2018.08.26

「背の小さいチーム」梁瀬、平面的なバスケットとチームディフェンスで全中4強

ベスト4に入った朝来市立梁瀬中学校には170センチ台の選手がいない [写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 8月25日に山口県で行われた「平成30年度全国中学校体育大会 第48回全国中学校バスケットボール大会」の女子準決勝に勝ち進んだチームの中で、唯一170センチ台の選手がいないチーム――それが朝来市立梁瀬中学校(兵庫県)だ。近年、中学女子も大型化してきていて、170センチ台の選手がいるチームは決して少なくない。その観点から言えば、梁瀬は「背の小さいチーム」といえる。

 チームを率いる松本隆コーチが言う。

「ある選手はミニバス時代に背が低くて、コーチから『中学ではバスケットをやめろ』とまで言われたことがあるんです。でもその子はバスケットをやりたい。だったら、そういう子を活かすためにどうすればいいかを考えてきました」

 たどり着いたのは、やはりというべきか、ディフェンスである。しかし日本の中学では現在、ゾーンディフェンスは禁止されている。マンツーマンの範疇でいかにディフェンスを工夫するか。全中ではベンチにこそ入らなかったが、長年同校を外部コーチとして指導してきた岡田勉氏と松本コーチは、旧知の指導者、現在は東海学園大学の女子バスケットボール部を指導している杉浦裕司氏に相談しながら、相手を苦しめるチームディフェンスを作りあげてきた。

「ノーマルにマンツーマンをしていたら、ノーマークと一緒。しかも相手に頭の上にボールを上げられた時点で負けになりますから(つまりは届かないということ)」

チーム全体で相手を抑えこんだ [写真]=三上太

 オフェンスもコート上の空間(スペース)を巧みに使い、様々なドリブルテクニックを使った「駆け引き」で相手とのズレを生みだす。いわゆる「平面的なバスケット」で勝負を挑み、それを貫いたことで全中の最終日まで残ることができた。

「(普通にやっていたら)ベスト4には残れないチームです。いや、全中にも出られるようなチームではありません。それでも、どうすれば全中に出られるかを岡田氏と話しながら、平面的なバスケットをやるしかないと。それをやり始めて3年目。やり続けたことが実を結びました」

優勝校相手に自信をつかんだはずだ [写真]=三上太

 全中の準決勝では、八王子市立第一中学校(東京都)に44-66で敗れたが、立ちあがりから自分たちのディフェンスで挑んだ。しかし相手は結果として全中を制するチームである。対策を練られ、梁瀬の「仕掛けるディフェンス」はことごとくいなされた。途中から守り方を変えはしたが、「初めから悔いの残らないバスケットをしよう」と決して逃げることはしなかった。

 隣のコートでもうひとつの準決勝を戦い、決勝戦まで勝ち進んだ高取市立取石中学校(大阪)とは、この夏20日間近く一緒に練習や練習ゲームをしてきた。切磋琢磨したチームと「できれば決勝戦で対戦したかったのですが……」と松本コーチは言う。

 その思いは叶わなかったが、山口全中ベスト4という結果は梁瀬の小さな選手たちに大きな自信を与えたはずだ。

文=三上太

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