2019.09.27

【Wリーグ開幕特集/昨季4強の指揮官に聞く今季展望】JX-ENEOS・梅嵜英毅ヘッドコーチ

13年ぶりにWリーグで指揮を執ることになった梅嵜英毅HC[写真]=新井賢一
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「やるからには完全優勝という気持ちを持って臨む」

 第21回のWリーグが10月4日より開幕する。昨シーズン、前人未到の11連覇を達成したJX-ENEOSサンフラワーズが連覇を“12”に伸ばすのか、はたまたJX-ENEOSを止めるチームがでるのか、興味は尽きない。

 今回は昨季の4強、JX-ENEOS、三菱電機コアラーズ、トヨタ自動車アンテロープス、デンソーアイリスのヘッドコーチにシーズンに向けての話を聞いた。

大きくスタイルを変えることはなく、これまでのものを継承

――今シーズンよりJX-ENEOSサンフラワーズを指揮することになりました。この話を受けた時はどのような思いがあったのでしょうか。
梅嵜 (約13年指導した)山梨学院大学では、選手を集めるところから始まり、それが今は選手に来てもらえるようになってきていたので、最初は迷いました。ただ、私自身の頭の中には「もう一度Wリーグで」という思いがあり、これを逃したらもうチャンスはないかなとも思いました(日立ハイテクノロジーズなどのヘッドコーチを歴任)。家族とも相談をし、やっぱり自分の気持ちに嘘はつけないなと思い、頑張らせてもらうことになりました。

 長くバスケットの指導をしてきて、オリンピックもコーチとして2度行かせてもらいました(2004、2016年)。その中で自分の得てきたもの、考えていることをJX-ENEOSで取り入れていくことで少しでも日本のバスケットに貢献できればいいなという思いもあります。

――名門チームのヘッドコーチを引き受けるには覚悟もあったのではないでしょうか。
梅嵜 それはもう本当に覚悟がなかったら、生半可な気持ちだったら受けられない話です。負けていないチームですから、歴代のコーチたちが作ってきたものをしっかりと継承しながら、私が来たことでプラスにできるようにしていかないと。周りはどこのチームも強くなっていると思うので、そういう意味では中途半端な気持ちではなく、やるからには完全優勝という気持ちを持って臨むつもりです。

――プレッシャーも感じていますか?
梅嵜 毎日プレッシャーは感じています。でも、コーチ陣に助けてもらったり、(昨シーズンまでヘッドコーチだった)佐藤清美監督にアドバイスを求めたりしながらやっています。(年間のプランの中で)分からないこともまだたくさんあるし、チームのルールも完全に覚えてはいないので、そういったことは聞かないより聞いていった方がいいかなと。聞きながら確認している状況です。練習でもメニューによっては佐久本智コーチや木林稚栄アシスタントコーチの方が分かっていることもあります。伝統を継承しつつ自分のやりたいことを少しずつ取り入れてプラスαにしていきたいなと考えています。

――スタイルを大きく変えることはないわけですね。
梅嵜 はい。やはり勝ち続けているチームのスタイルを大きく変える事は冒険になるので、さっきも言ったようにプラスαを加えることで強固にする考えの方が強いですね。土台は変わらずとしても、ちょっとしたものをプラスαしていけばもっと良くなるのではないかと思っています。

伝統を継承しながら新しいものもプラスしていく[写真]=新井賢一

「JX-ENEOSは練習から一つのことに手を抜かない」

――実際にチームに入ってのJX-ENEOSの印象を教えてください。
梅嵜 練習に対しての取り組み方というのは、必死さを感じますね。日本代表組がいても、いなくても、一つのことに手を抜かない。だから今年の新人たちは面食らっているだろうなと思いますよ。「こんなに必死になるの⁉」って。でも、練習から必死だからこそ、強いんだと感じます。新人たちには、そういったことを早く気づかせてあげられるように。そうすればもっとすごい選手になるし、チームの選手層も厚くなりますから。新人にとってはJX-ENEOSのバスケットを一から覚えるというのは非常に大変なこと。私も同級生(笑)。一緒に勉強しています。

――山梨学院大学での指導でJX-ENEOSに還元できることはありますか?
梅嵜 数多くオフェンススタイルがある中で、プラスになるなと思うものは採用しています。7月のサマーキャンプや練習試合などから、多少なりともいい方向に向かっているとは感じています。

――選手登録締め切り直前に吉田亜沙美の現役続行が決まりました。
梅嵜 それはもうビックリでした。彼女のことは10代の頃から知っているし、まだ続けてほしいなという思いがあった中、引退すると言われて。残念でしたが5月からは彼女がいない中でチームを作ってきました。若手ガード陣も私がチームを引っ張るんだ、という覚悟を持って取り組んでくれているように感じます。

――梅嵜ヘッドコーチは日本代表などで一緒に戦ってきており、彼女の成長も見てきた指導者の一人ですよね。
梅嵜 吉田は、人間として選手としてどんどん成長していきました。本当に見ていて楽しい選手ですよね。流れを変えることができるし、一つのプレーで観客を沸かせることもできる。チームメイトもそれでギアが入る。やっぱりすごい選手だと思います。でも、私がアンダーカテゴリーで見ていた時代は、点も取れた。Wリーグの時はあまり点を取らない印象なので、今シーズンはどんどん取りに行ってほしいと思っています。
 今回、チームに戻ってきてくれたことで、こちらはよりプレッシャーを感じています。絶対負けられないですから(笑)

――旧知の中ですから、コミュニケーションでも問題はなさそうですね。
梅嵜 彼女も私のことは分かっていると思うし、私も彼女のことは分かっているつもりです。それに彼女のプレー面での対応はずば抜けているので、心配ないですね。

――JX-ENEOSは日本代表の選手が多く、合流も開幕直前です。
梅嵜 そうですね。だから今シーズンは少し早めに5対5の練習を始めました。(代表活動の合間で)代表組がチームにいる間にある程度の土台作りをしたかったからです。女子アジアカップから戻ってきての練習は約2回。エース級の選手がいない中、日本にいる選手たちで戦える状況を作っておきたいと考えています。

――開幕が迫っていますが、今の心境は。
梅嵜 楽しみでしょうがないです。13、14年ぶりにこの世界に戻ってきたので、本当に楽しみです。

――緊張はされないですか?
梅嵜 多少はするかもしれないけど、楽しみとワクワク感が強いですね。プレイするのは選手なのでこちらは失敗のないような指示を出したいと思っています。選手個々の力はありますので、あとは日本代表組がケガや病気のないように帰って来てもらいたい。もちろん女子アジアカップで結果を残して自身を付けて帰国してもらいたいです。

――最後にファンの方に向けてメッセージをお願いします。
梅嵜 長年に渡って歴代のヘッドコーチが築き上げたものがあるので、そこを汚すことなく、そこに自分らしさをプラスして強いバスケットをしていきたいです。勝つということは難しいことですが、負けないチームを作り上げていきたいです。

スピードを生かしたスタイルで12連覇を目指すJX-ENEOS [写真]=新井賢一

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