2021.07.28

「高いレベルでも通用するように」…冬を見据える『柳ヶ浦のタイガー』

柳ヶ浦の得点源として奮闘したガンホヤグ ドゥルグーン[写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 身長200センチ・体重110キロ――柳ヶ浦高校(大分)が誇るモンゴルからのビッグマンは、強烈なインパクトを残して「令和3年度 全国高等学校総合体育大会 男子バスケットボール競技大会」を去っていく。

 ガンホヤグ ドゥルグーン(3年)。通称「トミー」。冒頭に記したように200センチで110キロという巨漢でありながら、彼はインサイドのパワープレーだけでなく、チャンスがあれば3ポイントシュートも積極的に放ってくるオールラウンダーだ。力強いドライブはもちろん、ヘルプディフェンスが寄ってくれば、的確にパスをさばくこともできる。

 中村誠コーチは彼をアウトサイドでもプレーさせる理由を明かす。

「彼が入学する前から、彼の夢がNBA選手になることだと聞いていたので、そのためにはインサイドだけではダメだろうと。入学当初から30キロくらいシェイプアップして、走れるようになって、飛べるようになって、アウトサイドシュートもチームで一番入ります。ただ筋力がまだ子どもみたいところがあるので、筋力をつけさせるためにも1年生のときからアウトサイドのプレーもさせています」

 チームとしては7年ぶり3回目、ドゥルグーンら選手たちとしては初めてのインターハイは3回戦で、地元・新潟県代表の帝京長岡高校に64-80で敗れた。ドゥルグーン自身は3ポイントシュート1本を含む15得点12リバウンドとダブルダブルを記録。ただ、昨年のウインターカップ1回戦(新田高校[愛媛県]に敗退)で叩き出した39得点23リバウンドには遠く及ばない。しかも今回はファウルトラブルに陥り、ベンチに下がる時間も多く、また勝負に出た第4クォーターでも残り3分49秒でファウルアウトしている。それでもなお、ドゥルグーンの存在感は、間違いなく、昨冬よりも強く発せられたと言っていい。

 中村コーチ曰く、1年生のころは1試合で1回はテクニカルファウルを取られるほど不安定だったそうだ。本人も「毎試合ファウルトラブルで、ゲームから外に出ていました」と認める。しかし2年生になったとき、中村コーチから「チームを勝たせる選手になれ」と言われてからは、少しずつ冷静さも身につけてきた。

 帝京長岡戦ではファウルトラブルに陥りながら、またファウルアウトをしてからもベンチで懸命にチームを鼓舞し続けていた。中村コーチは、そうした彼のメンタルの成長が一番大きいと言う。

「昨晩のミーティングでも、八村塁選手のエピソードではないけれど、『タイガーになれ』と伝えました。『ただ頭は冷静じゃなきゃいけないぞ』とも。そういった意味で、ベンチに下がってからもふて腐れることなく、チームを鼓舞してくれたことが一番うれしかったですね」

チームメートに積極的に声を掛けていたガンホヤグ ドゥルグーン[写真]=三上太

 ドゥルグーン自身は試合後、こう大会を振り返っている。

「今大会を通じてインサイドからのキックアウトは通用したと思うけど、シュートの確率が悪かった。3ポイントシュートもインサイドのシュートもイージーをいっぱい落としました。それが足りなかったところです」

 流暢な日本語でしっかりと自分の思いを伝える。「ウインターカップまでにはスキルを3倍くらいにして、自分のプレーを全国の高いレベルでも通用するようにすること。それが目標です」

 昨冬の大敗。今夏の悔恨。それらを抱えて『柳ヶ浦のタイガー』は冬に向かう。

取材・文・写真=三上太

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