2017.11.27

大東文化大が「不安な時期」を乗り越えインカレ初優勝、タレントぞろいの筑波大を撃破

筑波大とのインカレ決勝を制した大東文化大 [写真]=青木美帆
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 1996年から1999年の日本体育大学に次いで史上2校目となる大会4連覇を目指す筑波大学と、2003年以来の決勝進出を果たし、初優勝を狙う大東文化大学。対照的な2チームの顔合わせとなった第69回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)男子決勝は、大東文化大が87-68で筑波大を破り、初々しく全国制覇を達成した。

 序盤に流れをつかんだのは、大学界屈指の長身バックコート陣をそろえる筑波大。青木保憲(4年/181センチ)、牧隼利(2年/188センチ)、増田啓介(2年/191センチ)に対し、大東文化大は熊谷航(3年/172センチ)、奥住将人(3年/172センチ)、葛原大智(4年/187センチ)といずれもミスマッチ。牧や増田が積極的にポストプレーを仕掛けることで、葛原、奥住、ビリシベ実会(3年)らを早々にファウルトラブルに陥れた。

[写真]=青木美帆

 しかし、大東文化大はひるまない。試合前に全員で確認しあったという「接戦になるし、相手の時間も必ず来る。だけど絶対に我慢して、持ち味のディフェンスやリバウンドを40分間徹底しよう」という言葉のとおり、大東文化大の選手たちは我慢し、オフェンスリバウンドを奪い、ビリシベのバックアップで出場した山岸優希(4年)の奮闘でつなぎ、第1クォーターに奪った1点のリードを4点に広げた。

 筑波大の吉田健司コーチは、ハーフタイムに「ディフェンスリバウンドを取らないと勝てない」と発破をかけて選手たちを送りだした。大東文化大のオフェンスリバウンドを抑えるために使ったゾーンもまずまず機能し、山口颯斗(1年)が思いきりのいいリバウンドで期待どおりの活躍を見せた。第3クォーター終了間際には杉浦の連続3ポイントも炸裂し、この試合、初めてクォーターごとのスコアで大東文化大を上回った。

 しかし、筑波大にとっては、ディフェンスが機能したこの第3クォーターで、相手を突き放せなかったことに悔いが残る結果となった。第4クォーターの入りで大東文化大に立て続けにオフェンスリバウンドを奪われて動揺が走ったさ中、大東文化大が切ったカードでさらに混乱が強まった。

 大東文化大の西尾吉弘コーチはこう話している。

「今年のうちのチームは、先に何かを仕掛けたほうが試合のイニシアチブが取れてうまくいく傾向にありました。なので、インカレ用にゾーンを用意していて、今日の試合の前もどこかで使うと選手たちに話していたんです」

 第4クォーター残り8分、大黒柱のモッチ・ラミン(1年)が3ファウルとなり、毕光昊(4年)を出したところから、大東文化大はこのゾーンを展開した。西尾コーチは「すごく簡単なもの」と説明したが、結果的に筑波大の足が止まる。攻撃回数が極端に落ち、アウトサイドのシュートも思うように決まっていかない。西尾コーチは「相手のアウトサイドシュートが入ったら嫌だなと思ったけれど、そもそも攻撃回数がすごく少なかったから落ちてくれれば問題ないと理解して、選手たちにはとにかくリバウンドとルーズボールを徹底するように言い続けました」と振り返る。

30得点16リバウンドを挙げて勝利に貢献したモッチ・ラミン [写真]=青木美帆

 アウトサイド主体のオフェンスは、吉田コーチの意図するところではなかった。むしろ、杉浦佑成(4年)をセンターにしてマッチアップするモッチをアウトサイドに出し、ミスマッチとなる増田のインサイドで攻めたかった。西尾コーチも「杉浦が5番になってスモールラインナップになった時が嫌だった」とコメントしていたが、このプレーを徹底できないまま増田がファウルトラブルとなり、同4分でファウルアウト。筑波大の大きな突破口が潰れ、以降は単発の3ポイントシュートがむなしくリングを弾むばかりとなった。

 特別指定選手制度でBリーグのサンロッカーズ渋谷に昨季在籍し、U24日本代表の一員としてユニバーシアード競技大会を戦った杉浦を筆頭に、世代別代表としてアジアや世界と戦ってきた選手がズラリとそろう筑波大。一方の大東文化大には世代別代表選手は一人もおらず、これまで全国大会の決勝を経験したことがあるのは葛原のみ。さらに言えば、昨年まで関東大学バスケットボールリーグ戦2部に所属していたことを考えれば、今回の勝利は壮大な逆転ドラマとも言える。普段は寡黙な葛原や熊谷も、試合後には思わず勝利の雄たけびを上げていた。

モッチ・ラミンとマッチアップする時間帯もあった杉浦 [写真]=青木美帆

 自己表現ができなかった高校時代を経て、少しずつリーダーシップや感情を発露することを覚えた。今年1年、キャプテンとしてチームをまとめてきた葛原は、大学4年間をこう振り返る。

「ずっと2部で、インカレにも出られない時期もありました。4年になってキャプテンになって、リーグも序盤は連敗が続いてどうしたらいいのかと不安な時期もあったけど、同期やチームメート、監督の支えでここまで来られましたし、自分も最後は気持ちを出せました。その結果が優勝に結びついたのかなと思います」

大東文化大がインカレのタイトルを獲得 [写真]=青木美帆

 筑波大の青木、杉浦は福岡大学附属大濠高校の同級生でもある。

「高校の同級生と最後決勝で戦えたことはとてもうれしかったです。自分たちが1部に上がってから『最後は決勝でやろうね』と約束していたので、最後、漫画みたいに決勝で会えたというのも運命かなと思います。その上で自分が彼らの4連覇を阻止して勝てたことが本当にうれしいです」(葛原)

 大学1年生の時、別媒体の仕事で葛原に、大学生活における目標を聞いたことがある。側に居合わせた青木や杉浦らに茶化されながらスケッチブックに書いた言葉は「打倒筑波」。4年越しの思いが結実した。

文=青木美帆

■第69回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)男子決勝
筑 波 大|19|19|19|11|=68
大東文化大|20|22|18|27|=87

BASKETBALLKING VIDEO