2022.06.28

仙台大明成が全試合100点ゲームで撃破し、4大会連続東北制覇…羽黒は初の決勝進出

決勝ではフリースロー9本すべて決め、48得点と大暴れした明成の内藤晴樹 [写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 6月24日~26日にわたり、「第77回東北高等学校男女選手権 兼 第58回NHK杯」が秋田市で開催された。昨年、コロナ禍を乗り越え、多くの高校のブロック大会が復活した中で、東北大会は2019年以来3年ぶりの実施となる。

 男子のベスト4は仙台大学附属明成高校(宮城1位)、羽黒高校(山形1位)、一関工業高校(岩手1位)、柴田学園高校(青森1位)の顔ぶれ。勝ち上がりの中で激戦となったのは、2回戦の羽黒対能代科学技術高校(秋田1位)の対戦。中盤には羽黒が20点以上のリードを奪うが、能代科技が第4クォーターに37−16と猛追。羽黒はこの猛攻を5点差でかわして104−99で逃げ切った。

得点とゲームメイクでチームをリードした羽黒のキャプテン加藤律輝 [写真]=小永吉陽子


 決勝は明成と羽黒の対戦。どちらも全試合100点ゲームで勝ち上がってきた。東北での決勝の顔合わせは、2017年の東北新人戦以来。当時は羽黒が東北新人で初の決勝進出を果たした年で、それ以後、羽黒はモンゴル人留学生を加えながら年々力をつけてきており、今年は夏の東北大会で初の決勝進出を遂げた。今年のチームにはU16男子日本代表の小川瑛次郎(2年)の躍進もあり、超攻撃的なスタイルを武器としている。

 一方、明成は昨年までの超大型チームから一転。今年はアグレッシブなディフェンスからのトランジションで仕掛けるスタイルを作っているところだ。

 決勝は明成が出足からリバウンドを支配してゲームを優位に進める。明成は第1クォーターで得点源の八重樫ショーン龍(3年)が3回目のファウルを犯してベンチに下がるも、ゲームキャプテンでエースの内藤晴樹(3年)が気迫を見せて、3ポイント5本を含む48得点の大暴れ。八重樫もファウルトラブルからプレータイムが17分に制限されながらも17得点12リバウンドで勝負強さを見せた。

 対する羽黒はキャプテンの加藤律輝と髙橋燦璃(ともに3年)を筆頭に15本の3ポイントで反撃。また小川が得点のみならず、意表をついたアシストで流れを作るなど、見せ場を何度も作った。第3クォーターの終盤に羽黒が11点差まで迫ったところが勝負のポイントだったが、そこからの明成は最後まで落ちない運動量で攻め続け、111−86で4大会連続となる優勝を飾った。

勝負強い3ポイントと躍動感あふれるリバウンドが武器の八重樫ショーン龍 [写真]=小永吉陽子


 明成の勝因は70本もぎ取ったリバウンドで主導権を握れたことにある(羽黒40本)。48得点でチームを優勝に導いた内藤は「うれしいというより、安心したという気持ちが大きい」が第一声だった。その理由は、新型コロナウイルスの影響で1月の県新人戦を辞退して以降、インターハイ予選を除いて対外試合ができなかった不安があるからだった。

「八重樫がベンチに下がってからは自分が責任を持って点数を伸ばそうとプレーしたので、そこは体現できて良かったです。このチームは経験が少ないので、勝って自信につなげていくことが大事。そういう意味では価値のある大会でした。これからも気持ちで一歩も引かず、負けず嫌いのプレーを出してチーム力を高めていきたい」と内藤は抱負を語った。

 試合後、明成の佐藤久夫コーチは3年生たちの頑張りを讃えていた。「まったく試合ができなかった中で結果を出したことは認めてあげたい。でも、まだ確実な保障があるチームではありません。もう一つ上のチームになるためには、試合中に我慢強く耐えられるようにならないと」と東北制覇をステップに、さらなる成長を見据えていた。

 羽黒の齋藤仁コーチは「第3クォーターに11点差にしたところで我慢して1桁差にできていたら、第4クォーターでもう一回勝負できたが、そこで勢いを出せなかった」と反省しながらも、「今大会は体調不良の留学生2人を連れて来ていないので、留学生なしで決勝に来たことが収穫。県、東北大会と成長しているので、インターハイまでに留学生を融合させてチームを作りたい」と収穫を語った。

 決勝では、U16アジア選手権を終えてチームに合流した小川(羽黒)とウィリアムスショーン莉音(明成)の2人が今度はライバルとして戦った。小川はU16代表の主力として戦ったことで連戦の疲労が見え、ウィリアムスは逆にプレータイムが少なかったため、試合をする体力が落ちていた。そんな中で2人はコンディションを調整しながら戦い、決勝でウィリアムスは25得点23リバウンド。小川は24得点8リバウンドと奮闘。2人は東北大会明けにはU17ワールドカップに出場するため、再び代表に招集される。東北王者の座をかけた戦いの経験が、世界舞台へつながることに期待したい。
 

小川瑛次郎(羽黒・右)とウィリアムス ショーン莉音(明成・左)のU16対決 [写真]=小永吉陽子


取材・文・写真=小永吉陽子

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