「自分としては今日が開幕だったので、楽しんでやろうと思って臨みました。思い切ってできたので、そこは良かったと思います」
10月10日の東京羽田ヴィッキーズ戦に76―62で勝利後、約17分半の出場で13得点を挙げたトヨタ自動車アンテロープスの山本麻衣は笑顔で試合を振り返った。
チームは10月5日に開幕戦を迎え、この試合が3試合目。だが、Wリーグの開幕2試合、同期間に中国で開催された「FIBA 3×3 U23 ワールドカップ2019」に出場していた山本にとっては、この試合が今シーズン初の試合となった。
今年の「3×3 U23 ワールドカップ」には、Wリーグからは山本を含めてトヨタ自動車の馬瓜ステファニー、三菱電機コアラーズの西岡里紗、そして大学生の永田萌絵(東京医療保健大学)が出場。
大会では、グループラウンドはD組2位での通過だったものの、決勝まで勝ち進むと、決勝ではロシアを破って初優勝を遂げた。ロシアは昨年大会の決勝で敗れた相手でもあっただけに、昨年大会にも出場していた山本にとってはリベンジを果たした形に。
この結果により、山本たちは男女全カテゴリーで日本史上初となる世界一の称号を手にした。さらに山本は大会MVPにも選出され、またシュートコンテストにも優勝している。
大会を終え、開催地の中国から帰国したのが10月7日の夕方。そこから自チームに合流し、10日の試合を迎えたのだから「正直、疲れは抜けていないです(笑)」と言うのも無理はない。
だが、「気持ちは切り替わっています。チャンピオンというのは中国にいる時に終わった感じで、日本帰ってきたら現実というか、トヨタも一回負けているので、自分たちがチームのプラスになればいいねと馬瓜さんとも話をしていました」という。
その山本は、10日の試合ではバックアップのポイントガードとして出場すると、隙あらば積極的に放つシュートで得点を重ね、ディフェンスではアジアカップMVPの本橋菜子にも執拗なマークで苦しめた。
「ディフェンスを求められることが多いので、ディフェンスで結果を残すためにも、集中していました。相手のバスケットは菜子さんが中心。そこを抑えるというのはチームの約束事なのでそれができて良かったです」と山本。
試合では、攻防において相手の当たりにも物ともしないタフさを見せていたが、それは3x3で身に付いたものでもあるよう。「当たりとか気にせずにできたかなと思います。体の強さは3x3を通して身についていると感じます」とも語った。
当面の個人の課題はディフェンスの安定。加えて「試合に出た時には思い切ったプレーでチームの流れを変えていきたいです」と意気込む。
10月23日に20歳を迎える山本は、最も注目すべき選手ともいえる。今シーズン、“山本麻衣”の名前を目にすることも多くなりそうだ。
文=田島早苗