2019.03.29

【連載】篠山竜青の「おかげ様です」第9回 W杯予選全試合振り返り&本大会へ向けて

キャプテンとして日本代表をW杯出場に導いた篠山竜青(川崎ブレイブサンダース) [写真]=fiba.com
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4連敗からの8連勝フィニッシュでFIBAバスケットボールワールドカップ2019本大会への出場を勝ち取った日本代表。予選終了から1カ月、キャプテンに定着した篠山竜青川崎ブレイブサンダース)が1年半にわたる戦いを追懐した。苦しい時間を過ごしながらも、最後に歓喜を味わったポイントガードは、激闘を懐かしむだけでなく来る本大会に向けて課題も口にした。

インタビュー・文=安田勇斗
写真=山口剛生、fiba.com

■アジア地区1次予選Window1

・2017年11月24日@駒沢体育館
vsフィリピン(●71-77)
17分12秒出場 4pts 0reb 2ast 0stl
満員のお客さんがいい雰囲気を作ってくれたのですが、逆にその空気に飲まれた感じがありました。Bリーグでも大勢の方々の前でプレーしていますけど、全然違いましたね。国を背負うってこういうことなのかと。男子日本代表は長年結果を出せず、いろいろなことを言われてきました。もちろん見返そうという気持ちでコートに立ちましたけど、勝たなきゃというプレッシャーで動きが重くなり、試合の入り方から良くなかった。フィリピンはこれまでの実績を見ても格上の相手でしたけど、勝つチャンスはあると思っていました。実際に試合をしてみて改めてそう感じましたし、あの試合は僕自身も含めて自分たちから崩れてしまったように思います。

・2017年11月27日@オーストラリア
vsオーストラリア(●58-82)
14分6秒出場 4pts 1reb 2ast 1stl
今回からホーム&アウェー方式で予選を戦うことになり、試合の間隔が短い上に、初めてのロングフライトを経てのゲームでした。正直、コンディション面のキツさはありました。でも、相手も同じような状況で、オーストラリアの選手も動きが重かったように感じましたし、だからこそ第3クォーターまで食らいついていけたのかなと。その中で僕自身はターンオーバーをしてしまったり、簡単なミスをしてしまったり、個人的にも悔しいゲームでした。今思えば、あらゆることを気にしすぎたのかなと。飛行機に乗っている間に何をするか、時差がどれぐらいあるのか、現地でどうコンディションを上げるか、筋トレをするか、プールに入るか。考えすぎた結果、プレーでもうまくいかなかった感じがします。相手がフルメンバーではなかったので、もしかしたらいけるのでは、という手応えがありました。それだけに自分自身、コンディションをうまく整えられず、もったいなかったです。

■アジア地区1次予選Window2

・2018年2月22日@横浜国際プール
vsチャイニーズ・タイペイ(●69-70)
15分26秒出場 2pts 3reb 2ast 0stl
この試合はキツかったです。必ず勝たなければいけないゲームで、スタートで出してもらい、自分がチームを引っ張って真正面からぶつかって勝たせるんだという想いで臨みました。それが出だしでつまずいて、自分のシュートも決まらなくて、効果的にチームをコントロールすることもできず、最初から出場しながらプレータイムは15分ぐらい。終盤にポッと出てフリースローをもらいながら落としてしまい、1点差で負けるという。メンタル的に相当キツかったです。気負いがあったんだと思います。代表戦はやっぱり難しいなと感じました。

・2018年2月25日@フィリピン
vsフィリピン(●84-89)
23分40秒出場 9pts 2reb 4ast 1stl
チャイニーズ・タイペイ戦が終わって、代表ではこの試合が最後かもしれない、と考えるぐらいヘコみました。SNSでも自分に対して結構厳しい声があって、このあたりからですね、エゴサーチするのやめようって思ったのは(苦笑)。フィリピン戦はもう開き直ってプレーしました。ゴール下を制圧されて、チームは接戦の末に敗れましたけど、自分にやれることはやれたかなと思います。ターンオーバーがいくつかあったのでそこは修正しなくてはいけないと思いましたけど、これまでのマイナスを多少は取り返せたかなという感覚はありました。もちろん、この試合で4連敗を喫してしまったので、チームとしてはかなり厳しい状況でしたけど、個人的には少し自信を回復しました。

■アジア地区1次予選Window3

オーストラリアから大金星 [写真]=fiba.com

・2018年6月29日@千葉ポートアリーナ
vsオーストラリア(〇79-78)
21分18秒出場 4pts 3reb 3ast 0stl
オーストラリア戦の前に、大田区と仙台市で韓国との強化試合があったんですけど、大田での1戦目にミスを連発してしまったんです。で、仙台での試合では使われず、そのまま代表戦に臨みました。このWindowでは13人が招集され、1人がベンチから外れる状況だったんですが、次のチャイニーズ・タイペイ戦では自分が外れるかもしれないと思っていました。もう今度こそ、この試合が最後だなと(苦笑)。家族にもそれを伝えて、前の試合以上に開き直り、命を懸けてやろうとコートに立ちました。その結果、チームも素晴らしいプレーを見せて勝ちましたし、僕自身も自信を得られました。強いて言えば、決めなくてはいけないシュートはありましたけど、ディフェンスでは大事な場面でマイボールにできましたし、次もメンバーに入れるという手応えがありました。相手は世界の強豪でしたけど、勝てるかどうかと考えず、やるしかないと腹をくくれたのが良かったのかなと思います。まあ、とにかくあの試合は疲れました(笑)。

・2018年7月2日@チャイニーズ・タイペイ
vsチャイニーズ・タイペイ(〇108-68)
18分46秒出場 6pts 1reb 4ast 1stl
チームも自分も、オーストラリアに勝ったという自信をそのまま出せました。正直あまり記憶がなくて(笑)、勢いそのままに戦って勝った試合でしたね。個人的にもEFF「9」でアジア予選で一番良かったし、こう戦えば勝てるというのがチームとしてわかってきた感じがありました。

■アジア地区2次予選Window4

2018年9月13日@カザフスタン
vsカザフスタン(〇85-70)
17分7秒出場 0pts 1reb 1ast 0stl
ニック(ファジーカス/川崎ブレイブサンダース)が足の手術をして間に合わなかったんですが、ナベちゃん(渡邊雄太/メンフィス・グリズリーズ)と、Window3に続いて(八村)塁(ゴンザガ大学)がチームに合流しました。2人ともとんでもないオフェンス能力を持っていて、このあたりから比江島(慎/栃木ブレックス)や馬場(雄大/アルバルク東京)もガンガンアタックするようになり、ポイントガードの自分としてはそういう選手にどんどんボールを散らしていこうと、頭で考えてというよりは感覚的にシフトしていきました。ディフェンスで貢献して、ボールをプッシュして、効率のいいセットプレーをコールする。個人としては次のイラン戦でもシュートを全然打っていないですけど、チームも勝ちましたし、いい流れが作れたかなと思います。

・2018年9月17日@大田区総合体育館
vsイラン(〇70-56)
18分52秒出場 0pts 2reb 2ast 1stl
相手のポイントガードが得点能力の高い選手だったので、そこを抑えることを特に意識していました。それとイランはアップテンポのゲームを苦手としている印象があって、自分たちが走れば疲れてくると考えていたので、オフェンスのリズムも大事になるなと。塁にボールを集めることができたし、走るところと止めるところのコントロールもできたし、チームも勝てたので自分の仕事はできたと思います。結果的にシュート0本でしたけど、こういう自分の出し方、貢献の仕方もあるのかなと感じたゲームでした。

■アジア地区2次予選Window5

カタール戦では予選最多5アシスト [写真]=山口剛生

2018年11月30日@富山市総合体育館
vsカタール(〇85-47)
19分36秒出場 4pts 2reb 5ast 1stl
ナベちゃんと塁を招集できず国内組で戦い、次のカザフスタン戦を含めて連勝を飾り、チームとしてはすごく手応えを感じることができました。ただ個人的には、富樫(勇樹/千葉ジェッツ)が負傷でベンチに下がった中でファウルトラブルに陥ってしまい、悔しさもありました。後半スタートで出ながら立て続けにファウルして、(田中)大貴(アルバルク東京)に本職ではないポイントガードを任せることになり、そこからリズムをつかんだように思います。最終的には大差で勝つことができて、チームとしては自信を深めたゲームでした。

・2018年12月3日@富山市総合体育館
vsカザフスタン(〇86-70)
7分27秒出場 1pts 1reb 3ast 0stl
この試合も大事なゲームで、ファウルの数は気にせず、ファウルにビビるのは自分じゃないと思いきってやって4ファウルとなり、プレータイムは予選で最短の7分でした(苦笑)。チームは勝ちましたけど、迷惑をかけた想いもあって悔しかったですね。でも、Window1やWindow2の時のように気持ち的に引きずるほどではなく、すぐに切り替えられたのは自分なりに自信を持てるようになったからだと思います。チームとしても、誰かがファウルトラブルやケガでいない状況でもガクッと落ちることはなく、勝てるようになってきました。そういう点でも、ワールドカップ予選を戦っていく中で成長してきたと感じます。

■アジア地区2次予選Window6

2019年2月21日@イラン
vsイラン(〇97-89)
17分43秒出場 4pts 1reb 1ast 0stl
イランは実績で上回るチームですけど、この時には「勝たなきゃいけない相手」になっていました。ディフェンスをしっかりやってリバウンドが取れれば勝てるぞと。それぐらいみんなが自信を持って戦えるようになりました。この試合は第1クォーターの最後にバスケットカウントを取ったんですが、自分としてはその前の、辻(直人/川崎ブレイブサンダース)へのアシストでいい感触が得られました。辻に打たせるセットをコールして、ノーマークの辻にいいパスを出せて、しっかり決めた辻自身も気持ち的に乗れたと思いますし、僕も手応えを感じました。チームも第1クォーター(35-28)でリズムをつかみ、僕自身は17分の出場でしたけど勝利に貢献できたかなと思います。

・2019年2月24日@カタール
vsカタール(〇96-48)
19分27秒出場 3pts 0reb 1ast 0stl
1年半にわたるアジア予選の集大成ですね。予選でやってきたことのすべてを表現しようと、(フリオ)ラマスヘッドコーチからも「テレビをとおして見てくれる方々に何かが伝わるプレーを見せよう」と言われました。一方で「勝てばワールドカップに出られるということは忘れよう。この40分間にフォーカスしてくれ」とも言われ、そのどちらも体現できたんじゃないかなと。スコアも内容も良かったですし、僕自身もバスケットを知らない人、ルールがわからない人に何か伝わるプレーをと思っていて……そしたら全米1位を獲得してしまいました(笑)。※第3クォーター残り3分、3ポイントラインから離れた位置から、体勢を崩しながら左手1本でシュートを放ち見事に決めた。アメリカのテレビ局『ESPN』のスポーツ番組でスーパープレーを紹介するコーナーがあり、このプレーが2019年2月25日のトップ10で第1位に選ばれた
 

■篠山が選ぶアジア地区予選ベストゲーム

うーん、難しいなあ……アウェーのイラン戦かな(2019年2月21日〇97-89)。ホームのオーストラリア戦って言ったら何か負けな気がして(笑)。オーストラリア戦はビッグサプライズでしたけど、自分にとってターニングポイントになったのはイラン戦かなと。国内組もここまで成長したんだぞ、というのを示せた試合でした。アウェーのボロボロの体育館に多くの観客が来て異様な雰囲気の中でのゲームでしたけど、試合中にみんなが勢いづいて、本当に“日本一丸”となっての勝利だったと思います。
 

■篠山が選ぶアジア地区予選ベストプレー

ホームのオーストラリア戦でのレイアップですね。ディフェンスリバウンドを取って、そのまま自分で持ちこんで決めたシュートです(第4クォーター残り21秒、77-74と点差を広げるレイアップを決めた。最終スコアは79-78)。勝利を目前に手繰り寄せるプレーでしたし、打つ時の歓声、決めた後の盛りあがりがすごかった。打つ瞬間はちょっとドキドキしましたよ(笑)、後ろからダッシュで追いかけられているのがわかっていましたから。あの時はスタミナ切れでフラフラで足もつりそうでした。両サイドからの歓声で何とか立っているような状況で、後ろからの歓声で前に押し出してもらっているような感覚でした。決めた後、本当はスタンドを盛りあげるジェスチャーをしたかったんですけど疲れきっててできませんでした(苦笑)。間違いなく自分のキャリアにおいて、一番歓声をもらったシュートでしたね。
 

■篠山が選ぶアジア地区予選ベストシーン

ルーズボールでの競り合いで相手と交錯 [写真]=fiba.com

アウェーのイラン戦での首を絞められたシーン(笑)。ルーズボールになって相手選手と競り合ったんですけど、その時、たぶん相手の手が偶然、僕の首のところに入っちゃったんですよ(第4クォーター残り8分20秒、ゴール下でイランの選手と交錯。首を絞められている格好になり、相手はアンスポーツマンライクファウルを取られた)。決して本気で絞められたわけではないので、相手選手の名誉のために言っておきます。ただ本音を言うと、あの時、オーバーアクションで審判にアピールしたのはあります(笑)。それでアンスポを取られたのでグッジョブとしときましょう。それとこのシーンを選んだのはもう一つ理由があって、審判の笛が鳴った後にベンチを見たらみんなめっちゃ笑ってたんですよ。辻とも話していたんですけど、めちゃくちゃ大事な試合でああやって笑えるって、本当にチームの雰囲気が良かったんだなと。一体感があって純粋に試合を楽しんでいたからあの緊迫した場面でも笑えたし、だからいいゲームができたんだと思います。
 

■ワールドカップ予選ラウンド組み合わせ

トルコもチェコもランキングは上位ですし、間違いなく強いです。試合をちゃんとは見ていないですけど強いに決まってますよね(笑)。トルコはNBAでプレーしている選手も何人かいますし。チェコはリオデジャイネロオリンピックのOQT(世界最終予選)で敗れた相手で、僕はその時出ていないですけど、そこから日本がどれだけレベルアップしているかがわかりますし、楽しみな試合です。あの試合は辻と比江島が良かったイメージがあって、そういう対戦経験も活きてくると思います。アメリカは……どうしましょうか(笑)。35人の候補選手が発表されていますけど、誰が来ても自分たちにとってはいい挑戦になると思います。その中にはレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)やステフィン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ)もいますし、あと個人的にはカイリー・アービング(ボストン・セルティックス)と対戦したいです。5、6年前にアメリカに行った時に、(クリーブランド)キャバリアーズのワークアウトに入れてもらって、その時在籍していたカイリーと一緒に練習させてもらったんですよ。同じポジションですし、マッチアップできたらうれしいですね。
 

■本大会に向けて

伸ばしたいところが2つあって、1つは外からのシュートのパーセンテージをどんどん上げていくこと、もう1つはミスを減らすこと、ターンオーバーを少なくすることを意識しています。オフェンスについては周りを活かすことを考えつつも、試合の半分ぐらいに出ているのでもっと得点を決めないとという気持ちもあり、自分の中でずっとせめぎ合いがあります。なのでまずはノーマークのシュートを絶対に決める。高確率で決めないと信頼されないですし、自分自身ももっと自信を持って打ちきる選手になりたいので。打つか打たないかは別として、常に打てる準備はしておきたいなと。ミスについては、当然ながら一番やってはいけないことなので、そこは突き詰めていきたいですね。

ワールドカップまで約5カ月 [写真]=山口剛生

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