2020.10.28

【動き出した高校バスケ】東山の絶対的司令塔、米須玲音の決意「日本一を目指して僕は鬼になります!」

東山をけん引する米須とムトンボ・ジャン・ピエール[写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 高校バスケが動き出した。インターハイが中止になった今年、高校バスケ界の希望となっているのが正式に開催が決定した『ウインターカップ』だ。日本一を目指す強豪校はコロナ禍の中、どのようにチーム作りを進めているのか。チーム紹介の第2回は、優勝候補の呼び声が高い東山高校(京都府)。大澤徹也コーチとキャプテンで司令塔の米須玲音にここまでのチーム作りとウインターカップにかける意気込みを聞いた。

大澤徹也コーチ「3年生の結束を中心に日本一を目指す」

選手たちを指導する大澤コーチ[写真]=小永吉陽子


 1年生の頃から司令塔を務める米須玲音と206センチのサイズとリーチの長さを持つムトンボ・ジャン・ピエールを中心に勝負の年を迎えている東山。そんな経験豊富な選手がそろう強豪校でも、コロナ禍でのチーム作りは難しいものだった。大澤コーチは言う。

「コロナ禍でのチーム作りには『これ』という明確な正解がなくて、いろんな先生方と意見交換をしました。またインターハイや予選がなかったことで、選手たちのメンタルをどう盛り上げていくかが最重要課題でした。そうした中で、ウインターカップがあると信じることが僕たちの希望でしたね。冬に日本一になることを最終目標に、その前の新潟遠征や京都府予選で頑張ろうと、そのつど目標を立ててチーム作りをしてきました」

 技術面の向上に関しては、緊急事態宣言が解除されて部活動が再開した6月からの全体練習で取り組むことになり、例年に比べれば遅れが生じているという。

「うちはピック&ロールなど合わせのプレーが多いチーム。毎日習慣づけで身につけていく練習が春先にできないことは痛かったです。でもそれはどこのチームも同じなので、東山ができることは何だろうと考え、基本に戻って練習してきました。ただ、試合で成長できるのが高校生なので、それがなかったのでゲーム勘がにぶっているのは明らかで、チームの完成度としてはまだまだ時間がかかるというのが状況です」

 そんな中、10月上旬に今年初の遠征として、新潟県胎内市バスケットボール連盟主催の交流会に参加した。東山は福島南高校(福島県)に勝利したが、福岡第一高校(福岡県)に逆転負けを喫し、開志国際高校(新潟県)には主導権を握ることができなかった。

「今年はうちのことを有力チームにあげてくれる方が多いので慢心があったと思います。だからここで負けたことで、まだまだ5人の動きができていないんだぞ、というのが選手たちはわかったと思うし、僕も徹底できていないので、膿が出たことは良かった」と大澤コーチ。そして「負けはしましたが久々の試合は楽しかった。『やっと始まった』という思いです」と真剣勝負ができることに感謝していた。

 またチーム作りの難しさに直面しながらも、「こんな時だからこそ、3年生の結束力は高い」と大澤コーチは言う。

「毎年、夏以降は受験勉強のため引退する3年生がいるけど、今年は『応援でもいいから部に残らせてくださいと』という3年生がいるので本当にありがたいです。彼らも部活をしっかりやって卒業したい思いがある。米須が中心ですが、米須のことを支えるメンバーがいて、ウインターカップにかける思いが強い学年。だから何としてもみんなで日本一になりたいです」

米須玲音「優勝候補と言われるけど僕たちはチャレンジャー」

キャプテンを務める米須[写真]=小永吉陽子


――インターハイが中止となり、どのように受け止めながら練習してきたのでしょうか。
米須
 インターハイが中止になってショックでしたけど、いちばん落ち込んでいたのは大澤先生だったかもしれません。大澤先生は「勝負の年」と言ってくれて、僕たちに懸けてくれていたんです。部活動が再開してからもしばらくは落ち込んだままで声も出さずに黙々と練習をしてしまう時期がありました。でも、それでは何も成長しないので、そこで大澤先生が『このままでははダメ』だと言ってくれて、そこからは『ウインターカップがあることを願ってやるしかない!』と気持ちを切り替えて、一日一日の練習を大切にやっています。

――練習試合がなかなかできない中で、練習で取り組んでいることは何ですか?
米須
 試合を意識して対人練習をすることが大切だと思っています。ゲームライクに対人練習をしながら、細かいところまで追求するようにしています。あとは、厳しくやるというより、楽しくやろうと言っています。楽しく練習をしたらみんなも盛り上がるし、チームとしても良くなるかなと思っています。

――米須選手とムトンボ・ジャン・ピエール選手のピック&ロールが東山の武器ですが、2人のコンビプレーで心がけていることは何ですか?
米須
 試合中はいつもジャンピー(ムトンボ・ジャン・ピエールの愛称)のことを見ています。ジャンピーはリーチが長いので、空間にパスを出すことを意識しています。空間といっても、相手のディフェンスがギリギリ届かないようなところを目安に狙うんです。ジャンピーだけでなく、どこに誰がいるかはずっと意識して見ています。ディフェンスがカットを狙ってくるだろうというところまで読んで、相手を目で騙してからその先にパスを出すようにしています。

司令塔として見方の位置は常に意識している[写真]=小永吉陽子


――今年の東山は優勝候補の呼び声が高いです。昨年よりもパワーアップしたと思うところは?
米須
 優勝候補と言われているけど、僕たちは去年のウインターカップで3位だったし、今年はインターハイがなかったので実力はわからないし、まだ日本一になったわけじゃありません。そこは勘違いせず、挑戦者として一試合一試合戦っていきたい。現に、新潟遠征でも福岡第一と開志国際に負けたので、もっと練習しなければなりません。去年よりパワーアップしたところは2年生が伸びていること。シューターが出てきたので、いろんな攻撃ができるようになりました。

――胎内市での交流会にて、福岡第一と開志国際に敗れて出た課題は?
米須
 疲れた時にあきらめてしまう癖が出てしまいました。苦しい時に自分が声をかけられないときもありました。体力的にも精神的にもきつい時にどう頑張れるかを次から追求していきたいです。

――ウインターカップにかける思いを聞かせてください。
米須
 ウインターカップにかける思いはめちゃめちゃ強いです。インターハイがなくなって2冠するという目標が消えて、残されているのはウインターカップだけ。新潟遠征ではようやく試合ができるうれしさがありましたが、そこで結果につながらなかったのが悔しいです。でも、自分的にはここで敗戦して良かったと思っています。今の東山に足りないことを肌で感じることができたので。ここで勝って、このままの練習でいいと思うのではなく、この敗戦でどうダメだったかを話し合って、これからの練習をしっかりやりたい。練習から徹底したら日本一になれると思うので、ウインターカップまでの2カ月、ここから僕は鬼になります。

文・写真=小永吉陽子

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