2019.10.03

【Wリーグ開幕特集/昨季4強の指揮官に聞く今季展望】デンソー/ヴラディミール・ヴクサノヴィッチヘッドコーチ

デンソーの新指揮官となったヴラディミール・ヴクサノヴィッチヘッドコーチ[写真]=WJBL
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「どんな相手にもハイレベルの試合ができるように」

 第21回のWリーグが10月4日より開幕する。昨シーズン、前人未到の11連覇を達成したJX-ENEOSサンフラワーズが連覇を“12”に伸ばすのか、はたまたJX-ENEOSを止めるチームがでるのか、興味は尽きない。

 今回は昨季の4強、JX-ENEOS、三菱電機コアラーズ、トヨタ自動車アンテロープス、デンソーアイリスのヘッドコーチにシーズンに向けての話を聞いた。

「日本は常にハイペースでレベルを落とさずプレーする」

――今回、日本のチームであるデンソーで指揮を執ることにした理由を教えてください。
ヴクサノヴィッチ 新しい人生経験として訪れたことのない国でバスケットに携わりたかったのが一つ。それと日本代表のプレースタイルが好きということの2つが理由に挙げられます。もちろん、デンソーの方々と直接話をした時に、将来的なプランに向けてしっかりと取り組んでいると感じたことも決め手となりました。

――日本のバスケットに対する印象は?
ヴクサノヴィッチ スピードのあるプレイヤーと良いシューターがそろっている。そして常にハイペースでレベルを落とさずにプレーしていることに驚きますね。

――デンソーのイメージは?
ヴクサノヴィッチ まずチームとして整った環境を提供されています。それは練習をするにあたって本当に重要なことです。今は日本代表で主力の2名が不在ですが、他の選手も一生懸命、毎日練習をしている。そこがすごく印象的です。今までプレータイムが少なかった選手に関しても、この短期間ですごく成長していますから、日本代表選手の合流や怪我人の復帰などを含め、今後上手くチームとして作っていくことができると思います。

――デンソーというチームにどういったことをプラスしていきたいですか?
ヴクサノヴィッチ 私自身、来日する前からデンソーの過去の成績やヘッドコーチなどについて調べ、把握しています。デンソーはここ10年くらい髙田真希がチームを支えていた状態だと思います。私は、髙田以外、試合にあまり出ていなかった選手もゲームで活躍できるように変えていきたいです。

日本のWリーグは全体的に身長が高くないので、デンソーが高さで不利になることは少ないです。チームの強みとしては、ゴール下で活躍する選手がいるということ。それは相手のどのチームも分かっていることだとは思います。その中でガード陣がどれだけ自信を持ってオフェンスでもディフェンスでインサイドの選手たちの助けになれるか。チームにはまだ若手ではありますが、もう少し責任を持たせてプレーできる選手、成長できる選手が多くいるので、そうした選手の底上げを図っていきたいです。

日本のプレースタイルが好きだというヴクサノヴィッチHC[写真]=WJBL

「スピードあるバスケットを見せたいです」

――少しご自身のお話を聞かせて下さい。セルビアの出身で元プレーヤーだったと伺いました。
ヴクサノヴィッチ セルビアだとプロの道を行く選手は若いうちから寮に入るので、私も15歳の時に入寮し、1年後に初めてプロ契約をしました。そこから35歳で引退するまで19年間プレイヤーでした。プロ選手の時は6、7年ほどセルビア国外でもプレーしました。プロとしてのキャリアには満足していて、子供の頃に描いていたプレーヤーとしての夢は、全て叶えています。

引退してからはバスケットから離れようと思っていました。でも、数か月経つと自分はバスケットが好きなんだなと思って。ちょうどルーマニアからオファーがあったので、トップリーグの男子チームで1年目はアシスタントコーチ、翌年から2年間はヘッドコーチとしてチームを指揮しました。そしてルーマニアで3シーズン目、終盤に女子セルビア代表のマリナ・マリコビッチヘッドコーチから連絡を頂き、当時彼女はトルコのクラブチームにいたのですが、個別に選手の指導を手伝ってほしいと言われました。そのままセルビア代表でも協力してほしいとのことだったので、セルビアではバスケットは一番人気があるスポーツですから、それは大変名誉な事。そこで男子から女子の指導をすることになりました。

――セルビアは男女ともに世界的に強いチームです。強さの源は何でしょうか?
ヴクサノヴィッチ とにかく練習です。後は子供の頃からバスケットに触れている。テレビで観たり、庭にリングがあったり。今だとインターネットで色んなプレーを見られますが、私が子供の頃はビデオテープで何度も見ていました。子供の頃からバスケットに触れて、バスケット選手になるために練習をする。その意欲がずっと続いているのだと思います。

ただセルビアもプロとしての意識が欠けている選手もいます。その点、日本人は真面目で言われたことをコツコツやりますね。

――最後に今季の意気込みをお願いします。
ヴクサノヴィッチ まずはチームとしてどんな相手にもハイレベルな試合ができるように。後はスピードあるバスケット。おそらくそれがファンが観たいバスケットだと思います。私たちにはそれができると信じています。ただそれはすべてプロセスを踏んだ上でできること。(前ヘッドコーチの)小嶋裕二三さんは長い時間をかけてチームを作って来ました。私たちはまだ(日本代表選手が直前合流などで)選手もそろっていないですが、シーズンに向けた最後のプロセスを経て、新しいシーズンに臨みたいと思っています。

ウラディミール・ヴクサノヴィッチ:1978年5月4日生まれ/セルビア出身/16歳からプロ選手となり、20年間、プレーヤーとしてヨーロッパのチームで活躍。引退後は、ルーマニアの男子クラブチームでアシスタントコーチを1年、ヘッドコーチを2年歴任し、2017年からは女子セルビア代表のアシスタントコーチに。今シーズンより、デンソーの指揮を執ることとなった

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