各シード校の初戦となった7月28日の「令和4年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会（インターハイ）」。第1シードの福岡第一高校（福岡県）は桐光学園高校（神奈川県）を72−52で破ったが、チームの雰囲気は決して良いものではなかった。

　福岡第一はこの試合、第2クォーターで25−5と一気に突き放し、前半終了時点で37−25。中村千颯、川端悠稀、宮平健太郎、髙木来希の3年生に2年生センターのムスタファ ンバアイを加えたセカンドユニットが躍動し、堅守から流れを引き寄せた。

　しかし、後半はこれ以上リードを拡大することができず、試合後の井手口孝コーチは開口一番、「初戦だからということなんでしょうか？　ちょっとスタメンが……」とボソリ。その言葉どおり、不満を漏らしたのはスターティングメンバーに対してであり、城戸賢心、轟琉維（ともに3年）のダブルキャプテンを筆頭とする5人は、本来のパフォーマンスにはまだまだ遠いプレー内容だった。

　大事な初戦、ましてや日本一を決める、負けたら終わりのトーナメントであれば、最初は硬くなってしまうのはある程度仕方がない。第1クォーターをわずか2点リードで終えたことについては、井手口コーチも想定済みだったと明かす。

　問題は第3クォーターにあった。セカンドユニットのプレーぶりをベンチで見守り、先発メンバーはハーフタイムを挟んで再びコートに立った。本来であれば、仲間の活躍に奮起され『今度は自分たちの番だ』と言わんばかりのプレーを披露しなければならなかった。しかし、「ここで30点差にして勝つつもりでした」（井手口コーチ）というゲームプランとは裏腹に選手たちの肩は一向にほぐれず、この10分間のスコアは15−19。同クォーターでのタイムアウトでは「ちょっと腹が立ちました」と、ついに井手口コーチからの激が飛んだ。

　この時、ゲームキャプテンを務める城戸の本人談によれば、「（5人全員が）全然ダメ。お前がキャプテンなんだからしっかりしろ！」と喝を入れられたという。ちなみに井手口コーチは、「3クォーターも気が抜けていましたね。まぁ、怒れるいいタイミングでした」とこの場面を振り返っている。

試合中、井手口コーチからの激が飛んだ [写真]＝吉田孝光

　城戸は冴えない表情で試合を総括した。この初戦で城戸は10得点を記録したが、約24分のプレータイムで得点につながったシュートは12本中4本。時にはリングに当たらないシュートもあり、「1本ミスをしてから迷いながらのプレーになってしまいました。もっと思い切って打つべきでした」と自身のプレーについても悔やんだ。

「負けたら終わりですから、負けなかったことは良かったということにしましょう。今日は全員のプレータイムも作れたので」。井手口コーチはそう言って丸く収めながらも、「まだまだ経験不足ですよ」と改めてチームの弱さを認識した様子で言及した。

　福岡第一は今日の経験を明日以降のトーナメントで生かし、失敗を成功の種に変えらなければならない。チームの中心を担う城戸は、次戦を見据え前を向いた。

「今日は修正力を発揮できなかったことがダメな部分でした。明日は切り替えて、自分たちの武器である粘り強いディフェンスからブレイクにつなげて、40分間自分たちのバスケットをしっかりやりたいです」

　日々の練習では、スターティングファイブがセカンドユニットの5人に負けることがよくあるほど、選手同士の力が拮抗している今年の福岡第一。明日の美濃加茂高校（岐阜県）との3回戦では、果たしてどの選手が先発のコートに立つかも注目だ。

文＝小沼克年
写真＝吉田孝光