2020.10.19

【動き出した高校バスケ】福岡第一のダブルキャプテンが語る「コミュニケーション力で目指すは冬の3連覇」

今季の福岡第一の中心メンバー、(左から)松本宗志、ハーパージャン ローレンス ジュニア、キエキエ トピー アリ [写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 高校バスケが動き出した。インターハイ、国体が中止になった今年、高校バスケ界の希望となっているのが12月に開催する「ウインターカップ」。現在は都道府県予選の真っ最中だ。日本一を目指す強豪校はコロナ禍の中、どのようにチーム作りを進めているのだろうか。はじめに紹介するのはウインターカップ3連覇を目指す福岡第一。井手口孝コーチとダブルキャプテンを務める松本宗志、ハーパージャン ローレンス ジュニアに話を聞いた。

井手口孝コーチ「チーム力が問われる年になる」

「当たり前の日常のありがたさに気づかされる毎日です」と語った福岡第一の井手口コーチ


 10月上旬、新潟県胎内市バスケットボール連盟主催の交流会が行われた。昨年は「胎内カップ」の名で開催された大会だが、今年は感染症対策のもと一般の観客は入れずに「交流会」という形で開催し、地元の開志国際をはじめ、福岡第一(福岡)、東山(京都)、福島南(福島)が参加。どこのチームもケガ人がいたため万全のロスターではなかったが、そんな中で全勝したのは福岡第一。井手口コーチは勝敗よりも先に、「練習試合ができるだけでも喜んでいます。健康と平和がないとスポーツはできないのだと、当たり前の日常のありがたさに気づかされる毎日です」と語っていた。

 九州地区はブロック新人大会が3月開催だったために、九州の新人チャンピオンを決定する前にすべての公式戦が中止になった。今年はどこもチーム作りには苦労しているが、ウインターカップ連覇中の福岡第一も例外ではない。

 福岡第一では休校となった春先の約1カ月半、選手たちは寮生活ではなく、自宅に帰省して生活を送っていた。そのため、自宅で各自がトレーニングをしていたが、緊急事態宣言が解けて本格的に部活動が再開したときに、数人の負傷者が出てしまった。コロナ禍でのチーム作りの難しさを井手口コーチはこう語る。

「自粛期間中、それぞれ体は動かしていたけれど、フロアで動いていないので感覚が違ったようで、コンディショニングの面ではつまずいたスタートになりました。これは焦らずにチーム作りをするしかないな、という状態でしたね。夏には九州東海大(熊本)や延岡学園高(宮崎)と練習試合をしましたが、九州内でも福岡に入れない県があるので、他県とはなかなか練習試合ができない状態でした。

 例年ならば、新人戦のあとは春休みに遠征をして強豪校と対戦し、地区大会、インターハイと経験していくのですが、今年は試合ができないから強いのか弱いのかもわかりません。そんな状態でしたが、秋からは九州外に出ることが可能となり、9月に茨城、10月に新潟に遠征をして他校と交流を図れるようになりました。

 高校バスケは、ありがたいことにウインターカップを開催する予定なので、僕たちもウインターカップで優勝することを目標に頑張っています。でも学校のスポーツクラスの仲間には大会がないまま引退した生徒もいます。スポーツをする仲間として、彼らの気持ちをわかっておこうと話をしていますし、そう振舞える選手であってほしいです」
 
 今年の福岡第一はウインターカップ3連覇が注目される存在。現在のチーム力を井手口コーチは、「去年から主力が入れ替わったこともあり、例年に比べてチーム作りは遅れています。また、どこもそうかもしれませんが、今年のウインターカップはインターハイをやるような実力になるのでは、と思いますし、うちのチームもここからチーム力を上げていくところです。そういう意味では、これまでの財産や経験、結束といったチーム力が問われる年になります」と語る。

インサイドの軸となるキエキエ トピー アリ [写真]=小永吉陽子


 ただ、そうした状況でも、昨年の国体(出場資格はU16)を制覇した主力、ハーパージャン ローレンス ジュニアとインサイドのキエキエ トピー アリを軸としたプレッシャーディフェンスからの速攻が健在であることは、全勝した胎内バスケットボール交流会で示すことができた。11月3日にはウインターカップ県予選決勝(決勝リーグ)があり、11月下旬には大学生やBリーグ勢と対戦チャンスがある天皇杯に今年も出場する。公式戦で腕試しをしながら、チーム力を高めていく福岡第一だ。

ハーパージャン ローレンス ジュニア「大濠との県決勝が今のモチベーション」

ダブルキャプテンのローレンス ジュニアは「先輩たちのように僕たちも自分たちの代で優勝したい」と語った [写真]=小永吉陽子


「インターハイは中止だと覚悟していましたが、本当に中止が決定したときはショックで悔しくてたまりませんでした。でも、悔しい気持ちのままでいても何も変わらないので、自分にできることをしようと、気持ちを切り替えました。

 自分はディフェンスを得意としています。去年の天皇杯で千葉ジェッツと対戦したときに、プロの選手を相手にディフェンスで沸かせることができたので自信になりました。その強みであるディフェンスから速攻という伝統のバスケはできているけど、まだミスが多いです。自分は松本と一緒にキャプテンをやっていますが、去年の河村さん(勇輝、東海大1年)やその前の松崎さん(裕樹、東海大2年)のようにまとめる力がないので、もっとチームをまとめて、ポイントガードとして自分が点を取るだけじゃなく、周りに点を取らせることも意識したい。

 今のモチベーションはウインターカップ県予選の決勝。大濠との対戦になると思うので、ここでしっかり勝って、ウインターカップ3連覇に照準を合わせたいです。先輩たちのように僕たちも自分たちの代で優勝したい」

松本宗志「僕らには冬がある。他競技の選手の分も頑張りたい」

「全国の強いチームと経験を積んでいく時期にコロナウイルスが流行ってしまったので、九州の新人戦もなく、春休みに遠征もできず、なおかつチーム練習もできずに大変な状況でした。インターハイで連覇する気持ちでいたので、インターハイが中止になったのは本当に悔しかったです。でもこれは、全国の高校生みんなが同じ気持ちだし、自分たちにはウインターカップがあるので切り替えました。他の競技の選手が引退していく中で自分たちは試合ができるので、引退した競技の選手の分も、冬に向けて頑張っていきたいです。

 自分たちの代はコミュニケーションを取ることに長けています。去年までは上下関係がしっかりした中でコミュニケーションを取っていたのですが、今年の3年生は面倒見が良くて優しい性格の選手が多く、1、2年生も意見を言って、3年生が「それならそうするか」という感じで練習をやっています。練習外でもまとまっているので、不安や焦りはなく、チームが一つになっていると感じています。

 自分は泥臭いプレーで貢献し、精神的にチームの支柱となれるように頑張ります」

文・写真=小永吉陽子

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