2018.08.25

弱小チームから悲願の山口全中出場…開催地代表、岩国東が歩んだ3年間

地元山口での全中を戦い抜いた岩国市立東中学校[写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 2018年には地元山口で「平成30年度全国中学校体育大会 第48回全国中学校バスケットボール大会」が開催される。それは今の3年生が中学に入学したときから、どの学校のコーチたちも、むろん本人たちもそこに中学3年間の集大成を持っていきたいと考えていたはずだ。

 しかし岩国市立東中学校(山口県)のエース、片根大空(3年)は「全中に出られるとは想像もしていなかった」という。なにしろ当時のチームは市大会でも勝てるかどうかの弱小チームである。ミニバスケットの経験者も少なく、唯一の望みの綱はジュニアオールスターで山口県選抜を率いた中村高之コーチがいることくらいだろう。それでも“ジャンボ”の愛称で知られる中村コーチは、他校のコーチたちと変わらぬ目標「山口全中出場」に向かって情熱を注ぎ続けた。

「玉島北(岡山県)や西福岡(福岡県)などに遠征に行かせてもらって、その経験で選手たちの意識も変わりました。いわば岩国東はいろんなチームやコーチに“育てられたチーム”なんです」

チームを決勝トーナメントまで導いた中村高之コーチ[写真]=三上太

 選手たちも徐々に意識が高まりだし、「(昨年夏の)三戸杯で優勝して、新人戦でも優勝したくらいから、もしかしたら全中に出られるんじゃないかと本気になってきました」と片根も認めている。そうして目標とする山口全中に山口県1位として出場を果たした岩国東。前日の予選リーグでは2戦目の西福岡戦に敗れたものの、初戦の沼田市立沼田西中学校(群馬県)戦に劇的ブザービーターで勝利を挙げ、決勝トーナメント進出も決めている。そして24日の決勝トーナメント1回戦で、岩国東は東海大学菅生高等学校中等部(東京都)に53-73で敗れ、彼らの山口全中は幕を下した。

憧れだった舞台で躍動した片根大空[写真]=三上太

 岩国東には2つの横断幕が掲げられている。そのうちの1つは33年前に同校が全中に出場したときに作られたものだ。

「かつて岩国東を率いていた塚田拓司先生が『あの横断幕がどこかにあるはずじゃけぇ、探してみぃ』と言ってくださったので、探してみたら体育館の倉庫にありました」

 しかし、出てきた横断幕はカビが生え、破れた箇所も多くある。それを中村コーチが継ぎ接ぎし、クリーニングに出して、再生させた。全中の目標は当時の先輩たちがなし得た「全中ベスト4」に追いつくことである。結果としてそこには届かなかったが、33年間封印されていた横断幕に日の目を見せたのは、間違いなく今年のメンバーたちである。堂々と胸を張っていい。

『質実剛健』と刻まれた伝統の横断幕[写真]=三上太

 実をいえば、岩国東は筆者の母校である。前出の塚田先生は私の恩師であり、全中に出たのは私と入れ違いの先輩たち。のちにいすゞ自動車などで活躍した塩屋清文氏がその中心選手だった。全中に行けなかった先輩(私)ではあるが、後輩たちのがんばりにはやはり心を打たれるものがあった。しかし一番心を打たれたのは試合前、彼らが全力で校歌を歌っていたことだ。試合後、中村コーチに「あれは(夏の高校野球で注目を浴びた秋田・)金足農業高校をあやかったのですか?」と聞くと、そうではないという。

「2年くらい前から学校のテーマが『全力で校歌を歌う』になったんです。私が生徒指導をしているときです。だからバスケット部も大事な試合の前には全力で校歌を歌っています」

大事な試合の前には全力で校歌を歌う[写真]=三上太

 勝利の凱歌とはならなかったが、2年前までは弱小チームだった彼らが全中の、しかも決勝トーナメントに立っただけでもあの校歌を轟かせる価値はあったと思う。当然、筆者もうん十年ぶりに口ずさんだ。

写真・文=三上太

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