2021.07.28

東海大付諏訪の中川知定真…夏の経験を糧に冬にスケールアップした姿を見せられるか⁉

今回のインターハイで多くの課題を得ることとなった中川[写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「バチバチの戦いになると思いますよ」

「令和3年度 全国高等学校総合体育大会 男子バスケットボール競技大会」の準々決勝、試合前に福岡大学附属大濠高校(福岡県)の片峯聡太コーチは、これから始まる東海大学付属諏訪(長野県)との一戦をそう予想していた。

 その言葉どおり、第1クォーターからお互いがディフェンスの強度を高め、攻めても3ポイントシュートを確実に沈めるなどして26―25、東海大学付属諏訪のわずか1点リードで最初の10分を終える。

 しかし第2クウォーター、元々の選手層の厚さに加え、「FIBA U19バスケットボールワールドカップ」から岩下准平(3年)と川島悠翔(1年)が戻ってきた福大大濠は、ディフェンスの強度をさらに高め、そこから勢いのある攻撃も生まれて、東海大付諏訪を逆転。8点のリードで前半を折り返した。

 一方、東海大付諏訪は、司令塔の髙山鈴流(2年)がファウルトラブルに陥るなど、苦しい展開が続いたが、後半に入って、髙山と同じ2年生ながら、チームの中心に立っている中川知定真がギアを入れ替えた。

 入野貴幸コーチも「ハーフタイムに中川を呼んだら、『思っていたよりも大濠のディフェンスの寄りが速くて、大きい』と言うんです。だったらそれが『成長のいい機会だから、ポストプレーもアウトサイドのプレーもやってごらん』と言ったら、後半はやってくれました」と言う。

 中川は自身のギアチェンジについて、こう話している。「前半はこれまでの対戦にない高さに戸惑うところがあって、自分自身、単発で逃げのシュートになっていました。でもハーフタイムに『ここまで来だのだから強気でやるしかない。高さにビビらないで、ダメだったらすぐに違うプレーでアジャストする』という話をしたんです。それで後半は自分の高さを生かして、マッチアップに応じて、インサイドとアウトサイドでプレーして、自分の持ち味が出せてきたかなと思います」

 しかも彼を守っていたのは福大大濠の2年生エース・湧川颯斗だった。中学時代にU15のナショナルキャンプなどで一緒にプレーしたことがあり、「颯斗の実力はわかっていたし、高校に入ってさらにその実力を伸ばしているのも知っています。自分よりも高さがあるし、一筋縄ではいかない相手だと思っていました」と語る。それでも「自分が少し優っているフィジカルで勝負を仕掛けたので、そういった点では嫌なイメージを与えられたかなと思います」と、一定の手応えも感じたようだ。

準々決勝では敗れはしたものの20得点10リバウンドをマークした[写真]=三上太

 第3クォーターこそ中川の活躍などもあり20-20の同点で終えた東海大付諏訪だったが、第4クォーターで福大大濠にゾーンディフェンスを攻略され、自らの得点も積み重ねることができずに65-91で敗れた。
 
 中川自身は20得点10リバウンドのダブルダブルを達成。192センチのオールラウンダーとしては面目躍如といっていい。それでも課題は残った。

「他のチームを見ると、3番ポジションの選手もピックを使っていて、1番から3番ポジションまでの選手がオフェンスのリズムを取っていました。自分は192センチで3番をやらせてもらっていますが、まだピックを使ってからのパスさばきやゲームメークができていません。冬までにはハンドラーとしての力も伸ばしていきたいです」

 強豪相手にも得点力があることを示した北信越インターハイ。中川が目指す次のステップは、よりチーム内での存在感を増すプレーヤーになることだ。冬までにどこまでスケールアップできるのか。バチバチの戦いに敗れた背番号3の冬に注目したい。

取材・文・写真=三上太

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