2022.07.12

【アジアカップ対戦相手紹介】W杯予選ではイランに2連勝…要注意国でありながら、脆さも見え隠れするカザフスタン

W杯予選では強豪イランに連勝を収めるなど好成績を残しているカザフスタン[写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 FIBAアジアカップ2022で日本の初戦の相手となるのがカザフスタンだ。日本との対戦は2018年のワールドカップ予選以来。当時は日本が2連勝している(85-70/86-70)。

 カザフスタンはフィジカルの強さを生かしたリバウンドと要所の3ポイントで勝負するチームだ。。2007年にはアジアカップで4位に浮上し、そのポテンシャルの高さにアジアを震撼させたこともある。だが、代表チームを強化している時と、していない時のチーム力の差が激しく、アジアではなかなか浮上できない時期が続いている。

2018年12月の対戦ではニック・ファジーカスが41得点の大暴れ [写真]=山口剛生


 そんななか、この1年のカザフスタンは、これまでにない結束力を見せている。現在進行中のワールドカップ予選では5勝1敗と好調で2次ラウンド進出が決定しており、なかでもイランに2連勝(73-69/68-60)していることは見逃せない。

 Window2でのイラン戦は帰化選手の万能型ガード、アンソニー・クレモンズの活躍が勝利のポイントになったが、7月のWindow3ではクレモンズ抜きで接戦を制している。しかもイランの大黒柱であるハメド・ハダディを擁したチームを倒したことで、アジアカップでも要注意チームへと躍り出たといえるだろう。

 軸となるのは4年前から変わらず、フロアリーダーでコンボガードの#10ルスタム・ムルザガリエフ(192センチ/30歳)、ウイングとインサイドを兼任する#24ドミトリー・ガヴリーロフ(200センチ/35歳)、#25マキシム・マルチュク(196センチ/28歳)だ。Window3のイラン戦ではムルザガリエフが3ポイント4本を含む26点と大当たりだった。

イラン戦でもチームをけん引したルスタム・ムルザガリエフ[写真]=fiba.com


 カザフスタンがイランに2連勝した理由は、ディフェンスの組織力が高まってきたことがあげられる。アジアカップのロスターでは6名がBCアスタナ所属になっているが、直近の21-22シーズンでは7名がBCアスタナでプレーしているため、お互いを分かり合っているのだ。またワールドカップ予選から指揮を執るオレグ・キセレフは今シーズンよりBCアスタナのヘッドコーチとなるだけに、選手たちを熟知していることが強みと言える。

 また、近年は3ポイントに力を入れていることにも着目したい。ワールドカップ予選1次ラウンドの6試合では、一試合における3ポイントの平均試投数が日本(36.2本/26.7%)、ニュージーランド(33.3本/30.8%)に次ぐ3位で30.2本。確率は日本よりも上回る32.0%だ。

 ただ、イランに2連勝しているカザフスタンだが、ワールドカップ1次ラウンドの最後に落とし穴が待っていた。Window3でイランに勝利した3日後、ホームでバーレーンに51-62で敗戦。出足で13-0、第1クォーターで24-9と圧倒しながらも、第2クォーターにバーレーンの変則的なディフェンスの前にターンオーバーを重ね、そこから走られて最後まで立て直すことができなかった。カザフスタンの弱点は、以前から変わらず連戦によるスタミナのなさとターンオーバーから崩れることにある。

イラン戦の快勝から一転、3日後のバーレーン戦では脆さを見せた[写真]=fiba.com


 なお、今大会はWindow3とほぼ変わらないメンバーになっているが、7月11日の夜に公式ロスターに名があった主軸のニコライ・バジンの名前が7月12日には消えており、11名になっている。またここ数試合、代表から離れているアレクサンダー・ジグリンと帰化選手のアンソニー・クレモンズら得点源は選出されなかった。これらの選手層を見ると、3ポイントが当たらない場合の得点力は劣る。ただし、直近にバーレーンに喫した手痛い敗戦が、チームを見直すきっかけになることもあり、要注意チームであることに変わりはない。

文=小永吉陽子

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