2020.12.27

報徳学園が好機生かせず終戦…“3本柱”が果たせなかった夢は「期待のルーキー」たちへ受け継がれる

報徳学園を支えた3本柱(左からコンゴロー・デイビット、宇都宮陸、丸山賢人) [写真提供]=日本バスケットボール協会
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

 願ってもいないチャンスだった。しかし、勝利の女神はピンチを乗り切った相手に微笑んだ。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」準々決勝の東山高校(京都)vs報徳学園高校(兵庫)の一戦。東山は第1クォーターでムトンボ・ジャン・ピエール(3年)が3ファウルを犯してしまう。相手の大黒柱がコートを去るやいなや、報徳学園はセンターのコンゴロー・デイビッド(3年)にボールを集めた。

 そこから徹底的にインサイドを攻めた報徳学園だったが、前半を終えてのスコアは48-46。本来であれば、もっと点差をつけたかったはずだ。この前半の展開を両軍のコーチはこう振り返る。

「ジャンピ(ムトンボの愛称)がいなかったので、中でしっかり勝負にいったんですけど、それよりも向こうのシュート力が上回ってなかなか厳しかったです」(報徳学園・田中敬コーチ)

「ジャンピが1クォーターで3回やることは、未だかつてなかったです。デイビットにやられる分はしょうがなかったので、正直、前半は10点差くらいで終わればいいかなと。でも、彼らが冷静にバスケットをしてくれました」(東山・大澤徹也コーチ)

 東山は第2クォーターで逆転を許したものの、中川泰志(3年)、西部秀馬(2年)の3ポイントなどで食い下がり、思わぬアクシデントも米須玲音(3年)を中心に声を掛け合って乗り切った。それでもムトンボが戻った第3クォーターは、宇都宮陸、丸山賢人(3年)を中心とした攻めに変えた報徳学園が一時12点リードを奪った。

 しかし第3クォーター中盤からは、自ら得点を奪いにきた米須、「今日のMVP」と大澤コーチが讃えた清水拳と矢倉啓輔の2年生コンビに活躍を許して報徳学園は再びビハインド。最後は18点の差がついた。

 報徳学園は昨年同様に準々決勝で東山に敗れ、3年連続のウインターカップベスト8。「チームを勝たせられなかったのはガードのせい」と自分を攻めた宇都宮は、「点差が開いたことで『この点差を守ろう』と受け身になってしまいました。相手は負けている時でも全員で鼓舞し合っていましたし、全部出し切っても勝てなかったので東山が一枚上手でした」と敗戦を認めた。

 田中コーチも「勝たせてあげられなかったのは僕の責任」と反省し、「本当に“あの3人”をはじめ、3年生には感謝しかないです」と述べた。“あの3人”とは、1年生から先発を担ってきた宇都宮、丸山、コンゴローの3本柱だ。司令塔としてチームをけん引してきた宇都宮も、3年間ともに戦っていた2人に感謝の言葉を送った。

報徳学園の田中敬コーチは「3人には感謝しかない」とコメント [写真提供]=日本バスケットボール協会


「1年生から3人でプレーしてきたので、一番信頼できる2人です。今日負けはしましたが、大学で試合できる機会があればまたお互い切磋琢磨していきたいと思います」

 これまでの3本柱は抜けるが、宇都宮が「期待のルーキーが何人もいる」と言うように、チームには今大会でも先発を務めたテーブス流河、昨年ジュニアオールスターを制した京都府代表メンバーの高木良太朗、西村陽太朗などが在籍している。

 3本柱が果たせなかった日本一の夢は、次の代へと受け継がれる。明日からまた新たな一歩を踏み出す“新生・報徳学園”からも目が離せない。

文=小沼克年

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