2022.03.21

アメリカの大学のようなスポーツイベントで魅せろ!『TSUKUBA LIVE!』日本版NCAAへの挑戦

「TSUKUBA LIVE!」を企画した筑波大学の皆さん [写真提供]=筑波大学アステチックデパートメント
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

茨城対SR渋谷終了後に開催

それぞれがアメリカでの経験からイベントを企画 [写真提供]=筑波大学アステチックデパートメント


 卒業、入学に転勤や転職など様々な転機が訪れる春。習い事や趣味など新たな挑戦をスタートすることも多いこの季節だが、スポーツ界においても新たな試みが注目を集めている。筑波大学の学生たちが『TSUKUBA LIVE』と題し、つくばカピオ(茨城県つくば市)にて開催されるB1公式戦茨城ロボッツサンロッカーズ渋谷終了後に、同会場で筑波大学対青山学院大学の男子バスケットボールチームによるスペシャルマッチを自ら企画、運営するという。

 高校生年代を中心に学生の試合がプロの前座で行われることは、ここ数年で事例として見かけることは多くなったが、学生自らが自分たちの興行を手掛ける例は極めて少ない。同イベントのマーケティングを担当する筑波大学人間総合科学学術院スポーツ国際開発学共同専攻1年の酒井健吉さんは、「スポーツを好きな人だけではなく、それまでスポーツに興味がなかった方でも、一つのエンタメとして楽しんでいただけるような興行を、学生中心で運営することにより大学スポーツの価値を最大化し、筑波大学での成功が、ロールモデルとして各大学に広がっていけば、大学スポーツの価値は確実に変わります」と鼻息も荒い。この新たな学生たちの取り組みについて、実際にイベントの運営に携わる関係者、学生の皆さんから話を聞いた。

 まずは、この『TSUKUBA LIVE!』の開催に至った経緯について、筑波大学アスレチックデパートメントにてスポーツアドミニストレーターを務める米原博章さんが説明してくれた。最初に、まだまだ世間一般では耳馴染のない米原さんの所属と肩書についてご説明すると、筑波大学アスレチックデパートメントは、アスレチック(=競技スポーツの)デパートメント(=部局)の意味で、アメリカの大学スポーツ局の研究を経て、2018年に筑波大学で設立され、「最高の学校スポーツプログラムを創り、日本社会の未来に貢献する」というビジョンを掲げ精力的な活動を行っている学内組織である。この組織の中心として活躍する“スポーツアドミニストレイター”とは、スポーツの活性化に取り組む大学において、大学のスポーツ部局での企画立案、コーディネート、資金調達などを担う人材のことで、学生と大学、スポーツ部局をつなぐハブ的な存在だ。この筑波大学アスレチックデパートメント内で、「大学の事業の一つとして、大学の独自財源として、オリジナリティがあり、大学にとって大きな資産でもあるスポーツを活用できないかという議論の中で、NCAAのようなホームゲームの作ってみよう」という話が持ち上がったのが最初のきっかけだと米原さんは語る。

 米原さんは筑波大学大学院時代には、アメリカ・ライス大学(テキサス州)に留学し、選手として活動をしながら、陸上競技部のアシスタントコーチを勤めた経験があり、その充実した生活の中で、スポーツがある大学にはもっと価値があるはずだとの気づきを得たと言う。米原さんは「大学スポーツは、学生が自身の大学に対して、ロイヤリティを育むだけではなく、大学が設置された地域の方々も頻繁に応援に駆け付けますし、いわば、大学と地域の交流の窓口です。スポーツにより活性化された大学の雰囲気、スポーツを中心に大学が回っている感覚が、そこにはありました」と熱を帯びた口調で語る。

 米原さんを中心としたアスレチックデパートメントが旗を振ったことで、学生が主体となってホームゲームを運営する流れが出来た。この動きに参加した学生はどのような想いがあったのか、理工学群理工学群応用理工学類2年でバスケットボール部員でもある杉本章さんに問うと、「以前から、リーグ戦が行われていましたし、昨年はコロナ禍の影響で中止となりましたが、ホームゲームの運営は行っていました」と述べると、続けて「ただし、所謂スポーツ興行のような本格的な主催試合は初めての試みで、アメリカの大学バスケットボールナンバーワンを決める、NCAA1部所属のプレイオフトーナメント“マーチ・マッドネス”のような熱狂を自分たちで作りだしてみたいという思いが強く芽生えました」と企画への参加を決断した当時の想いを振り返る。

本場アメリカからの留学生も参画

 同じく本企画に参加するアメリカ合衆国からの留学生で、グローバル教育院(学士課程)地球規模課題学位プログラム3年の青山翔龍さんは「私は元々、フェラデルフィア育ちで、本場の雰囲気を知る人にも参加してほしいと、アスレチックデパートメントの皆さんにお願いされて参加しました」と仲間を見渡すと、笑顔を浮かべ「自分が知っているNCAAのような熱狂を、日本の大学で運営の内部に入って実現したいと思いました。アメリカとは観客の層もかなり違いますし、考え方も文化も異なるので大変だとは思います」と、留学先でのチャレンジが動機の一つであったこと口にする。

 本番に向けて準備が着々進んでいる中ではあるが、『TSUKUBA LIVE!』の魅力は何かと質問すると、杉本さんは「今回のイベントコンセプトは“融合”。以前のホームゲームはバスケを楽しむことだけでした。バスケと筑波大学の学生たちによるさまざまなパフォーマンスや表彰も盛り込んだエンタメの融合が面白いと思います」と答えると、続けて「バスケを見に来た方には、ダンスなどのパフォーマンスも楽しんでいただけますし、エンタメ要素を期待して来場された方には、バスケの魅力もお届けしたいと考えています」と企画に自信をのぞかせる。

 米原さんは、「ホームゲームであるということが魅力でしょうか。お客さん自身がスポーツを通じて筑波大学を感じていただけるようなイベントになると思います。筑波大学は2023年で50周年になります。次の50年の日本の大学のスタンダードを見せたいですし、学生と地域が元気になる可能性を感じていただけると嬉しいですね」と述べた。

 イベント本番ではMCを務める青山さんは「アスレチックデパートメントに集った仲間たちと、このようにイベントの企画や運営を一緒に手掛けることは本当に面白いですよ。」と語ると続けて、「それぞれのメンバーの協力により、その力が掛け算から二乗に広がっていくような感覚があります。きっとイベント本番では大きな力になっていると思いますね」と力強い言葉で締めた。

 スポーツがあったから大学生活が幸せになる。学生と地域が結びつき社会が活性化する。そんなきっかけとして語り草になるようなイベントを手掛けていきたいと語る学生たちの熱量が、日本の大学スポーツを大きく変える存在となるか。

『TSUKUBA LIVE!』は、2022年3月26日(土)、学生たちに貴重な機会を提供した茨城ロボッツと同クラブと対戦するサンロッカーズ渋谷の試合を“前座”とし、17時30分に開演予定(試合は18時30分ティップオフ)。ぜひ、この機会に学生たちの熱意と努力の結晶を見届けよう。

3月26日の開催に向けて準備を進めてきた [写真提供]=筑波大学アステチックデパートメント

【イベント特設サイト】
https://tsukubalive.studio.site/
文=村上成

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