2023.05.04

【ワールドカップ対戦国情報】日本の前に立ちはだかる世界の強国たち

日本が属するグループEにはドイツ、フィンランド、オーストラリアが入った [写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

1次ラウンドは厳しいグループに

 4月29日にFIBAワールドカップの抽選が行われ、日本は8月25日にドイツ、27日にフィンランド、29日にオーストラリアと対戦することになった。対戦国の情報を踏まえ、現時点での展望を探っていきたい。

4月29日、フィリピンのマニラで抽選会が行われた [写真]=fiba.com


 組み合わせ決定を受けた会見で男子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチは「うちのグループはいいチームばかり集まっている。やるしかない。準備をしていいバスケットを見せたい」と展望を語った。東京2020オリンピックで銅メダルのオーストラリア、昨夏のユーロバスケット(ヨーロッパ選手権)3位のドイツ、2022-23シーズンのNBAでMIP(最優秀躍進選手賞)を受賞したラウル・マルッカネン(ユタ・ジャズ)を擁して成長著しいフィンランドと同組になったのだから、確かに厳しいグループに入ったと言える。

 大会の目標についてホーバスHCは「アジア1位になってパリオリンピックの切符が欲しい」と語る。ワールドカップでアジア最高順位になればオリンピックのチケットが手に入るだけに、これは一貫して掲げている目標だ。そのためには「2、3勝が必要」とホーバスHCは青写真を描く。前回のワールドカップではイランと中国が2勝して、得失点差で上回ったイランが東京オリンピックに出場した。それだけに最低2勝が目標達成ラインと言えるだろう。

開催国シードはフィリピンのみ

 1次ラウンドで対戦するグループEのチームを紹介する前に、組み合わせ抽選について言及したい。

 ワールドカップの組み合わせはFIBAランキング順にポット分けをして抽選をするが、日本がランキング通りにポット7に入ったのに対し、フィリピンは『開催国シード』であるポット1に振り分けられた。その結果、フィリピンのほうがランキング上位国との対戦を避けられたのは事実だ。共催大会でありながら、フィリピンだけがポット1に入った理由についてFIBAは「決勝トーナメント開催地であるため」と示している。

 これを受けてホーバスHCは、「しょうがないことだけど、ランキングはフィリピンのほうが低い(日本36位、フィリピン40位)。フラストレーションはある」と正直な気持ちを吐露。それでも「勝つしかない。そのための準備をする」と受け入れて対戦国のスカウティングに入っていると前を向いた。

オーストラリア、ドイツ、フィンランドの実力は?

■オーストラリア(FIBAランキング:3位/出場回数:13回)

オーストラリアをけん引するミルズ [写真]=fiba.com


 愛称は「BOOMERS」(ブーマーズ)。粘り強いディフェンスを主体に厚い選手層を誇るタフなチームだ。2019年大会は準決勝でスペインに再延長で屈し、フランスとの3位決定戦に敗れて4位。それでも東京2020オリンピックでは、ブライアン・ゴージャンHCのもと悲願の銅メダルを獲得した。ワールドカップ予選では、敵地に乗り込まずに棄権したWindow5のイラン戦では不戦敗となり、中国との1戦目は競った場面もあったが、それ以外は危なげない戦いぶりを展開した。

 アジア予選では、8試合に出場してキャプテンを務めたニック・ケイ島根スサノオマジック)を筆頭に、国内外で活躍する選手を軸にしながら、今季NBA入りしたジャック・ホワイト(デンバー・ナゲッツ)や、強豪デューク大学でプレーするタイリース・プロクターらの若手を、アジアカップを含めて次々に試していった。そのうえで、オフシーズンにはマシュー・デラベドバやソン・メイカーらNBA経験者を招集。チームの底上げを図りながら、継続性を重視するチーム作りを行ってきた。

 東京2020オリンピック銅メダルの原動力となったパティ・ミルズ(ブルックリン・ネッツ)をはじめ、ジョー・イングルス(ミルウォーキー・バックス)、マティース・サイブル(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、ジョック・ランデール(フェニックス・サンズ)、ジョシュ・ギディー(オクラホマ・サンダー)らNBA選手がどれだけ参戦するかがカギを握る。ホーバスHCが「オーストラリアのロスターは深い(選手層が厚い)」と印象を語ったように、経験あるベテランから有望な若手まで、選手層の厚さが最大の武器となるだろう。

■ドイツ(FIBAランキング:11位/出場回数:7回目)

ドイツのエースは八村のチームメートでもあるシュルーダー [写真]=fiba.com


 ヨーロッパ予選では同組のフィンランドとスロベニアを上回って10勝2敗でグループを首位通過。また昨夏のユーロバスケットでは銅メダルを獲得。ここ数年、安定した力を発揮している原動力になっているのが、ロサンゼルス・レイカーズで八村塁とチームメートであるポイントガードのデニス・シュルーダーと、オーランド・マジックでプレーするワグナー兄弟の弟で、エースに成長中のフランツ・ワグナーの躍進だ。また、ヨーロッパで活躍中のセンター、ヨハネス・ボイトマンも万能なプレーでチームを支えている。

 Window4では、ルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)やドラギッチ兄弟率いるスロベニアに対して90-71で完勝。3ポイントを41本も試投(成功は13本、31.7パーセント)するスタイルを披露した。また昨夏のユーロバスケットではシュルーダーとフランツに加え、インディアナ・ペサーズでプレーするダニエル・タイスも出場して銅メダルに貢献している。この他、ワグナー兄弟の兄モリッツ(オーランド・マジック)、マキシ・クレーバー(ダラス)、アイザイア・ハーテンシュタイン(ニューヨーク・ニックス)らNBA選手が加わると高さでも脅威となる。

■フィンランド(FIBAランキング:24位/出場回数:2回目)

NBAでも注目を集めるフィンランドのマルッカネン [写真]=fiba.com


 フィンランドはヨーロッパの中で最初に出場権を獲得した国だ。2次ラウンドではドイツとスロベニアと同グループでありながらも、Window4終了時にグループ3位内を確定させてチケットをつかんだ。最終的にはドイツに次ぐ2位で予選を勝ち抜き、2014年以来となる2回目の出場を決めた。

 2014年大会は、当時採用されていたワイルドカードでの出場。ウクライナに競り勝ってワールドカップ初勝利をあげたときには、代表の愛称である「WOLF PACK(ウルフパック)」の名がアリーナに響き渡る熱狂ぶりを見せて話題になった。

 フィンランドのエースはシュートレンジの広さと走力を持つセブンフッター、ラウリ・マルッカネン。今季、MIP受賞の躍進につながる自信をつけたのは、7位に浮上した昨夏のユーロバスケットでの活躍だ。ラウンド16のクロアチア戦では43得点をあげてチームをベスト8に導き、大会を通しては平均27.9得点8.1リバウンドの活躍で、ヤニス・アデトクンボ(ギリシャ/バックス)に次ぐ得点2位にランクイン。自国のみならず、ヨーロッパでのスターの座を確立した。現在は兵役に就いたばかりだが、ワールドカップに出場するとの報道もあるだけに動向が注目される。

 また、スペインリーグで活躍中のシューター、サス・サリンが代表チームを支え、ビッグマンのミカエル・ヤントゥネン、万能ウイングのエリアス・バルトネンら若手が台頭。彼ら3選手は予選全12試合に出場しており、マルカネンだけではない強さを見せている。

アジア1位を勝ち取る戦い

 オリンピックの出場権を勝ち取るには、1次ラウンド以降の戦いも重要だ。日本は2次ラウンドに進出しても、順位決定に回ったとしても、グループFと対戦することになる。グループFは実力的にスロベニアが抜けており、残るはベネズエラ(FIBAランキング17位)、ジョージア(同32位)、カーボベルテ(同64位)で、そのうちジョージアとカーボベルテは初出場であることから狙いやすい相手だ。グループFとの対戦を含めて勝利を目指したい。

文=小永吉陽子

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