2023.02.24

ホーキンソンが万能ぶりを遺憾なく発揮…代表デビュー戦でダブルダブルをマーク

代表デビュー戦で勝利に貢献したホーキンソン [写真]=伊藤大允(
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

約1週間の準備期間でPG陣とのコンビネーションを構築

 男子日本代表(FIBAランキング38位)は2月23日、「FIBAワールドカップ2023 アジア地区予選」Window6でイラン代表(同20位)と対戦し、96−61の快勝を収めた。

 試合前から注目を集めた新加入のジョシュ・ホーキンソン信州ブレイブウォリアーズ)がデビューを果たし、17得点11リバウンド4アシストと期待されていたとおりの万能ぶりを見せ、上出来のデビューを飾った。

 今月、日本の帰化申請の認可が降り日本代表に初招集されたばかりのホーキンソンは、さっそく先発メンバーとして「JAPAN」のユニフォームをまとってコートに立った。「練習と試合では違うものだし第1クォーターは少し緊張していた」と振り返った27歳のオールラウンダーは、しかし、相手をひきつけてのパスやカッティングからの得点で、徐々にリズムをつかんで本領を発揮した。

ティップオフ直後は緊張していたというが、次第に自身のプレーを発揮 [写真]=伊藤大允


「実際にコートに立つと自身の役割というものも少し変わってくるし、序盤は自分自身としても自分のできること以上のことをしようとしすぎていたと思う。だけど一度、試合の流れがわかってきて、チームとしてもリズムがつかめてくると、徐々に調子が出てきたんだ」

 前日の公開練習後、河村勇輝(横浜ビー・コルセア―ズ)がホーキンソンについて「めちゃくちゃやりやすい。Bリーグも含めて、これまでやってきた選手の中でもかなりタイミングも合いますし、パスのすばらしい選手なので、お互いの良さを引き出せる選手」と語っていたが、実際の試合では、その言葉どおりのプレーが出た。

 第3クォーター序盤。河村はピックアンドロールから教科書どおりのパスをホーキンソンに通し、ホーキンソンは豪快にダンクを決める。また同クォーター中盤にはインサイドに切れ込んだ河村からの針の穴を通すようなアシストを受けたホーキンソンがここでも得点している。

「やっぱり、本当にすばらしい選手だと思いましたし、ダイブもポップもできる。そしてミスマッチからのアタックもできる。このトムさんのバスケにすごく合っていると思いました」

 実戦のイラン戦を終えた河村はホーキンソンについて、あらためてそのように答えている。

 河村を含め、富樫勇樹千葉ジェッツ)やテーブス海滋賀レイクス)といいう日本のトップのポイントガード陣とコートを共にしたことについて、ホーキンソンは興奮気味だった。

「我々には3人の本当にすぐれたPGがいて、メンバーチェンジをしても次に入ってきた選手がディフェンスでもオフェンスでもエネルギーをもたらし続けるのだから、本当にすごい。それに彼らのプレーを読む力にも驚かされる。シュートにもいけるし、なんでもできるといったところさ。彼らとピックアンドロールの精度を磨いてきたこの1週間はとても楽しかったよ」

デビュー戦のベストプレーは渡邉へのアシスト

視野の広さを生かしたアシストも披露 [写真]=伊藤大允


 そのホーキンソン自身の視野の広さを、トム・ホーバスヘッドコーチも「彼もすばらしいパサーだよ」と手放しで褒め称えた。これまでイランとの対戦で日本はパスにも優れる元NBAビッグマン、ハメッド・ハダディの存在に手を焼き、後塵を拝してきたところがあった。今回のイランはハダディを足の故障で欠いたが、23日の試合では相手のディフェンダーをひきつけてそこからまわりへパスをさばいたホーキンソンが、「ハダディのような役割を果たした」とホーバスHCは語っている。

「今日、我々は(ホーキンソンを使っての)2メンゲームをかなりやりました。彼が河村からすばらしいパスを受けて得点することもあれば、逆サイドにいる須田(侑太郎、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)や比江島(慎、宇都宮ブレックス)、金近廉(東海大学)といった選手にパスもさばけます。だから今回はイランがこれまで相手にやってきたことを、お返しに我々がやったということなんです」(ホーバスHC)

 代表戦初戦でその力量をファンに知らしめたホーキンソン。自身もダンクを複数決めるなど会場を沸かせるプレーを見せたが、自身のハイライトについて聞かれると、自身の得点シーンではなく第2クォーターの終盤に渡邉飛勇琉球ゴールデンキングス)のダンクをお膳立てしたアシストを挙げた。

「僕と彼が一緒にコートに立つことがあれば、ヒュー(渡邉)がカットインする役割をしたほうがいいねと話し合っていたんだ。で、あの場面、僕らはローポストでミスマッチを作り出して、僕にダブルチームが来たところで、ヒューがベースラインからカッティングをしてきたので、(僕のパスから)彼のダンクにつなげられた。あのプレーで会場にエネルギーを湧き起こすことができたと思うし、ファンも喜んでくれていた。僕としても雷のようなダンクを彼が決めてくれて、興奮したよ」

 日本に限らず、多くの国で有能な帰化選手がいるかどうかが世界大会での成否を分けるといっても過言ではない。これまで幾人もの帰化選手が「JAPAN」のユニフォームに袖を通しチームに貢献してきたが、特別な万能さを持つホーキンソンがこれから代表活動を重ねるなかでここからどれだけチームへフィットしていくか、興味深い。

取材・文=永塚和志

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