2020.12.28

届かなかったラストシュート…北陸の司令塔、土家拓大が惜敗の試合を振り返る

チームメートに託されたボール、土家拓大はラストシュートを放った [写真提供]=日本バスケットボール協会
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「入れ!入れ!」――そう願った3ポイントシュートは試合終了のブザーとともにリングに弾かれてしまった。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子準決勝。北陸高校(福井)は仙台大学附属明成高校(東北ブロック推薦・宮城)と対戦し、58-60で敗れた。

 第1クォーターを5点ビハインドで終えながら、そこからジリジリと追い上げ、第4クォーターの残り7分18秒で逆転。次のオフェンスで小川翔矢が3ポイントシュートを沈めてリードを広げたが、そこから一気に重たくなってしまった。明成も同じようにオフェンスが重たく、わずかながらに北陸がリードを保ったが、残り41秒で逆転されてしまった。

 最後の7分間を北陸のキャプテンで、ポイントガードの土家拓大が振り返る。

「あの場面はお互い厳しい時間帯が続いたんですけど、そこで北陸の粘りが足りませんでした。あそこでもっとみんなが積極的にアタックしていれば、試合の状況はまた変わったのかもしれません。あのときは自分も足を言い訳にアタックしなかったので……ちょっと後悔しています」

 土家は大会前から左足の股関節を痛めていた。それを言い訳せずに戦い続けたのは、自分が名門・北陸のキャプテンであるからだ。

 試合の序盤もその思いが空回りをしていた。しかしベンチに下がった際、「今の自分に必要なことは何かを考えたら、キャプテンとしてみんなに声をかけたり、チームを明るくすることだと思ったんです。別に自分が点を取らなくても、キャプテンの仕事をすれば、自分の存在感を出せると思ったんです」。

 そこから本来の、少なくとも今の土家が出せる最大限のパフォーマンスを発揮し始めた。第2クォーターの終盤にはドライブからのフローターでバスケットカウントを決め、次のオフェンスでもネックバックパスからコナティ・モディボのシュートを演出。第3クォーターの終盤にはドライブから横に流れながらジャンプシュートも決めている。

 そして第4クォーターの残り9秒、仙台大明成のフリースローが決まって、2点のビハインドを負った直後のオフェンス。逆転のチャンスは十分にある。そのオフェンスで最後にボールを受けたのが土家だった。しかし土家の放った3ポイントシュートは、冒頭に記したとおり、外れた。

「最後、自分に託してくれたチームメイトの期待に応えられなくて、キャプテンとして、みんなを勝利に導けなかったことは本当に悔しいです」

 土家はそう言いながら、取材エリアでの第一声ではこう言っている。

「今はとても楽しい試合で、やりきったなというのが正直な気持ちです」

 接戦を敗れてもなお、そうした感想を述べるのはチームメートのおかげで最後まで笑顔でプレーできたからだと明かす。結果は負けてしまったけど、楽しい試合だったと。

「今はとても楽しい試合で、やりきったなというのが正直な気持ちです」と最後まで笑顔を見せた土家拓大


 入学当時は、福岡大学附属大濠高校(福岡)にいた兄・大輝(現・早稲田大学2年)の「弟」として見られていた。あれから2年、土家屋拓大は「北陸の土家」としてチームをウインターカップのベスト4まで導き、そして笑顔でその舞台から降りていった。

文=三上太

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