2022.09.02

W杯予選を1勝1敗で終えた男子日本代表…2試合を通じて見えた課題や収穫とは

男子日本代表はW杯予選window4を1勝1敗で終えた[写真]=伊藤大允
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、20219ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

 男子日本代表は「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window4の2試合を、1勝1敗という結果で終えた。

 8月26日(現地時間25日)のアウェー・イラン戦では、トム・ホーバスヘッドコーチや帰化選手が不在。11人で戦わざるをえなかった影響もあり、第2クォーター以降相手ディフェンスに対応できず。リズムを取り戻すのに時間がかかり、68-79で敗れた

 同30日に沖縄アリーナで行われたカザフスタン戦では、帰化枠でニック・ファジーカス川崎ブレイブサンダース)を急遽登録。彼を試しつつ、全体としてはディフェンスが機能したことで、相手をわずか48得点に抑え、この予選ではチャイニーズタイペイ以外の相手から初めて勝利をマークした。

 1勝1敗という結果に終わったが、その結果以上に不安定な戦いぶりが解消できていない印象が残った。イランとの試合は出だしは良く、選手たちは躊躇なく打つ3ポイントシュートが決まった。だが、第2クォーターに入るとイランのディフェンスにアジャストされ、わずか5得点と大きく失速。ペースを相手に持っていかれた。

 3ポイントシュートはホーバスHCのオフェンスの肝だが、ただ打てばいいというものではなく、ペイントアタックからのレイアップやキックアウトパスを織り交ぜることを求めている。

 カザフスタン戦の前日練習後、イラン戦についてホーバスHCは「3ポイントシュートは40本打ちましたが、成功率は良くなかった。でも2ポイントシュートは、成功率は58パーセントだったのだから、もうちょっと打ったほうが良かったし、ペイントアタックが足りなかった」と、内外のシュートの割合の偏りがあったと振り返っている。

イラン戦では相手のディフェンスに苦しみ、第2クォーターで急失速した[写真]=fiba.com

勝利したカザフスタン戦は“一長一短”の出来

 カザフスタン戦は、河村勇輝(横浜ビー・コルセア―ズ)らによる激しいディフェンスからトランジションにつなげることで得点を伸ばし、快勝。しかし前半はオフェンスが重く、わずか27得点にとどまった。練習もままならず、ほぼいきなりの出場となったファジーカスとの連係に苦戦したことを差し引いても、あまりに低調だった。

 様々な要素はあるだろうが、リバウンドの弱さと3ポイントシュート成功率の低さが、こうした安定感のなさを誘発しているところがあるのだろう。リバウンド数はイラン戦、カザフスタン戦ともに後塵を拝し、セカンドチャンスから多くの失点を喫した。

 また、3ポイントシュートもイラン戦は27.5パーセント、カザフスタン戦で20パーセントと、指揮官が常々口にする「40パーセントくらい」からは程遠かった。

 富樫勇樹千葉ジェッツ)は14分の3、須田侑太郎名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が8分の2と期待される選手たちの出来が悪かったのが気がかりだ。井上宗一郎サンロッカーズ渋谷)は50パーセントと確率こそと良かったものの、イラン戦では第1クォーターのみの成功。カザフスタン戦では反対に前半では1本も決められていない。経験の少ない井上だが、試合を通してシュートを決められる力がほしい。

 ポジティブな部分もあった。カザフスタン戦ではいまひとつだったとはいえ、馬場雄大が3ポイントシュートを躊躇なく打つことを実践できるようになってきたこと。また、比江島慎宇都宮ブレックス)が独特なステップからのペネトレーションを取り戻したかのようなプレーぶりを見せたこと。河村によるフィジカルでしつこいディフェンスが、日本ディフェンス全体のスイッチを入れることができるのだと、改めて確認できたことなどが挙げられる。

 さらに、 ベテランのビッグマン・永吉佑也(ライジングゼファーフクオカ)が、献身的かつチームを盛り上げるような予想外のハッスルぶりを見せたのも、印象に残った。

河村はカザフスタン戦でチームディフェンスのスイッチを入れる役目を果たした[写真]=伊藤大允

安定しない3ポイントシュート成功率は「経験を積むことで改善」

 来年のワールドカップ本大会で世界の強豪と対峙することを考えれば、一言で現状の日本は「まだまだ」だと言わざるをえない。それでも、着実に歩みを前に進めているのもまた事実だ。

 最も如実に感じられるのが、6月から3カ月間合宿や試合を重ねたことで、選手たちがホーバスHCのシステムを以前よりもより深く理解し、自らの役割を理解するようになっていることだ。

 吉井裕鷹アルバルク東京)と井上という代表で急成長を見せる2人の若きビッグマンが好例だ。吉井は激しいディフェンス、井上はアウトサイドシュートという役割を与えられ、今はそれぞれ迷いなくプレーができるようになっている。ホーバスHCは「吉井はディフェンスでアグレッシブさがあり、井上は吉井ほどではないですが、この2人はいわば互いを補っている」と手応えをつかんでいる。

 上下動のある3ポイントシュート成功率ついては、全体1位の38.4パーセントをマークし、銀メダル獲得の要因の一つとなった東京オリンピックでの女子日本代表が引き合いに出される。だが、当時同チームの指揮官だったホーバスHCに言わせれば、オリンピック前は「女子も銀メダルを獲る前には結構、波があった」といい、「経験を経てそこを改善していった」とのこと。男子も現状はそういう段階にあるのだと示唆している。

 ホーバスHCのバスケットボールがより浸透し、選手たちの役割も定まってきた、そんな実りの多い夏はWindow4を持って終了した。

 同HCは「道が見えてきた」という言葉をWindow4期間中口にしている。ワールドカップ本大会では八村塁(ワシントン・ウィザーズ)や渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)ら「海外組」が加わることも念頭に置き、選手選考もよりシビアに行いながら、本格的な強化が進んでいくだろう。

 文=永塚和志

来年の本大会では渡邊雄太ら海外組が招集される可能性も[写真]=Getty Images

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