2022.07.29

中部大第一が53点差をつけ好発進…連覇へのカギは個性が融合した『チーム力』

個性派集団をまとめる小澤は20得点とプレーでも貢献 [写真]=吉田孝光
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

 昨年のインターハイ覇者である中部大学第一高校(愛知県)が連覇へ好スタートを切った。7月28日に開催された「令和4年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会」の大会2日目。中部大第一は高松市総合体育館の最終試合に登場し、阪南大学高校(大阪府)を110−57でねじ伏せた。

 27日に1回戦を戦った阪南大学に対し、シード校の中部大第一はこの日が初陣。多少、初戦の硬さが見られるかと思われたが、ディフェンディングチャンピオンは試合開始からたたみかけて一気に主導権を握った。脚を使った守備でボールを奪うと、コート上の5人がどんどん前へアタック。第1クォーターを33−17、第2クォーターでは34−6とさらに加速し、前半の20分間でほぼ試合の行方を決定づけたと言える。

 攻撃面では下山瑛司と小田晟のガード陣がリズムを生み出し、ともにオールラウンドなプレーができる坂本康成が32得点、小澤飛悠(いずれも3年)が20得点を挙げてスコアリーダーとなったこの試合。立ち上がりの出来について、常田健コーチはオフェンスよりも守備意識を高く持って試合に臨んだことが成功した要因だと振り返る。

「当然、相手は対策を練ってきますから、ある程度ゾーンディフェンスを敷いてくるのはわかっていました。自分たちのペースでバスケットをしようと心がけていたなかで、『守れば勝てる。オフェンスでやり合いっこだけはしないように』というような話をしていて、ディフェンスをベースに試合に入ることができました」

 今年のキャプテンを務める小澤も「初戦ということもあり、自分たちは出だしが大事でした。たとえシュートが入らなくても持ち味の『ディフェンスからブレイク』をしっかりやることをチームで大事にしていましたし、それができたので良い出だしだったと思います」とコメント。加えて、場の雰囲気に呑まれずに良いスタートが切れるよう、試合前から少しの工夫をしていたと明かした。

「昨日ビデオで試合をチェックしていたときに、ほとんどのチームが試合の入りがうまくいってないということに気づきました。ウォーミングアップからしっかり声を出してやれば硬さがとれると思っていたので、まずはアップから声を出すことをチームで意識していました」

 この日の高松市総合体育館には、中部大第一のほかにもトーナメントの角に位置する福岡第一高校(福岡県)、開志国際高校(新潟県)、仙台大学附属明成高校(宮城県)のシード校が集結。先に戦った3チームも初戦を突破したが、一時は苦戦を強いられた。そのなかでも終始危なげない試合運びを披露したのが中部大第一であり、ライバルたちへ完成度の高さを示せたと言えるだろう。

 大会連覇を成し遂げるうえでの鍵は、ずばり『チーム力』。今年の中部大第一は「個性豊かでまとめるのが難しい部分もあります(笑)」と小澤が言うように、主軸を担う3年生たちの個性が際立つ。それだけに、6月の「第69回東海高等学校総合体育大会」からインターハイへ向けては、チーム力を高めてきたと常田コーチは語る。

「基本的には“個”を育ててきていますが、それをチーム力に落とし込むには、下山瑛司のスピードではなく5人のスピード。小田晟のディフェンスではなくチームでのディフェンス。というように、個の頑張りをチームに還元していくことを東海大会が終わってからは話し合ってきました。それがある程度できれば、結果はついてくると思っています」

「チームを勝たせること」を最優先する小澤も「1人が頑張っても他の4人が頑張らなかったら意味がなくなってしまうので、コートでは5人で頑張るという気持ちでプレーしています」と話し、主将としては「自分が主役ではないことを意識して、チーム全員が主役になれるように頑張りたい」と意欲を示す。

 互いの個性を最大限に生かしながらも、チームとして一枚岩になれるか。個性派集団が四国の大地で挑むチャレンジが今、勢いよく幕を開けた。

インターハイ連覇に挑む中部大第一 [写真]=吉田孝光


文=小沼克年
写真=吉田孝光

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