみんなでカバーした名古屋女子大

名古屋女子大学の青山は3ポイントシュート3本を含む19得点を奪取した[写真]=新井賢一
取材歴17年目でミニバス、中学、高校、大学、トップリーグに日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

ウインターカップ一週間前に襲ったアクシデント

 コート上にエースの姿はなかった――。

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。33年ぶりの出場となった名古屋女子大学高校(愛知県)は、1回戦で前回大会で3位となった昭和学院高校(千葉)に挑んだ。

 試合は、前半を終えて5点ビハインドを負う展開となったが、名古屋女子大は後半、ディフェンスから活路を見出し、何度も何度も追い上げを図る。しかし、最後は高さで優位に立った昭和学院に要所でのシュートを沈められて敗退。好ゲームを演じたものの、初戦突破はならなかった。

「キツい試合でした。言い訳になってしまうけれど、佐賀(藍葉/3年)が1週間前に膝のケガをしたことでチームを立て直し切れなかった。もう少しやりようがあったと思うのでそこは私の責任です」と名古屋女子大の後藤慎太郎コーチは試合を振り返った。

 指揮官が名前を挙げた佐賀は、1年生の頃から主力を務めた同校のエース。昨年の地元・愛知開催のインターハイでは愛知県予選で死闘を勝ち抜きインターハイ出場を決める原動力となった選手だ。

 今年はインターハイの出場枠が愛知県女子は1枠だったため、夏の全国大会出場は絶たれたが、それでも6月の東海大会では佐賀の活躍もありベスト4。しっかりと結果を残してきた。

 そして桜花学園が東海大会優勝、インターハイ決勝進出(優勝)を果たしたことでウインターカップ出場枠が愛知県は3枠となると、安定した強さで県予選を勝ち上がり、33年ぶり2回目の出場を決めたのだ。

 しかし、大会直前でのポイントゲッターの戦線離脱。これには得点面だけでなく「佐賀はラストパスを出せるので、彼女がいないとターンオーバーが増えてしまう」と後藤コーチは言う。

 それでも、試合では「藍葉の分も私がもっとやらないと」という青山美瑛(3年)を中心に小河路理子(2年)、佐藤宏美(3年)らが気を吐く。中でも佐賀と一緒に1年生の頃から試合経験を重ねてきた青山は、佐賀のケガに当初はショックを受けたものの、「辛いこともあったし、練習もうまくいかなくてみんな下向いていた時もありました。でも、それで私も下を向いてはダメだと思い、みんなの前では上を向こうと思ってやってきました」と積極的なプレーでチームメイトを鼓舞した。

 これには後藤コーチも「青山が平常心で引っ張ってくれた。すごく助かりましたし、彼女のおかげでチームも立ち直ることができたと思います」とコメントした。

ベンチから大声でチームメイトを励ました名古屋女子大学の佐賀[写真]=新井賢一

エース・佐賀が同級生への手紙に託した思い

「1週間前のケガは、最初は立ち直れなかったのですが、プレーでは引っ張ることはできないけれど、外から見て声を掛けたり、全国で勝てるようにサポートしようと思いました」と率直な思いを語ったのは、今回、残念ながらコートに立つことができなかった佐賀。

 そんな佐賀は試合前、スターターの3年生である青山、佐藤に手紙を書いたという。

「1年生の頃から3人で試合に出ていたのに、最後に私がケガをして2人に迷惑を掛けてしまいました。全国の舞台で、私は試合に出られないけれど2人には頑張ってほしいと思って書きました」と佐賀は言う。

 もちろん、これに青山らが奮起したのは言うまでもない。ベンチから試合を見ていた佐賀は「外から見た時に一生懸命ボールを追ったり、走ったり、外から見ていて分かったことがたくさんありました。それに私がケガをしてからはプレー面だけでなく、引っ張っていく立場も美瑛に託してしまい、負担は大きかったと思うけれど、それ以上に美瑛も頑張っていたと思います」と語った。

 1年生の頃からキャリアを積み、強豪がそろう愛知県の中で着実に力を付けてきて、ようやく最終学年で迎えたウインターカップ。「昨年のインターハイは初戦で負けてしまったので、今年は全国で勝つという目標でやってきました。ウインターカップでは一つでも多く勝って“名女”の名を全国に知らしめたかったので、そこは悔しいです。でも、外からみんなを応援できて、頑張っている姿を見れたことは良かったです」と佐賀は、はっきりとした口調で語った。

 悲願となる全国での勝利はならなかった。だが、大会直前でエースを欠きながらも、それにめげず、ハードなディフェンスやルーズボールとスタイルをしっかりと試合で体現したのは、これまで培ってきたチーム力の成果といえる。そして最後の最後まであきらめなかった姿は、多くのバスケットファンの目にしっかりと焼き付いたはずだ。

文=田島早苗

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