2020.09.23

トヨタ紡織は今季も台風の目になれるか、カギを握るのは19歳のエース・東藤なな子

昨季新人王に輝き、今季はエースとしてチームをけん引することが求められる東藤[写真]=山田智子
日本サッカー協会を経て、フリーランスのスポーツライター・カメラマンに。東海地方を拠点に、サッカー、バスケットボールなど様々なスポーツの取材を行う。

「2年目のジンクス」という言葉は、どうやらこの選手には無縁のようだ。

 2019ー20シーズン Wリーグのルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝き、日本代表候補にも選出されたトヨタ紡織サンシャインラビッツの東藤なな子。昨年1月、名門・札幌山の手高校からアーリーエントリーで加入した東藤は、ルーキーながら16試合すべてでスターターを務め、スピードを生かしたドライブを武器に平均14得点(リーグ8位)を記録。チームを過去最高のレギュラーシーズン4位(12勝4敗)へと押し上げた。

 2年目にしてチームの浮沈を握る若きエースに対して、当然ながら対戦チームは昨シーズン以上の徹底マークを敷いてくる。東藤もそれは織り込み済みで、相手の対策を上回るため、オフシーズンにはドライブから周りをクリエイトするプレーを強化してきた。

「昨シーズンでドライブという印象がついたと思う。周りのチームはアジャストしてくるので、自分に寄ったところからのパスと3ポイントシュートをこのオフシーズンで練習してきました」

 迎えた2019ー20シーズンの開幕戦、対戦相手は昨シーズンの2位のトヨタ自動車アンテロープス。昨年の皇后杯で苦杯を喫した、自分自身の成長を図るにはもってこいの相手だ。東藤はバックドアカットからのレイバックシュートで今季初得点を決めて会場を沸かせると、その後も攻め気全開で、チームハイの17得点6リバウンド2アシストをマーク。しかしチームは序盤で背負った大差を覆せず、60ー80で完敗した。

「昨日はリバウンドを取られた場面が多かったので、リバウンドを取り切ることを続けた」という第2戦は、出だしこそトヨタ自動車の勢いに押され、0ー7と先手を取られたが、開始3分に東藤がディープスリーを沈めて流れを変える。

 第2クォーターには23ー36と2ケタ点差を築かれたが、残り1分半からドライブ、リバウンドと東藤の連続得点で食らいつき、7点差でハーフタイムに。さらに第3クォーターには怒濤の巻き返しで、一度は2点差まで迫る粘りを見せた。

 しかし、そこまでだった。再び突き放されると、そこから追いつく力は残されておらず、最終スコア81-69で2連敗を喫した。

チームの浮沈は若きエースの進化にかかってる

ベンチからもチームを盛り上げる[写真]=山田智子

「今日はディフェンスからのオフェンスといい流れができていたんですが、第3クォーターの後半から足が止まってきたり、相手の高さに負けたり、決めるべきところで決めきれなかったり。そういう部分でトヨタ(自動車)の方が上だった。そこで差をつけられたと思います」と、東藤は冷静に課題を受け止めた。

 東藤自身は21得点8リバウンドと攻守で存在感を示し、要所では流れを引き寄せる強気のプレーでチームを引っ張った。中川文一ヘッドコーチから課されている「1試合平均15得点以上」というノルマはクリアしたものの、チームを勝たせることができず、自分のプレーについても口をついて出るのは反省ばかりだった。

「この2試合は(オフに準備してきたことが)全然できていない。ドライブの1対1からのシュートは行けているんですけど、そこからもっと周りを見てディフェンスに対応したプレーをできたらと思います」

 課題があるというのは、それだけ伸びしろがあるということだ。東藤と同じく2年目の齋藤麻未や、インカレ3連覇を達成した東京医療保健大学から加入したルーキーの平末明日香も、最後までアグレッシブな姿勢を貫き、開幕戦で2ケタ得点をマークしたこともポジティブな要素だ。

 苦しい時にチームを勝たせてこそ真のエース。トヨタ紡織が昨シーズンと同様、台風の目になれるかは、19歳の若きエースの進化にかかっている。

写真・文=山田智子

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