2020.12.23

聖和学園の3年生が下級生に伝えたいこと、そして指揮官が見出したチームつくりの光明

聖和学園の丸山輝瑠は下級生にメッセージを託した [写真提供]=日本バスケットボール協会
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 2年ぶりの冬の舞台は、改めて全国のレベルの高さを痛感させられる大会だった。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子1回戦、聖和学園高校(宮城)は京都精華学園高校(京都)に56-93で敗れた。キャプテンの丸山輝瑠は「やってきたことがすべて出し切れたわけじゃないので、悔しいです」とゲームを振り返る。

 前回出場の際、聖和学園には、現在NCAA1部のルイビル大学でプレーする今野紀花という“スーパースター”がいた。アンダーカテゴリーの日本代表にも選ばれ、国際大会で活躍した彼女の1対1は文字どおり“世界基準”で、当然、チームづくりの中心には今野を据えることになった。

 だが今年は違う。個々の能力が高いわけではない。誰かに頼るのではなく、「リバウンド、ルーズボール、ディフェンス…、チームプレーで勝とうと話し合ってきました」。丸山の言葉どおり、第1Qから大きなビハインドを背負う展開になっても、今年の聖和学園は誰かがセルフィッシュにプレーするのではなく、チームで追い上げた。第3Qに点差を詰めることができたのも、自分たちのバスケットを遂行し続けたからだ。

 しかし、京都精華学園を超えることはできなかった。小野裕コーチは「なす術がなかった。ちょっと打ちのめされた感じです」と肩を落とす。留学生の高さだけではなく、ペリメーター陣の高さにも対抗しきれなかったのである。

 それでも来年に向けた種は蒔いてきた。スタメンとして出場した2人の2年生、橋本この実と菊池ひかり、ベンチスタートだが積極的に1対1を仕掛けた1年生の上野心音。小野コーチは「ほかにもいい素材はいるんです。来年はまず東北ブロックのタイトルをしっかり獲りたい」と意気込む。

 もちろん課題はある。

「1、2年生はいい選手が多いんですけど、オフェンスメインの人が多いんです。でも3年生はディフェンスがメイン。第3クォーターのはじめは主に3年生が出て、追い上げたところがあります。下級生には私たち3年生からディフェンス力を受け継いでほしいです」

 丸山がそう言えば、2年前は1人のスター選手を生かそうとしたことで、チームづくりの感覚が鈍ったと認める小野コーチがこう繋ぐ。

「今日は最後まで一生懸命やってくれたので、ここからがスタートかな。こういう感覚から、どう練習していくか。そういう意味でもいいスタートになったんじゃないかと思います」

 スーパースターはいない。いや、たとえ今野を超えるスーパースターが出てきたとしても、聖和学園はこの敗戦を糧に、チームとしての伝統を築いていくのだろう。敗れてもなお、東北の古豪は反撃の狼煙を上げようとしている。

文=三上太

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