2022.06.29

柴田学園が歓喜の東北初制覇…準優勝の湯沢翔北は昨年ウインターカップを逃した悔しさから躍進

東北大会で初優勝した柴田学園。全体的な高さと走力があるチーム [写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 3年ぶりの開催となる「第77回東北高等学校男女選手権 兼 第58回NHK杯」が6月24~26日にかけて秋田市で開催された。

 今回の東北大会は、3年生にとっては最初で最後の大会。選手たちの誰もが初出場であり、多くのチームが「試合ができる喜び」を口にする中で熱戦が繰り広げられた。ベスト4に勝ち進んだのは、柴田学園高校(青森1位)、湯沢翔北高校(秋田1位)、山形中央高校(山形1位)、仙台大学附属明成高校(宮城1位)という顔ぶれ。

 準決勝では柴田学園と湯沢翔北がそれぞれ快勝して決勝に駒を進めた。柴田学園は先発平均171.2センチの高さがあり、フロントコートを務める佐々木杏花と秋谷詩(ともに3年)が軸となって試合を展開。特に昨年のインターハイで注目を集めた佐々木は、持ち前のインサイドプレーだけでなく、シュートエリアを3ポイントまでに広げ、4分の5本の3ポイントを決める活躍で勝利に貢献した。山形中央はキャプテンの五十嵐羽琉(3年)、インサイドの三井優和(3年)を中心に速い展開に持ち込もうとしたが、柴田学園の総合力の前に40−79で完敗を喫した。

山形中央は接戦を勝ち上がってベスト4に進出。キャプテンの五十嵐羽琉 [写真]=小永吉陽子


 もう一つの準決勝、湯沢翔北と明成の対決は後半に決着がついた。前半は互角ながらも、湯沢翔北は177センチの大型ポイントガードの佐々木凛(3年)を軸に、後半に機動力ある攻めで一気に加点して79−64で勝利。明成はスモールセンターながらリバウンドに強い三浦瑞貴(3年)とアウトサイドを絡めた展開で対抗。しかし、県のインターハイ予選でライバルの聖和学園高校を下した粘りが発揮できず、インターハイまでに課題を持ち帰る結果となった。

体を張ったインサイドとミドルシュートを武器とする明成の三浦瑞貴(中) [写真]=小永吉陽子


 柴田学園と湯沢翔北の決勝は、柴田学園が常に先手を取る中で試合が進められた。決勝でも柴田学園の高さある攻撃が警戒される中で、活躍したのはガードの蒔苗結衣(3年)。ガード陣の思い切りの良さが速い展開を生み、後手に回った湯沢翔北は挽回ができず、第3クォーターで引き離されてしまった。最後まで走り切った柴田学園が85−60で東北初優勝を飾った。

ドライブと3ポイントで流れを作った湯沢翔北の大型司令塔、佐々木凛(左) [写真]=小永吉陽子


 初優勝を迎える瞬間、ベンチから柴田学園の小野尚樹コーチは「これで青森にウインターカップの枠を持ち帰れるぞ」と喜びを表現した。柴田学園は今年の目標の一つとして「県で7連覇をしている役割として、東北ブロックで優勝して、青森にウインターカップの出場権を一枠増やす」(小野コーチ)ことを目指していた。

「この2年は東北優勝を狙えるチームでしたが、東北大会がなくて悔しい思いをしました。今年はインターハイベスト8の結果を残してくれた先輩たちを受け継ぎ、よく走ってディフェンスをして最後まで集中を切らさずにやろうと戦いました。インターハイでは、僕も選手と一緒に汗を流し、昨年の先輩が残してくれたベスト8より、もう一つ上にいきたい」と小野コーチは抱負を語った。

優勝した柴田学園は青森県にウインターカップの出場枠を1つ持ち帰ることに [写真]=小永吉陽子


 一方、湯沢翔北も決勝では敗れながらも、東北大会で得た収穫は大きかった。湯沢翔北は昨年のウインターカップ出場を逃したことで「大胆にチームを作り変えようと思い、小柄で速い選手もいるけれど、役割的にスムーズにゲームが作れるという点で、チーム一の長身である177センチの佐々木がポイントガードを務めています」と樋渡真コーチはチーム状況を説明する。その改革が実って東北大会決勝進出へと躍進したことに、チームは手応えをつかみつつある。

「決勝では、相手にクォーターごとの出足でペースを作られて、うちはペースが作れずに苦労の展開の繰り返しでした。第2クォーターの中盤に仕掛けられそうでしたが、そこで流れを作れず、相手のほうが総合力は上でした。インターハイまでにはそれぞれの個性を伸ばして、その個性が試合の中で発揮できるようにチーム作りをしたい」(樋渡コーチ)

取材・文・写真=小永吉陽子

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