2020.05.05

【#おうちWEEK企画】Bラボメンバーが描く「Wリーグ2019-20 ラストシーズンを飾ったアスリートたち」

wリーグを代表する選手が引退を発表(写真左上から時計回りに、伊集南、王新朝喜、篠原恵、山本千夏)[写真]=兼子慎一郎、伊藤大允
バスケットボールキングラボ会員

※バスケットボールキングのオンラインサロン『Bラボ』のメンバーによる記事です

文=たく(Bラボ)

 始まりがあれば、終わりは来る。「引退」アスリートにはいつかその決断をする時が訪れる。

 一般社会人も、退職、勇退、リタイヤ、さまざまに表現されることではあるが、スポーツ選手のそれは、現役の期間が短いこともあり、ほかの世界と違う特別な感情を伴うように思う。

 毎年現役から一線を退くアスリートは一定数あるが、2019-20シーズンのWリーグでラストシーズンを迎えた選手は特別な経験をすることとなった。

【衝撃だった今シーズンの引退リリース】
 この中で僕が引退の報を聞いて衝撃を受けた選手は以下の通りだ。※【】内はコートネーム

・デンソーアイリス:伊集南【ユイ】(’19アジア3X3 3位)
・東京羽田ヴィッキーズ:丹羽裕美【ユウ】(’09U19ワールドカップ12位)
            柳瀬さつき【グロー】  
            山本美緒 【ミオ】
・トヨタ自動車アンテロープス:水島沙紀【セナ】(’17アジア杯 優勝)
・富士通レッドウェーブ:山本千夏【ウィル】(’15アジア杯 優勝)
            篠原恵【リー】(’08U18ワールドカップ優勝)
            松本愛美【ナル】(’19ユニバーシアード4位)
・三菱電機コアラーズ:王新朝喜【ワン】(’16リオ五輪 ベスト8)

 日本代表選手を含むビッグネームがずらりとならび、ニュースが流れてくるたびに衝撃が走った。

【アスリートの活躍は色あせない】
 富士通の山本千夏選手、篠原恵選手は1991年生まれの28歳。東京成徳大学中学、高校から富士通に入社して10年の同級生だ。山本選手は生粋のシューターで2018-19シーズンは決定率54.9パーセントの驚異的な数字を記録してスリーポイント王になった。篠原選手は185センチのセンターとして長年富士通のインサイドを守ってきた。

 慶進高校、筑波大学出身の松本選手のリリースには驚いた。入社2年まだ24歳で2019年夏にはナポリのユニバーシアード大会に出場して4位入賞に貢献、富士通では勝負強い控えのガードとして活躍していた。この先日本代表のガードになれると秘かに思っていたので、もったいなく感じる。

 三菱の王選手は2016オリンピックでベスト8に躍進した”リオ戦士”だ。中国出身で岐阜女子高校、白鷗大学と進んで2013年に日本国籍取得後は2013年、2015年のアジアカップ優勝に寄与した。
実直にボックスアウト、リバウンドに体を張るセンタープレーヤーでフリースローでは片手でボールをセットしワンハンドで放るユニークなスタイルが印象的だった。

 センタープレーヤーでは羽田の丹羽選手もいち早く引退を表明していた。桜花学園高校、早稲田大学、トヨタ自動車から羽田で現役最後を迎える。羽田はチームがスモールラインナップなので丹羽選手のがんばりは貴重だった。金沢総合高校、専修大学出身の柳瀬選手の背番号は77、同期の秋元選手は7と、同時に起用されることも多くスリーセブン起用と楽しんでいた。安城学園高校、関西学院大学で活躍した山本選手も松本選手と同じ年の24歳、女性のスポーツ選手が長く続けるのは簡単ではないと考えてしまう。

 桜花学園で丹羽選手の一つ下に水島選手がいた。同校ではJX-ENEOSの渡嘉敷選手らと同級生だ。東京学芸大学からトヨタ自動車で6年間。日本代表でも何度も感動を与えてくれたクラッチシューターだ。クイックスローのスリーポイントシュートとドライブには痺れた。2017アジアカップで日本を優勝に導いたのは水島選手で間違いない。

 現役代表選手も決断した。デンソー伊集選手は3x3代表として、東京オリンピックを目指していたはずだ。現在29歳、2019 3x3ワールドカップ3位、アジアカップ3位、間違いなくこの夏の東京オリンピック出場を視野に入れていた。自身のツイッターでも「私は8月まで現役!と思って活動してきました」と書いている。沖縄出身(糸満高校→筑波大学)のアスリートらしく運動能力に長けていて、ボールハンドリングとトップ近くから放つスリーポイントシュートで観客を魅了してきた。東京オリンピック開催延期は選手にとっては、とてつもなく大きなものだろう。

【Wリーグファンは選手にエールを送りたい】
 2020年、世界は新型コロナウィルスによる未曽有の事態に陥った。そのために、Wリーグも2020年2月23日のリーグ戦を最後にプレイオフも含めてすべての試合が中断、中止となった。リーグ戦は、22試合のうち16試合の消化に終わった。

 消化不良の中でリーグ戦の最終順位と選手の各賞が決定した。1位JX-ENEOSサンフラワーズ、2位トヨタ自動車アンテロープス、3位富士通レッドウエーブ、4位トヨタ紡織サンシャインラビッツ。MVPは渡嘉敷来夢選手だった。

 1位JX-ENEOSから4位トヨタ紡織まで3ゲーム差である。残り試合数から順位の変動は十分にあり得た。

今シーズンのMVPにはJX-ENEOSの渡嘉敷来夢が選ばれた [写真]=伊藤 大充


 これは予期せぬ出来事であり、リーグの決断は支持する。しかし選手たちのやりきれなさはファンの一人として理解はできる。もって行き場のない気持ちのわだかまりが残るシーズンなのだ。

 私たちファンには選手の本当の悔しさや気持ちは理解できないだろう。ましてや、人生を懸けていつの頃か引退を決意したアスリートたちの気持ちは察するに余りある。

 Wリーグはプロスポーツではなく、企業スポーツだ。選手は社員である。特に女性は結婚、出産という人生の大事を迎えるタイミングと選手としてのピークを迎えるタイミングが重なるため、競技をいつまで続けるか選択は難しい。まだ、日本女子バスケ界は出産、子育てをサポートする体制が整っていないことは、出産を経てWリーグチーム無所属で代表復帰するしかなかった大崎(旧姓間宮)佑圭選手の例を見ればわかる。

 いずれにせよ、私たちWリーグファンにできることは、それぞれの選手のこれからと今後の日本バスケおよびWリーグにエールを送ることしかできない。

 伊集選手がツイッターでつぶやいた言葉が突き刺さっている。

「決して誰のせいではありません。自分で決めたことです。起きること全てに意味があると思っています。」

 引退する選手の皆さんお疲れさまです。

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