2021.07.25

ディフェンスで相手エースを苦しめた小林…この経験を糧に冬の再起を誓う

3ポイントシュート5本を含む24得点を挙げた小林の石川[写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 6月に行われた「令和3年度 第68回近畿高等学校バスケットボール大会」で1試合平均29得点を挙げた相手のエースを苦しめることはできた。いや、実際には25得点13リバウンド9アシストと、もう少しで「トリプルダブル」を達成させられそうにはなっているのだが、それでも彼に気持ち良くはプレーをさせなかった。その自負はある。しかしバスケットはエース1人を抑え込めば勝てるものではない。小林高校(宮崎県)の選手たちは、改めてそのことを痛感させられただろう。

「令和3年度 全国高等学校総合体育大会 男子バスケットボール競技大会」が幕を開け、小林は1回戦で報徳学園高校(兵庫県)と対戦した。報徳学園には2年生エースのテーブス流河がいる。父はWリーグの富士通レッドウェーブで指揮を執るBTテーブスヘッドコーチ。兄はBリーグの宇都宮ブレックスでプレーするテーブス海。幼い頃から父と兄を追いかけてきた報徳学園のエースをいかに抑えるか。4年ぶりにインターハイに出場する小林が、初戦を勝ち上がるため必要不可欠な要素だったと言えよう。

「テーブス選手は得点を取ってくる報徳学園の中心プレーヤーです。彼を抑えなければ勝ちにはつながりません。彼はピックを多く使うので、センターとガードが協力して、ピックを使うところで終わらせる練習をしてきました。そこから彼に得点を取られることはあまりなかったし、練習の成果が出たと思います」

 こう振り返るのは、テーブスを主にマッチアップした小林の森永歩夢(3年)だ。冒頭に記したように25得点を献上しているのだが、報徳学園やテーブス自身が思い描くようなプレーはさせていなかった。

 しかし、スコアが難しいと思えば、アシストにも回れるのがテーブス。今日のゲームであれば、そのパスを溝上恵大(2年)や小林裕斗(2年)が3ポイントシュートで応えた。溝上は4本の3ポイントシュートを含む13得点。小林は9本の3ポイントシュートを沈めて、テーブスを上回る31得点を挙げている。

 小林としても、彼らシューター陣への注意はおこなっていたと森永は認める。しかしそこへの詰めが甘かった。チームを率いる石川祐二コーチも「そこですよね。目線を切ってしまっていましたもんね。そこを見ておくようにとも言っていたし、選手たちも分かってはいたのだけど、それがうまく体現できなかったもどかしさ。そこで、ああ、と落ち込むところにオフェンスまでも狂ってしまって……」と振り返る。

チームディフェンスで報徳学園の得点源・テーブスを苦しめた小林[写真]=三上太

課題を持ち帰ってウインターカップ出場を目指す

 今年度は新型コロナウィルスの影響もあって、九州ブロック大会が開催されず、インターハイの宮崎県予選後は、一度も練習試合ができなかったと石川コーチは明かす。むろんそれを言い訳にするつもりはないが、やはり詰め切れなかった点が出たのも間違いない。

「いい課題ができました。それを持ち帰って、冬に向けてもう一度鍛えて、今度はもう一皮むけた、また違う小林高校を見せられるようにしたいです」と石川コーチがそう言えば、キャプテンの森永も言う。

「流れが悪いときに自分たちで鼓舞して、流れに持って行くことがもっと早くからできていれば違う展開になっていたかもしれません。ミスをしたときに連発しない。自分たちで立て直すことがこれからの自分たちの課題です」

 この敗北をいかに生かすか。

 もちろんウインターカップ出場には県内最大のライバル、延岡学園高校をもう一度倒さなければならない。彼らもまた、県大会の敗北を糧に練習を重ねているはずだ。しかし、インターハイを経験したからこそ分かる次へのステップもある。

 小林の横断幕にもこう書いてあるではないか。
『限りなき挑戦と前進』

小林は夏の経験を冬への成長へとつなげる[写真]=三上太

取材・文・写真=三上太

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