2022.07.16

【アジアカップ対戦相手紹介】C組1位をかけた激突!大黒柱ハダディを軸に、停滞期からの脱却を目指す元アジア王者イラン

実績十分のイランだが、現在は“停滞期”か[写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 7月17日、グループCの1位をかけて対決するのがイランだ。アジア屈指の高さとフィジカルの強さを生かし、2007年の初優勝を皮切りに、2009、2013年にアジアを制覇。それ以降も常にアジア上位に君臨する強豪である。その歴史の中心には、今回もロスターに名を連ねている218センチのセンター#15ハメド・ハダディ(37歳)と、今回は選外のサマッド・ニックハ・バハラミ(198センチ、39歳)という2人の大黒柱がいた。

 2019年に中国で開催されたワールドカップの予選において、日本はイランに2勝(70-56/97-89)をあげている。しかし、その2試合にはハダディとバハラミは不在だった。イランは2019年のワールドカップに2人の大黒柱を代表に戻すと、プエルトリコに81-83と金星寸前のゲームを展開し、アンゴラとフィリピンに勝利をあげ、ワールドカップでアジア最上位となって東京五輪の切符をつかんでいる(中国も2勝をあげたが、得失点差でイランが上回った)。

2019年2月の試合では比江島が24得点を挙げるなど躍動して勝利[写真]=fiba.com


 しかし、2人のリーダーの全盛期が過ぎた今、2019年のワールドカップ以降はチームの新陳代謝が求められている。正確に言えば、数年前から世代交代が進められて主軸は確立されているのだが、それに続く若手の底上げがないために、いつも同じ顔ぶれが、同じような試合展開を繰り返している。

 いってみれば停滞期。そのため、東京五輪では機動力のなさを露呈して3戦全敗。決勝に進んだアメリカとフランスが同組だったこともあるが、平均得点では68.7点で最下位(日本は78.3点)。出場チームの中で70点に達しなかったのはイランだけという惨敗だった。今年に入ってからはワールドカップ予選でカザフスタンによもやの連敗を喫し、このアジアカップはチームの再建をかける大会として臨んでいる。

ハメド・ハダディはグリズリーズなどでプレーした元NBA選手[写真]=fiba.com


 とはいえ、大黒柱のハダディを含む経験豊富な常連組は健在で、手強い相手であることに変わりはない。37歳で代表に招集されたハダディはアジアカップ参戦8回目の大ベテラン。全盛期は高さを生かした得点やリバウンドだけでなく、アウトサイドに出て3ポイントを放ち、パスを自在に飛ばして味方を生かしてきた。今はそこまでの運動量はないが、それでも存在感は絶大で、この2試合で平均11.5得点、15リバウンド、4.5アシストを記録している。

 また、常連組のなかでもっとも警戒したいのは、司令塔と得点源を兼ねる#8ベフナム・ヤクチャリ(190センチ/27歳)。バハラミの後を継ぐ新リーダーとして自覚が増している選手だ。さらにはリバウンドに強い#14アーセラン・カゼミ(202センチ/32歳)と#7モハメド・ハッサン(203センチ/31歳)、好不調の波はあるが爆発力のある#13モハメド・ジャムシディ(195センチ/30歳)、ポイントガードの#5サジェド・マシャエキ(180センチ/28歳)らは、ここ数年のイランを支えてきたメンバー。マシャエキを除くこれら5選手は東京五輪を経験している戦力だ。

新リーダーとして存在感を高めているベフナム・ヤクチャリ[写真]=fiba.com


 ただ、先に挙げたように、イランの課題は『常連』に続くベンチメンバーの底上げにある。そんななかで今大会は、東京五輪に出場した25歳の#17ナヴィド・レザエイファー(188センチ)の成長が期待されている。

 ハダディは日本戦を前に「日本はスピードがあるチーム。私たちはその速さに適応しなければならない。しかし、私たちも私たちのやり方でゲームを進めていくことを示したい」と語っている。ハダディが言う「私たちのやり方」とはリバウンドの支配力である。日本が走るためには、イランからリバウンドをもぎ取ることが最重要課題となる。

文=小永吉陽子

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