2022.07.22

アジアカップで輝いた河村勇輝&富永啓生…特別な才能を証明した“21歳コンビ”

アジアカップで存在感を放った河村と富永[写真]=Getty Images
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

 FIBAアジアカップ2022に挑んだ日本男子代表チームが、7月21日に行われた準々決勝でオーストラリアに99-85で敗れ、ベスト8の成績で開催地・インドネシアのジャカルタを去ることとなった。

 しかし日本のトム・ホーバスヘッドコーチは、敗れはしたものの若手の活躍と成長が際立った5試合を振り返って「成功した大会だった」と力強い言葉を残した。

 若手のなかでも光を放ったのが、河村勇樹(横浜ビー・コルセアーズ)と富永啓生(NCAA1部・ネブラスカ大学)の“21歳コンビ”だった。

 ともに7月上旬開催のFIBAワールドカップ・アジア予選Window3でA代表デビューを果たし、それぞれ力量を示してはいた。

 だが、若い彼らはいわば水をよく吸う「スポンジ」のようなもの。合宿も含めてそのあとも経験を増した彼らは、今回のアジアカップでは全5試合に出場し、より実力を披露した形となった。

■それぞれがMVP級の活躍で日本をけん引

大会初戦のカザフスタン戦で流れを変える働きを見せた河村[写真]=Getty Images


 河村のハイライトはグループラウンド初戦のカザフスタン戦だった。3点のビハインドと接戦で折り返した後半、172センチのポイントガードは広い視野を生かしたアシストパスと、スピードと体を当てながらのフィジカルなディフェンスで完全に流れを日本に持ってきた。13分の出場時間で8アシスト、2スティールを記録したパフォーマンスは、NBAでプレーする渡邊雄太をして「MVPは彼だった」と言わしめた。

 対して富永は最後のオーストラリア戦で33得点を挙げ、眩いほどに輝いた。この試合、サウスポーは得意の3ポイントを8本沈めたが、うち3本は3ポイントラインからさらに遠くから打つ、いわゆる「ディープスリー」。第4クォーターにはセンターサークル付近からの“ロゴスリー”をねじ込み、公式英語実況に「冗談はやめてくれ!」と絶叫させた。

 5試合を通して、河村は平均11.7分の出場で同4.4得点、4.4アシスト、2.2スティールを、富永は同17.5分、15.2得点、3ポイント成功率41.3パーセントをマークした。両者とも “合格ライン”を超えるパフォーマンスだった。

 河村と富永は5試合ともベンチからの出場となった。2人はU16 、18代表でもともに日の丸を背負った経験があるということもあってか、今大会でも2人が揃ってセカンドユニットとして出てくる場面は多く、河村によるドライブインからキックアウトパスから富永が3ポイントを決めるなど、コンビネーションも良かった。

驚異的なシュートレンジの広さで多くの3ポイントを沈めた富永[写真]=Getty Images


 大会中、河村は富永とのプレーについてこう語っている。

「もうU16、18と下のカテゴリーからずっと一緒に戦ってきた仲間なので、やっぱりバスケットのタイミングだったり、感覚っていうのはすごく合っているところがあると思っています。またこの上のカテゴリーで一緒にやって試合に出場できることはすごくうれしいことですし、彼の良さを少しでも引き出せるような、ポイントガードでありたいなと思っています」

 対して富永は、河村のパスが「予想できないところから急に来たりする」と“相棒”の類まれなアシストセンスについて前置きしつつ、勝手知る仲だけにそういったパスが飛んできても「ここでパスが来るだろうなっていうのがわかるのでやりやすいです」と、2人の間のケミストリーについて話している。

育成年代からともにプレーしていた河村と富永[写真]=fiba.com


 オーストラリア戦の敗戦後、ホーバスHCは「若手の成長がこの大会での我々の収穫のひとつ」と、喜んだ。今大会では井上宗一郎サンロッカーズ渋谷)や吉井裕鷹アルバルク東京)など、河村、富永以外の成長株が力を発揮し、今後の代表に好材料を提供した。

 そのなかでホーバスHCは、富永には「波を小さくすること」、そして河村には「もっと得点に絡むこと」を課題として挙げた。2023年のワールドカップやその翌年のパリオリンピックを見据えた時、河村と富永という特別な才能にはさらに高く、安定したプレーぶりが求められる。

 世界ランク3位のオーストラリアに善戦はしたものの、負けは負けだ。また、ホーバス氏が指揮官となってからの日本の戦績は5勝6敗とまだ負け越している。

 まだまだ日本と世界の強豪との差はあるが、今後、差を積めていく上で河村、富永の成長は必須である。

文=永塚和志

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