2022.03.08

山本麻衣(トヨタ自動車)と木村亜美(デンソー)…ミニバスから続く良きライバル関係

短い時間だったが熱いマッチアップを見せた山本麻衣(右)と木村亜美 [写真]=W LEAGUE
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 3月6日のトヨタ自動車アンテロープス戦、デンソーアイリスは、前半残り3分40秒の場面で、1月からアーリーエントリーで加入している木村亜美がこの試合初めてコートに立つ。

「途中から出る立場。ちゃんと準備してから自分の仕事をすることが課題です」というデンソーの木村 [写真]=W LEAGUE


 前日の試合では出番がなかった木村にとっては、これがトヨタ自動車との初対戦。このときマッチアップしたのが同じ1999年生まれで同級生の山本麻衣だった。

 実はこの2人、ミニバス時代からしのぎを削り、これまでも激しいマッチアップを繰り広げてきたライバルでもある。

 遡ること10年前、「第43回全国ミニバスケットボール大会」で山本の属する昭和クラブ(愛知県)と木村の属する赤坂クラブ(福岡県)が予選リーグで対戦。結果は、前半でリードを奪った昭和クラブが、赤坂クラブの追撃を振り切り4点差で勝利した。なお、この後、昭和クラブは勝ち進み優勝を果たしている。当時のことを木村は、「(相手チームに)すごい子がいるとは聞いていました。(対戦は)そこからですね」と振り返る。

 続く2度目の対戦は中学3年生の夏。「第44回全国中学校バスケットボール大会」の決勝戦で顔を合わせた。

 前年の大会で2年生ながらスターターとして藤浪中学校(愛知県)の優勝に貢献した山本にとっては連覇のかかる戦い。だが決勝では、木村擁する折尾中学校(福岡県)が、木村をはじめ、現在はともにシャンソン化粧品シャンソンVマジックに所属する橋口樹、川端日菜子といった得点力の高い3年生を中心に圧倒。71ー57で優勝を飾るとともに、赤坂クラブ出身の木村、橋口にとっては、ミニバスでのリベンジを果たした形となった。

 そして中学卒業後は、山本は地元愛知の桜花学園高校、木村は東京の伝統校・東京成徳大学高校の門を叩く。すると互いにエースガードに成長して迎えた3年生のインターハイ、準々決勝で三度対戦することに。このときは山本が34得点と爆発。試合も桜花学園が前半から主導権を握り、83ー54と大差で勝利を収めた。

 何かと節目の大会で対戦する山本と木村。高校卒業後は山本がトヨタ自動車、木村は東京医療保健大学に進んだため対戦はなかったが、今年、木村がデンソーへ入団したことにより、約4年ぶりに公式戦でのマッチアップが実現したのだった。

「なんか、思い出しました。全中でも戦ったし、高校もマッチアップすることがあったのですが、大学ではずっとしていなかったので。楽しいというか、ちょっとだけ燃えました」と目を細めた木村。山本も「久々な感じがしました。楽しみですねこれから。同級生同士でマッチアップできるので」と笑顔を見せた。

 木村より4年早くWリーグの世界に飛び込んだ山本は、着実に力を付け、今シーズンは大幅にプレータイムを伸ばし、攻防において大きな存在感を放っている。一方の木村は、まだチームに加入したばかり。3月6日の試合でも、33分54秒出場した山本に対し、木村は3分40秒に留まった。だが、東京医療保健大では下級生の頃から主軸を担い、昨年のインカレではキャプテンとして抜群のリーダーシップを発揮してチームを5連覇へとけん引。その実績は輝かしい。そんな木村は、1月からここまでWリーグでは5試合に出場し、「すごくいい経験をさせてもらっています」と言う。また、3x3女子日本代表として東京オリンピックに出場するなど、先を行く山本については、「率直にすごいなと思っていて、(山本の)活躍を見て勇気をもらい、自分も頑張らないといけないと思うので、負けずに頑張っていきたいです」とも語った。

 対する山本もこれまで東京医療保健大との練習試合などで木村を見て「スキルなどが上手くなっていて、自分も頑張らないといけないと刺激をもらっていた」とのこと。加えて、「昨シーズンまでは私自身、プレータイムがあまりもらえず、むずむずしていた気持ちがありました。でも、そういったときに亜美とか(同級生の頑張りの)おかげで腐らずに頑張り続けることができたので感謝していますし、これからもお互いに頑張っていけたらと思います」と熱い思いを語ってくれた。

ドライブでディフェンスを抜いた後に「もっと良い判断ができれば」と語ったトヨタ自動車の山本 [写真]=W LEAGUE


 木村がインカレで優勝したときにはお祝いメッセージを送るなど、度々連絡を取っていたという2人。「亜美かアミーゴ」(山本)、「マイマイ」(木村)と呼び合う司令塔たちは、これまでも互いの存在を認めながら高めあってきた。

 小学生のときから始まった山本と木村の“ライバル関係”。その戦いは、舞台を国内最高峰のWリーグに移し、続いていくこととなる。

取材・文=田島早苗

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