2020.12.26

「大事」を生み出すことはできなかったが「小事」は徹底し続けた。悔しさは残るがチームのモットーは貫いた飛龍の三橋翔

2回戦の東山戦では16得点を叩き出した三橋翔[写真]=日本バスケットボール協会
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子2回戦、飛龍高校(静岡)は東山高校(京都)に69-89の完敗を喫した。

『小事は大事を生む』をモットーに掲げる飛龍だったが、「想像以上に東山さんのルーズボールやディフェンスがしっかりしていて、プレーの絞り込みが中途半端になりました」と原田裕作コーチも完敗を認める。

 それでも原田コーチが「バスケットIQが高い選手」と評価するパワーフォワードの三橋翔(3年)は東山のビッグマン、ムトンボ・ジャン・ピエール(3年)を徹底的に守った。205センチのジャン・ピエールに対して、三橋は180センチしかない。25センチのビハインドを背負いながらも、彼の言葉を借りれば「前半はコンタクトで(ジャン・ピエール)をいじめていた」ことが奏功し、簡単にはインサイドでプレーさせなかった。

「でも第3クォーターに入ってから急に手足が重たくなって……自分が疲れてきたのを知って、ジャンピーくんがインサイドでガンガン攻めてきました」

 そして涙目で笑みを浮かべて、こう続ける。

「全身痛いっす。明日から(筋肉痛になりそうで)ヤバいっす」

チーム随一のパワープレーヤーをもってしても、25センチの差を埋めることは容易ではなかったのである。

 三橋にとって悔しい敗戦となったが、ひとつだけうれしいことがあった。三橋曰く「これまで褒められたことがない」原田コーチから――原田コーチ自身は「僕はずいぶん、彼のことは褒めているんですけどね。伝わっていないのかなぁ?」と言っているのだが――第4クォーターに「ここからはお前に任せるから、ボールをもらって、お前がゲームをクリエイトしろ」と言われたことだ。

「最後の褒め言葉です。マジ、うれしかったです」

 原田コーチがその意図を語る。

「このゲームでは彼が唯一クリエイトできていて、得点も取れていたので、ディフェンスも寄るだろうと思っていたんです。だから最後は彼が見える範囲のなかでどう判断するか。バスケットIQの高い子なので、変にこっちからの指示で動かすのではなく、彼が持っているアイデアを生かしほう方がいいのではないかと思って、彼に全権を任せました」

 パワーフォワードの三橋がそのポジションにいながら、最後は司令塔になったというわけである。

飛龍の三橋翔は体を張ったプレーでチームを盛り立てる[写真]=日本バスケットボール協会

 三橋は大学に進学後もバスケットを続けるという。180センチという身長で、それほどのバスケットIQがあれば、遅ればせながらでもアウトサイドプレーヤーにコンバートすることもできる。しかし彼はきっぱりと言う。

「大学でも留学生とバチバチやりたいです」

飛龍が誇る“縁の下の力持ち”はこれからもクレバーな力持ちであり続けるようだ。

文=三上太

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