2023.03.01

“ホーバスジャパン”の常連になった吉井裕鷹、地位確立へ日々成長を誓う「1日も無駄にできない」

2022年7月のデビュー後から日本代表に欠かせない存在となっている吉井 [写真]=野口岳彦
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 2月26日に高崎アリーナで「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window6が行われ、男子日本代表(FIBAランキング38位)がバーレーン代表(同84位)を相手に95-72で勝利。2021年11月に幕を開けたアジア予選を7勝5敗と勝ち越して終えた。

 トム・ホーバスヘッドコーチ体制移行後に迎えたアジア予選の全12試合で、西田優大シーホース三河)がチーム最多10試合に出場。富樫勇樹千葉ジェッツ)が9試合で続き、エヴァンスルークファイティングイーグルス名古屋)、井上宗一郎サンロッカーズ渋谷)、吉井裕鷹アルバルク東京)、須田侑太郎名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)の4人が8試合で並んだ。

“ホーバスジャパン”発足当時からメンバーに名を連ねてきた西田、富樫、エヴァンスに対し、井上、吉井、須田の3人は合宿などでアピールに成功して指揮官の信頼を獲得。23日のイラン代表(同20位)で井上は7得点6リバウンド、バーレーン代表では須田が6本の3ポイントシュートを含む20得点、吉井が13得点の活躍を見せた。

「その(オフェンスが良かった)分、ディフェンスが集中できなかった。やろうとしていたことを遂行できなかった部分もあったので、両方できるようにしていきたいと思います。相手のインサイドをカバーするために、もっと早く準備することが足りなかったです。もっと止められたと思いますし、もっと効率的に守れたと思います」

 4つのファウルを宣告されたバーレーン戦でのプレーをこう振り返った吉井は、Bリーグ2021-22シーズン終了後に行われた2022年7月のWindow3で日本代表デビュー。196センチ94キロの恵まれた体格を誇り、河村勇輝横浜ビー・コルセアーズ)や井上とともに若手有望株として一気に台頭した。

ダンクを披露するなど身体能力の高さも見せつけた [写真]=野口岳彦

 しかし、所属チームに戻ると一変。強力な外国籍選手を含めてタレントをそろえる所属チームではプレータイムが限られ、ケガ人が増えた1月、2月こそ2ケタのプレータイムを得たが、ベンチ入りしてもコートに立てないことがあった。それは井上にとっても同じことだったが、吉井は常に自身の実力不足を嘆いてきた。

「本当に悔しいです。僕が生活できているのはクラブのおかげですし、クラブに還元したいと心から思っています。試合に出られない時期でも、試合に出られるためにどういうふうにプレーしたらいいのかを毎日考え続けていました。少しずつ出られるようになってきましたけど、僕のところが穴になっていることもあると自覚しています」

 A東京のデイニアス・アドマイティスHCが求めるヨーロッパスタイルのバスケットに「レベルが高い」と感じているものの、「HCが求めるのはもっと高い位置。そことの実力の乖離があって。自分自身がレベルアップしていくしかないです」と続けた。

 それでも、ホーバスHCに招集されれば、日本代表のスタイルに適応。Windowを重ねるごとに「トムさんのやりたいバスケが明確になってきて、それを選手たちが理解してきました」と手応えを口にし、アジア予選を終えて「チームの土台が完成してきたと思います。例えば、ファイブアウトや走るバスケット。思いきってシュートを打つために、どういう動きをするのか。それが土台の部分だと思います」と話した。

 バーレーン戦では「周りのシュート力を信じ、パスを出せて良かった」と明かしたように、出場した予選8試合で最も多い3本のアシストを記録。ドライブでインサイドに切り込み、アウトサイドで待つジョシュ・ホーキンソン信州ブレイブウォリアーズ)や井上の3ポイントをお膳立てした。オールラウンドな一面を垣間見せたなか、「もっとシュート力をつけて、もっと俊敏に動く。そして力強くプレーできたらと思います」と課題を口にした。

 23日の日本代表デビュー戦で6本の3ポイントを含む20得点を挙げた金近廉(東海大学)をはじめ、ロスター入りこそ叶わなかったものの、市川真人(白鷗大学)、小川敦也(筑波大学/宇都宮ブレックス)、川島悠翔(福岡大学附属大濠高校)もディベロップメントキャンプからの“昇格メンバー”。吉井は自身より年下の若手が台頭しており、「いい選手を探しているだけで年齢は関係ない。できるかどうか」(ホーバスHC)の現状に「どんどんと下(の世代)から押し上げてきています」と感じており、「現状の選手たちがレベルアップしていくと、遅れを取る可能性もあります。遅れを取らないように気を引き締めて、頑張っていきたいと思います」と危機感を募らせた。

 A東京と日本代表では求められることが異なる。指揮官は吉井へ「(彼は)きれいな3ポイントシュートを打てるように練習したほうがいい。所属チームと代表では役割が違うかもしれないけど、練習の前後で代表の仕事をできるようにトレーニングしてほしい」と注文した。

「成長」の2文字を何度も口にした吉井は、約半年後の本大会を見据えて決意を語った。

「一朝一夕ではなく、毎日、毎日続けていくことが必要。もっと自信を持って、シュートを打っていいと思います。1日1日を無駄にするともったいないし、もう1日も無駄にできない。口に出して、自分に言い聞かせて日々成長していきたいです」

所属するA東京に戻り、さらなる成長を期す [写真]=野口岳彦

文=酒井伸

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