2022.07.18

インターハイ男子注目校(5)仙台大明成「全員攻防の走るチーム。一戦必勝、急成長を目指す夏」

昨年までとは違ったチームスタイルで挑む明成 [写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 7月27日から8月1日にかけて香川県で行われる「令和4年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」。熱戦が期待される夏の祭典の開幕を前に、バスケットボールキングでは大会で見るべき注目のチームをピックアップした。

■男子注目チーム(5)仙台大明成(宮城)

 3年ぶりの開催となった「第77回東北高等学校男女バスケットボール選手権大会 兼 第58回NHK杯大会(東北大会)」を優勝で飾り、「令和4年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」では第4シードを獲得した仙台大学附属明成高校(宮城県)。この3年間の明成は、スタメン平均身長が195センチ前後となる大型化を図ってきたが、今年は一転して一回り小さくなった布陣が走力を生かした攻防を展開する。

 サイズダウンといっても、東北大会決勝のスタメン平均身長は187センチ。全国的に見ても決して小さなチームではない。ただ、昨年までの明成はサイズを大きくしただけではなく、大型化でも全員が動いて3ポイントを打ち、ディフェンスではオールスイッチができる、ポジションレスのようなスタイルにトライしていた。そうした高校界初とも言える超大型化の挑戦からみれば、今年のスタイルはガラリと変わり、走力を生かした原点回帰のようなチーム作りをしているといっていいだろう。

 実のところ、東北大会が終わったときに佐藤久夫コーチは「今は新人戦のような段階」と状況を語っていた。新チームになってメンバー構成がガラリと変わったうえに、1月中旬以降、新型コロナウイルスの影響で対外試合も遠征もまったくできず、全国的に見ても試合経験値が少ないからだ。そのため、東北大会では一戦一戦に課題を見つけながら挑み、勝ち切る過程を大切にして戦っていた。今は試合ごとに経験と自信を植え付けているところだ。

 チームの柱となるのは内藤晴樹、八重樫ショーン龍、片原飛斗ら3年生のバックコート陣。この3ガードが運動量豊富なディフェンスからのトランジションバスケを引っ張り、要所で3ポイントを放つ形を作り出している。とくにエースの内藤は速攻、3ポイント、ジャンプシュートとアウトサイドでの得点力が高く、メンバー構成によってはポイントガードも務めるマルチプレーヤーだ。今年はその内藤がゲームキャプテンを務め、片原がチームキャプテンとしてチームをまとめている。サイズが小さくなった分は全員でリバウンドに跳び込むことを心掛けており、東北大会ではリバウンドで圧倒したことで優勝にたどりついた。全員攻防こそが今年の売りなのだ。

走力と3ポイントのシュート力がある八重樫ショーン龍 [写真]=小永吉陽子


 ただ、現時点ではチーム作りの骨格が見えてきたところで、佐藤コーチの目指す「1試合を通して激しく守り、激しく攻めるチーム」にはまだ届いていない。「自分たちのやりたいバスケを『やろうやろう』とするあまり、空回りしてしまうことがあります。もう一つ上の段階のチームになるために、空回りしそうなところで我慢ができる力をつけていきたい」と課題をあげる。

 実戦経験の場が増えてきたことで、急成長の階段をのぼっている明成。まだまだ化ける要素が十分にあるチームだ。この夏は『一戦必勝』の構えで、さらなるステップアップにチャレンジする。

文・写真=小永吉陽子

インターハイ2022のバックナンバー

BASKETBALLKING VIDEO