2018.07.03

ファジーカス、八村が入っただけではなく、チームとの融合が強化につながった

チャイニーズ・タイペイに圧勝して喜びを分かち合う男子日本代表[写真]=fiba.com
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

絶対に負けられない一戦はファジーカスの連続得点でスタート

ニック・ファジーカス八村塁の加入でチームは変化した[写真]=fiba.com


 オーストラリアに1点差とはいえ勝利したのはフロックではなかった。それを証明した今回のチャイニーズ・タイペイ戦だったと言えよう。

 オーストラリア戦では先陣を切ったのは八村塁(ゴンザガ大学)だったが、この日は同じくWindow3から加入したニック・ファジーカス川崎ブレイブサンダース)だった。ファジーカスはが富樫勇樹千葉ジェッツ)のアシストから先取点をあげると、今度は比江島慎シーホース三河)からのアシストで連続得点。それに呼応するように富樫が連続得点、そして八村が速攻を決めて13-4とリードを奪うと、チャイニーズ・タイペイのチョー・チュンチャンヘッドコーチはタイムアウトを請求した。

 その後も日本の猛攻は続きアイムアウト明け後も7連続得点とあげたが、タイペイが反撃を見せたのは控えのルーがフリースローを1本決めてから。タイペイは2-2-1のゾーンプレスから2-3のゾーンにディフェンスをチェンジし、日本のオフェンスを止めに入った。さらに投入されたシューター陣が日本のゾーンディフェンスに対して3ポイントをシュートを決めて、点差を詰めていった。

 しかし、この状況の中、フリオ・ラマスヘッドコーチは冷静に試合を見ていた。それまではオーストラリア戦でも成功したチェンジングディフェンス、シュートが入ると2-3のゾーンディフェンス、シュートが落ちる、もしくはターンオーバーの際はマンツーマンで守るシステムをマンツーマンのみに変更。チャイニーズ・タイペイに詰め寄るスキを与えない。

 この日のラマス采配は相手よりも効果的な一手を先に打っていった。ウイング陣の先発は田中大貴アルバルク東京)と比江島だったが、ここに馬場雄大(A東京)を絡めてローテーションを行い、それぞれが思い切りのいいパフォーマンスを発揮した。またフロントコート陣のローテーションも的確だった。先発のファジーカス、八村に、控えの竹内譲次(A東京)のローテーションで、竹内がファウルトラブルに陥ると、今度は太田敦也三遠ネオフェニックス)をコートに入れ、デービスのテクニカルファウルを誘発させるなど、選手起用でも主導権をタイペイに渡さなかった。試合後、ラマスHCは「リードを広げられたことで、相手が焦ってきたのがわかった」と、冷静に試合を見ていたことを明かしている。

 この試合、唯一流れが悪くなったと言えたのが第3クォーターの出だしだろう。前半を47-28で折り返した日本だったが、この場面でチャイニーズ・タイペイは何とか流れを変えようとディフェンスの圧力を上げ、オフェンスでも思い切りのいいシュートを決めだした。しかし、その流れを切ったのがファジーカスだった。司令塔の富樫は「嫌な感じになったが、そこでニック(ファジーカス)が3ポイントをシュートを決めて、再び点差を20に戻してくれたので、とても安心できた」と、試合後語ったように、オフェンスからリズムを取り戻すと、入れ合いとなった第3クォーターでも30-29とリードを縮めさせない。

 そして第4クォーターに入ると完全に試合を掌握する。実に日本は19連続得点のビッグランを決め、勝利の大勢を決めてしまった。日本はコートに立つ選手たちが攻防両面においてチャイニーズ・タイペイを圧倒。終わってみれば、108-68の大差でチャイニーズ・タイペイに勝利し、日本はアジア2次予選進出を手繰り寄せた。

新戦力を入れただけでなく、他メンバーとのへの調和でチームが進化

戸惑いながらも本来の力を発揮した富樫勇樹[写真]=日本バスケットボール協会


高確率のシュートでチームに勢いをもたらせた比江島慎[写真]=日本バスケットボール協会


 ファジーカス、八村の加入がチームを大きく変えたのは違いない。ただ、韓国との親善試合ではまだコンビネーションやコミュニケーションの面で不安な面が多かったのも事実だろう。司令塔の富樫は、「2人(ファジーカスと八村)にボールを入れることばかり考えていた」ばかりに本来の積極性性が下がり、自身の得点力が下がっていたことを語った。また比江島も攻撃のタイミングを逸し、打てるタイミングでパスを選択する場面もあった。しかし、日韓戦からの2週間でそれらを修正でき、オーストラリア戦で身につけた自信とともに迎えたチャイニーズ・タイペイ戦では、富樫が3本ポイントが4分の6と本来のシュートを力を取り戻すと、比江島はフィールドゴールが7分の8という高確率で17得点をゲットした。

 Window2まで苦戦が続いた中、チームを引っ張っていた富樫は、「本当にチームが変わった。その流れにしっかりと乗って、もう1つ、2つ上のレベルに行けるように努力したい」と語れば、比江島は「2次予選は1試合も気が抜けないし、どんどん質を高めていけば、みんなの自信につながっていくのでさらに勝ち進んでいけると思う」と笑顔で振り返った。

 アジア2次予選Window4は9月13日にアウェー戦(対戦国、会場は未定)でスタート。第2戦は同17日、大田区総合体育館(東京都)で開催予定だ(対戦国未定)。八村は「学校(ゴンザガ大)と(ラマスヘッド)コーチと相談して、2次予選に出られるようにしたい」と語る。NBA入りを目指すためアメリカの地でトレーニングに励む渡邊雄太(元ジョージ・ワシントン大学)は自身のツイッターで、「素晴らしいです!! 日本代表おめでとう!!  先日オーストラリアに競り勝ち、今日は台湾に快勝で2次ラウンドへ!!  めちゃくちゃ嬉しいけど、なんか次代表でプレーする時のハードルがめちゃくちゃ上がってしまった気が…笑 頑張らんと。」(原文まま)と、代表への合流を心待ちにしている。


「このチームはもっと強くなる」。1つのミッションをクリアしたラマスHCは自信に満ちた表情で語った。

※日本対チャイニーズ・タイペイ後のWindow3の試合が終了し、アジア地区2次予選の日程と対戦チームが日本バスケットボール協会から発表された(JBA公式ホームページから抜粋)。

■2次予選グループF 順位表
1位 オーストラリア:5勝1敗(勝ち点11)
2位 イラン:5勝1敗(勝ち点11)
3位 フィリピン:4勝2敗(勝ち点10)
4位 カザフスタン:3勝3敗(勝ち点9)
5位 日本:2勝4敗(勝ち点8)
6位 カタール:2勝4敗(勝ち点8)

■2次予選グループF 試合日程
9月13日(木)[アウェー]カザフスタン
9月17日(月)[ホーム]イラン
11月30日(金)[ホーム]カタール
12月3日(月)[ホーム]カザフスタン
2月21日(水)[アウェー]イラン
2月24日(土)[アウェー]カタール

文=入江美紀雄

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