2021.12.28

キャプテンシーを発揮した桜花の朝比奈あずさ…「井上先生に70勝をプレゼントしたかった」

京都精華学園との決勝戦、攻防においてチームをリードした桜花学園の朝比奈(右) [写真提供]=日本バスケットボール協会
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「井上先生に70勝のプレゼントができてよかったです」

 試合後、コート上での優勝インタビューで桜花学園高校(愛知県)の朝比奈あずさ(3年)は、目に涙をうるませながらも笑顔で語った。

 決勝の相手、京都精華学園は188センチの留学生2名を擁し、高さで勝るチーム。桜花学園も高さはあるのだが、今年度は「朝比奈の代わりはいない」(井上眞一コーチ)というように、身体能力やスキルの高い選手たちを朝比奈一人で守らざるを得なかった。

 それでも、「我慢の時間が多いというのは予想していた」という朝比奈は、自身のシュートが思うように入らない前半も「私のシュートが入らなくても周りのみんなが決めてくれるし、助けてくれる。そこは信じていたので、ディフェンスを意識してやっていました」と、ブレることなく、堅実なディフェンスを遂行した。

 そして迎えた後半、井上コーチの指示を受けた朝比奈が留学生を相手に積極的にドライブを仕掛けて得点。接戦から抜け出すキッカケを作った。

 終わってみれば、終盤に京都精華学園を振り切った桜花学園が61-57と4点差での勝利。試合終了のブザーがなると、朝比奈は大きく飛び跳ねて喜びを表現した。

 今回の優勝で井上コーチが指揮した桜花学園(名古屋短期大学高校時代を含む)と愛知県国体チームでの優勝回数は70回目に。チームにとっては節目の大会となった。

「私がここまで成長できたのも、先生やたくさんの人に支えてもらったおかげ。一つの恩返しとして先生にプレーで表現し、優勝して70勝をプレゼントしたいという思いが強かったので、それができて良かったです」と朝比奈は、記者たちの前でこうコメントした。

 記録が懸かる大会。そしてインサイドでは自身のファウルトラブルやミスが勝敗を左右するなど、朝比奈には様々なプレッシャーがかかっていただろう。だが、決勝では14得点5リバウンド3スティールを記録。数字もさることながら、献身的なディフェンスでも大きく貢献した。さらに「大会を通してコートでは常に声を掛けていた」と長門明日香アシスタントコーチが語るように、キャプテンとしても5試合を戦い抜いた。

 記者会見の席、それまで笑顔で受け答えしていた朝比奈の目から涙が止まらないシーンがあった。それはともに会見に出席した長門アシスタントコーチが彼女について語った時だ。その言葉がまさにこの1年間の彼女の頑張りを表していた。

「朝比奈は今大会、チームを良くまとめ上げてくれました。高校3年生でここまでチームのことを見ながら自身のモチベーションの維持やパフォーマンスを上げることなど、こんなにも作り上げることができるんだと感動しました。朝比奈選手には感謝したいです」

桜花の朝比奈(左から2人目)は大会中、チームをまとめ上げた [写真提供]=日本バスケットボール協会


 今年度から井上コーチとともにチームの指導に当たる長門アシスタントコーチが「第一印象は大人しい」と語った朝比奈。それでも6月の東海大会での敗退などを経て、「真面目で優しいだけでなく、厳しさを持って彼女自身が一つ一つ変化しながら取り組んでいった」(長門アシスタントコーチ)。月日を経るごとにたくましくなったキャプテンは、大きな仕事をやり遂げて桜花学園での3年間を締めくくった。

文=田島早苗

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