2020.12.26

初のベスト8に進出した正智深谷。『強さ』を求めて成長し、たどりついた冬のメインコート

ついに壁を乗り越え、初のメインコートに臨む正智深谷のメンバー [写真提供]=日本バスケットボール協会
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 正智深谷高校(埼玉)が九州学院高校(熊本)を81-76で下してウインターカップ初のベスト8にたどりついた。九州学院は1回戦で能代工業高校(秋田)に逆転勝利を収め、2回戦では前橋育英高校(群馬)を100点ゲームで一蹴。正智深谷は2回戦で北陸学院高校(石川)に粘り勝ちした豊見城高校(沖縄)に81-63で圧勝。ともに勢いに乗る者同士の対戦だったが、勝敗を分けたのは勝負所での走力だった。

 前半は33-33の同点。試合が動いたのは後半に入って3分過ぎ。正智深谷の得点源であるフォワードの大滝唯人(3年)が3ポイント2本を含む5連続ゴールを決める爆発を見せ、続いてキャプテン太田誠(3年)が鮮やかな速攻を決めて55-40と一気に突き放した。前半、シュートが打てずに苦しんでいた大滝を成田靖コーチは常に励まし続けていた。

「大滝はシュートが打てなくなると、ボールに触らなくなって試合中に存在感が消えてしまうことがありました。けれど今日はボールを触り続けていたので『今日のお前はボールを触っているから大丈夫。やり切ればいい』と言い続けたらシュートが当たり出しました」

正智深谷は大滝唯人のシュートで勢いをつかんだ [写真]=日本バスケットボール協会


 勝負所でシュートが火を噴いた大滝は「みんなが自分にパスをくれて、自分が打ちやすいようにしてくれました。自分もチームも信じて打ちました」と爆発の要因を明かす。

 後手に回った九州学院は能代工業戦でも活躍したエース中野友都(3年)がこの試合でも40得点と大活躍を見せ、持ち味であるオールコートプレスで当たり続けた。しかしボールを奪ってもフィニッシュが決めきれなかった。終盤は接戦に持ち込むも、3Qの勝負所で開いた点差を詰めることができず、5点差で正智深谷が勝利を収めた。

 初のベスト8進出について成田コーチは「うれしいの一言。選手たちのおかげでメインコートに来ることができました」と試合ごとに成長を見せる選手を褒めたたえた。

 正智深谷は3回戦で九州学院との対戦が決まると、「去年のリベンジマッチ」(成田コーチ)と燃えに燃えていた。昨年のインターハイでは1回戦で九州学院に75-79で敗れているからだ。また、ここ数年は関東の強豪としての存在感を見せているが、全国大会となると力を発揮できずに下位回戦で姿を消していた。ウインターカップにおいては、2017年は優勝した福岡第一高校(福岡)に、2018年はインターハイ覇者の開志国際高校(新潟)に、それぞれ2回戦で大敗。昨年は関西大北陽高校(大阪)に初戦敗退を喫している。そうした課題を打破し、たくましさが出てきた要因を成田コーチはこのように明かす。

「毎年のようにシード校と2回戦で対戦するクジ運の悪さもありましたが、何より全国大会になると力が発揮できない弱さを改善したいと思っていました。『うまさだけではない強さ』を身につけたくて、ここ数年は(仙台大)明成(宮城)に通ってお手合わせをお願いしましたし、(佐藤)久夫先生から『強いチームの魂』を学ばせてもらっています。また、3年生たちはコロナ禍でも自分たちのやるべきことに向き合える主体性が出てきていて、この1年の伸びしろはものすごいものがあります」
 
 ベスト4をかけては第1シードの洛南高校(京都)と戦う。「洛南はうまさも高さもあるチーム。僕たちは練習してきた『速さと強さ』を出して正智らしいバスケットをしたい」とキャプテン太田誠は抱負を語る。さらなる壁を超えるためのチャレンジは続く。

文=小永吉陽子

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