2021.08.10

初出場の下妻第一…1年生の清水ツインズも課題と収穫を得た大会に

スターターとして奮起した清水瑠莉(左から2人目)と瑠奈(右から2人目)の1年生ツインズ[写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「僕も含めて、ここで勝ちに来ているチームと、ここに出られてホッとしているチームとの差は出たかな」

 自嘲気味に語ったのは、下妻第一高校(茨城県)の木村幸司コーチだ。

 土浦日本大学高校、明秀学園日立高校といった県内にいる全国区の強豪校を打ち破り、「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」に初出場を果たした下妻第一だったが、1回戦で熊本商業高校(熊本県)に68-79で敗れた。

 もちろん、木村コーチの言葉は100%の本気ではない。しかしどこかにそう思いたくなるようなわずかな差が、自責の念も含めて試合後に込み上げてきたのだろう。汗にまみれた顔をいっさい拭わなかったのは、涙を隠すためではなかったか。しかし、その声は間違いなく震えていた。

 ただ、繰り返しになるが、県大会の準決勝で明秀学園日立を、決勝では土浦日本大学を、いずれも1桁差で破ってインターハイ初出場を決めたことは、決してフロックではない。

 これまでにない戦力が加わったことで、それを達成するだけの力を得ることになった。それが1年生トリオ、ポイントガードの滝本絵里菜と双子のオールラウンダー・清水瑠奈と瑠莉である。背番号8の瑠奈が姉で、背番号7の瑠莉が妹。3人とも堂々のスタメン出場である。

 木村コーチも「滝本のボールダウンと、瑠奈と瑠莉の得点力。これまで(土浦日本大学など)強豪校とやって、『ここでシュートを…』と思いながら外れていたところを2人が決めてくれる」ようになったことが、今回のインターハイ初出場につながったと言っている。

 またミニバスまでは2人してオールラウンダーだったが、中学を経て、高校に入り、「自分が一番身長が高いので、ドライブなどもするけど、リバウンドでチームに貢献できたらいいな」と考えた瑠奈は、インサイドで体を張るパワーフォワードへと舵を切った。彼女のリバウンドもまた、下妻第一のこれまでにはない強力な武器となったと、木村コーチも認めている。

 結果、熊本商業戦は瑠奈が27得点10リバウンド、瑠莉が14得点11リバウンドと、ともにダブルダブルを達成している。

 ただ、瑠莉は第4クウォーターの途中で無念のファウルアウト。ベンチに下がっても涙が止まらなかった。

「木村先生から『ファウルだけは気をつけるように』と言われていたのに、ファウルアウトをして先輩たちに申し訳なかったし、何より自分のことを出し続けてくれた先生に申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 試合後の取材エリアでもなお、あふれ出てくる涙をこらえながら、瑠莉は今後の抱負をこう語る。

「自分のできないところや細かいところを3年生が補ってくれました。だからこそ自分のプレーを生かせたところもあります。3年生がやってくれていたことを、自分ひとりですべてをこなすことは難しいけれど、できるだけ自分でやって、ウインターカップはもちろん、来年、再来年のインターハイ、ウインターカップも県で1位になって、またこの舞台に戻ってきて、先輩たちの記録を超えられるようにしたいです」

 一方の瑠奈は、フィジカルの差などを体感しながらも、自身の持ち味であるパワーで得点を重ねられた手応えも得て、最後までコートに立ち続けた。その上で彼女もまた瑠莉と同じように新たに決意する。

「ベンチに入れない先輩もいるし、同学年もたくさんいます。その中から選ばれた自分たちなので、この経験を生かして、3年生が引退してからも引っ張っていけたらと思います」

 いわゆる「普通の公立高校」である下妻第一。インターハイを終えて3年生は大学受験に向けてチームを離れるかもしれない。もしそうなればウインターカップは下級生中心のチーム編成となる。ただでさえ県内の強豪校、土浦日本大学や明秀学園日立などが牙を剥いてくる。そうなったときに清水瑠奈・瑠莉姉妹が、滝本らの力を借りながら、どんなチームに仕上げてくるのか。もちろん3年生が残れば、彼女たちも含めて、夏の悔しさをチームとしてどう晴らすのか。

 公立高校の難しさを乗り越える彼女たちの成長を心待ちにしたい。

(左から)滝本、清水瑠莉、清水瑠奈の1年生トリオ[写真]=三上太

取材・文・写真=三上太

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