2021.11.27

控えのPG齋藤拓実が本領発揮…「交代選手たちでアップテンポなバスケに近づけたかな」

A代表デビュー戦で本領を発揮した齋藤拓実 [写真]=伊藤 大允
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

新たなスタイルに可能性を見出す齋藤拓実

「FIBA バスケットボールワールドカップ2023アジア地区予選」Window1中国代表との初戦が27日、ゼビオアリーナ仙台で行われた。トム・ホーバスヘッドコーチが男子代表の指揮を執る初陣は63−79と敗れた。

 試合開始直後の出だしの悪さだけでなく、改善点はあちら、こちらとあるように思えた日本代表だった。

 もちろん、翌日にも同じ相手に試合を控えているのだからそんな暇はないと言えばそうなのだが、新指揮官であるホーバスHCをはじめ、選手たちの言葉は意外なほど前向きなように感じられた。

 その内の一人、齋藤拓実は淡々とした口調ではあったものの、この新たな旅路に出たばかりのチームのプレースタイルに可能性を感じているようだった。

“JAPAN”の赤い文字が入ったユニフォームをまとった齋藤が先発PGの富樫勇樹に代わってコートインしたのは、第1クォーターの半ばだった。身長172センチと富樫同様に小柄で大枠では同種の司令塔である齋藤だが、試合開始直後から波に乗れない自分の様子をベンチから冷静に観察していた。

「最初、出だしが悪かったと思います。それはファイブアウト(5人がアウトサイドに位置取る戦術)で少しオフェンスのボールの動きが止まっていたのと、点を入れられた後少しクイックインバウンドができていなかったから。もう少し速い展開にしたかったので、交代選手たちでアップテンポな展開に近づけたかなと思います」

 東京オリンピックでホーバスHCは、日本女子代表をサイズのなさを補う”ファイブアウト”もしくは”フォーアウト”といった戦法で、五輪史上初の銀メダルという結果に導いた。同氏が「日本に合う」というこのスタイルは一方で、選手に高いIQとディテールにこだわることを求めるものだ。

 土曜日の、ホーバス体制における船出となった中国戦は、齋藤に言わせれば「バスケの精度がまだまだ低い」ものとなってしまったが、言葉のトーンは決して暗いものではなかった。それは、精度が上がっていった時に展開されるものに対しての期待感の現れと取れる。

PGの動きに周りがもっと連動する必要性

齋藤は果敢にアタックして流れを引き寄せた [写真]=伊藤 大允


 今季、名古屋ダイヤモンドドルフィンズで平均12.1得点、リーグ6位の6.2アシスト、3P成功率で46.2パーセントと高い数字を残している齋藤だが、この中国戦では4得点3アシスト。放った3ポイントシュートは1本のみではあったものの、代表ではスコアリングよりもゲームコントロールと、縦への速さを生かしたボールプッシュがより求められていくことになりそうだ。

 土曜の初戦で中国は、高さだけに頼るのではなく足も良く動いていた印象だったが、それもあって、とりわけ前半戦の日本の選手たちは足が動いていなかったところもあった。

 齋藤は、自身や富樫らPGの動きに対して周りがもっと連動して動く必要性を説いた。

「(中国との初戦は)PG周りの人たちがコーナーステイしたりウィングの選手もシュートを打つために待っているというところがバランス的に多かったので、日々の練習でやってきたように、ディフェンスを見ながらもう少しウィング、コーナーの選手がカッティングしたほうが、もう少しトムさんのバスケに近づくと思います」

 新体制の日本代表で齋藤にとって利点となるのが、今季の名古屋のオフェンスのスタイルとホ―バスHCのそれに共通点が多いところだ。とは言え、異なるチームから来た選手たちと呼吸を即席で合わせていくのは容易ではない。

 しかし、PGにもサイズを求めたところがあったラマスHC時代には巡ってこなかった好機だ。事前合宿でのミーティングではホーバスHCから、日本女子代表PGの町田瑠唯がいかにペイントアタックから周りの選手に合わせてパスを供給していたかという例の話があったようだ。

 齋藤に期待されるのは、いわば「男子における町田瑠唯」になるといったところか。

文=永塚和志
写真=伊藤 大允

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