2020.12.20

【大会展望】男子は福岡第一を筆頭に昨年の経験があるチームが有力か。新勢力の成長はいかに?

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 2020年最初で最後の頂上決戦。コロナ禍の状況でウインターカップ開催にこぎつけたことに、出場各チームは感謝の気持ちを持ってチーム作りに励んできたことだろう。ただ、今年は例年以上に練習も遠征も公式戦もできていない状態で、完全に仕上がったチームはないといえる。

 例えば、東海新人戦覇者の中部大第一(愛知)は出場権を持っていることで予選は免除されており、ブロック新人戦以降は公式戦を一試合もしないままウインターカップに臨む。東北新人戦優勝の仙台大学附属明成(宮城)は県の優勝決定戦のみ戦うスーパーシードだったが、その大切な1試合で主力を鍛えながら3年生全員をコートに立たせるなど、創意工夫しながらチーム力を底上げしてきた。例として、東海と東北王者の例をあげたが、どこのチームも経験不足が否めないため、苦しい場面でいかに力を発揮するかは未知数だ。ましてや、組み合わせも右下と左下に強豪校が固まったために上位進出チームが読めないのが今大会の特徴だ。

 その中でも経験値が高いのが3連覇を目指す福岡第一だろう。昨年から先発メンバーは総変わりしたが、ポイントガードのハーパージャン・ローレンス・ジュニアとセンターのキエキエ トピー アリは昨年からの主力メンバー。2人が軸となった昨年の国体(出場資格はU16)では優勝を遂げ、今年は天皇杯1次ラウンドに出場。1回戦では京都産業大にブザービーターで逆転勝利し、2回戦ではB3のアイシンAWアレイオンズ安城と対戦するなど、公式戦での経験値はどの高校よりも豊富だ。

昨年同様、福岡県勢の福岡第一(緑)、福大大濠(白)に注目だ [写真]=バスケットボールキング編集部


 伝統であるプレッシャーディフェンスの激しさは今年も不変。さらに、昨年よりサイズが劣ることから昨年以上の運動量で襲い掛かるタフネスさは天皇杯で実証済みである。「ジュニアとアリと心中」と井手口コーチが信頼を寄せるガードとセンターのラインを軸にしながら、キャプテン松本宗志、砂川琉勇、當山修梧、佐藤涼成らタイプの違うガード陣を揃えて3連覇を目指す。

 ブロックごとに有力チームを紹介していこう。第1シード(左上ブロック)は京都府予選で東山を下した洛南(京都)になった。スラッシャーで1対1の能力が高い得点源の小川敦也とセンター淺野ケニーを軸に、府予選で東山を破ったチームディフェンスが遂行できれば優勝は手に届く位置にいる。洛南に対抗するのは北信越新人戦で優勝した北陸学院(石川)、得点源の上村大佐と佐々木駿汰、スピードあるガード陣など選手層が揃った能代工(秋田)も注目だ。

 優勝候補である福岡第一の属する第2シード(右下ブロック)は大会の行方を占う大激戦区になった。福岡第一の井手口コーチは「準々決勝がカギ」と見据えている。順当に勝ち進み、福岡第一とベスト4をかけて争うのは仙台大明成か開志国際(新潟)か延岡学園(宮崎)か。大会屈指の大型チームである明成は注目のオールラウンダー、2年生の山﨑一渉が注目を集めるが、山﨑だけのチームではない。献身的に支える選手層の厚い3年生をはじめ、大型化を図るチーム作りも注目だ。開志国際はジョーンズ大翔、石原史隆、内田貴斗の3ガードに、1年半ぶりにケガでから復帰したオコエ・ピーター・ジュニアの高さを擁して上位進出を狙う。

 第3シード(左上)は四国新人を制した尽誠学園(香川)。司令塔の松尾河秋を中心に、今年も伝統の堅守と粘りを見せてくれることだろう。注目のカードは1回戦で激突する中部大第一(愛知)と北陸(福井)。この勝者が右上ブロックの行方を左右する。中部大第一はキャプテンの葉山隆誠、サウスポーシューターの福田健人を軸に高いポテンシャルがあるチーム。北陸は昨大会ベスト4のメンバーを擁して経験があるチーム。司令塔の土家拓大、シューター米本信也、得点源とエースキラーを兼ねる小川翔矢など要注意プレーヤーが多い。また、多彩なオフェンスとチェンジングディフェンスでかき回す福島東稜(福島)も面白い存在だ。

 第4シード(左下)ブロックは有力チームが揃うブロックとなった。昨年度の経験値でいえば司令塔の米須玲音とムトンボ・ジャン・ピエールのピックプレーを武器とする東山と、コンゴロー・デイビッド、丸山賢人、宇都宮陸を中心にステップアップしている報徳学園が一歩リードだが、他に有力もチームがズラリ。昨大会のファイナリスト(準優勝)の福岡大附属大濠、関東新人戦の覇者である桐光学園、大会屈指のオールラウンダー金近廉を擁する関西大北陽などが上位進出を狙う。また、この5年間で3回目の初戦対決となる東海大諏訪(長野)と土浦日大(茨城)、常にジャイアントキリングを狙う飛竜(静岡)、広島皆実(広島)なども侮れない存在だ。気にかかるのは府予選で洛南に走り負けした東山。インサイドのムトンボ・ジャン・ピエールが秋口から万全な状態で走れておらず、その仕上がりが気になるところだ。

東山の浮沈を握るムトンボ・ジャン・ピエール [写真]=吉田孝光


 今年は経験値が少ないゆえに、大会を通しての成長も影響することになるだろう。何より、最初で最後の全国大会に懸ける思いはどこのチームも強いはず。思う存分に自分たちの力を発揮する熱い戦いを期待したい。

文=小永吉陽子

ウインターカップ2020のバックナンバー

BASKETBALLKING VIDEO