2021.08.12

劇的な逆転勝ちを収めた柴田学園がインターハイでは初のベスト8入り

逆転勝ちを収めて喜ぶ柴田学園の選手たち[写真]=バスケットボールキング編集部
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「39分間、相手のペースでした。バスケットの面では負けた感じはしますが、勝負に勝ったので、選手たちをほめてあげたいです」

 こう試合を振り返ったのは柴田学園の小野尚樹コーチ。汗をぬぐいながら、奮闘した選手たちを笑顔で称えた。

「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の女子3回戦、柴田学園高校(青森県)は、山口県代表の徳山商工高校と対戦した。

 試合は、序盤から接戦となり、前半は柴田学園が僅か1点のリードで終える。後半には、一時リードを広げたものの、徳山商工も激しいディフェンスから食らいつき、譲らない。そのまま1点を争う展開は最後までもつれることに…。

 迎えた残り約3秒、柴田学園は、同点の場面で攻撃権を得る。タイムアウト後、スローインから始まると、最後は相馬嘉乃(3年)のドライブが決まって勝負あり。66-64と、逆転勝ちで準々決勝進出を決めた。

「前半ちょっと私が選手の邪魔していたかなと。いろんな指示を出し過ぎたことで、重くなってしまっていたので、後半は選手たちの判断に任せました」と、小野コーチは苦笑い。勝ちを意識したことで選手が硬くなってしまったと語った。

 これでチームはインターハイでは初のベスト8入り。ウインターカップでは中村優花(富士通レッドウェーブ)の時代にベスト8入りは果たしていたものの、夏はこれまでベスト16止まりだっただけに、一つの壁を越えたといえるだろう。

強気のプレーで牽引するガードの中三川[写真]=バスケットボールキング編集部

 そんな今年のチームは、アウトサイドに中三川叶羽、相馬嘉乃、新井希寧と得点力の高い3年生たちがそろう。インサイドには懸命に体を張る佐々木杏花と秋谷詩(いずれも2年)と、バランスの取れた布陣だ。どこからでも得点が可能で、実際に徳山商工戦でも3人が2桁得点。他2人も8得点を奪っている。

「昨年のウインターカップを経験していますので、自分たちでやろう、ビッグネームにチャレンジしてやろう、そして自分たちもビッグネームになろうと言っています」と小野コーチは今のチームを語る。その中心になっているが3年生たちで、指揮官は「バスケットに対する姿勢、意識も高い」と目を細める。

 だからこそ、小野コーチは、3年生を中心とする選手たちに懸けたのだろう。後半からは選手の判断に任せただけでなく、残り3秒のラストプレーでは「『同じ中学校』に賭けてみました。阿吽の呼吸があるのではないかと思って」と、津軽中学校出身の3年生・相馬と2年生・佐々木の『2対2』を指示し、やはりここも彼女たちの判断に任せたのだ。

 その思いに応えた相馬は、「最後は自分で行くしかないと思っていました。何も考えず、『勝ちたい』という気持ちだけでリングに向かいました」とラストショットを決めたときの状況を語る。

 一方で、勝利を呼び込んだビッグショットを決めたものの、「3年生であるのにプレーでは引っ張れず、声を出して引っ張ることくらいしかできなかったです」と反省の弁。加えて、「ユニフォームもらえなかった人たちも普段は一緒に練習しています。だから、ユニフォームもらった人はその人たちの思いも背負っています」という言葉からは責任感の強さを感じさせた。

「バスケット大好きな人たちの集まりで、モチベーションも高く、みんなが勝ちたいと思っています。身長はないけれど、気持ちはどこのチームにも負けないように頑張っています」と相馬。明日の準々決勝に向けては「総力戦で戦い、チームの決め事である、ディフェンスルーズ、声を出す、リバウンドを徹底して勝ちに行きたいです」と意気込んだ。

「明日は思い切りトライさせたい」とは小野コーチ。準々決勝の相手は前回大会で3位の大阪薫英女学院高校(大阪府)。これまで同様に、チャレンジャーとして西の強豪校に挑む。

取材・文・写真=田島早苗

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