日本代表にとって39年ぶりのベスト8進出をかけた「FIBA 女子バスケットボールワールドカップ2018」の中国戦。日本は序盤こそ本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)、馬瓜エブリン(トヨタ自動車 アンテロープス)の得点でスタートダッシュに成功したが、若返った中国の高さと、効果的な3ポイントシュートを決められ、81-87で敗れた。
長岡萌映子(トヨタ自動車)は今大会初めてスターティングファイブに起用され、約28分間プレー。9得点3リバウンドに加え、2アシスト2ブロックを記録した。長岡の“らしさ”、つまりは彼女の持つ圧倒的な得点力を知っているファンからすれば物足りない数字かもしれない。ただ大会の数カ月前から調子が上がらず、主力チームからいわゆるBチームに落ちていた彼女が最後の最後でコートに戻ってきたことは、たとえ中国のビッグマンたちに対するディフェンスが役割だとしても、今後の日本にとってプラス材料と言っていい。
「調子を落として、自分としては最終メンバーに残るかどうかも不安な状況でした。それでもトムが私のことをずっと待ってくれたので、今大会はその熱意というか、期待に応えたいという気持ちだけで毎日プレーしていました。だからこの4試合、うまくプレーできないことがすごく悔しくて、申し訳なくて……」
長岡は負けた悔しさとともに、大会に至る日々を振り返って、何度も言葉を詰まらせた。「今大会は自分のなかですごく葛藤がありました。昨年まで背負ってきたというとおかしいけど、ようやく自分が日本代表の主力チームに食いこめて、『さぁ、これから』というときに調子を落としてしまった。何よりアース(宮澤夕貴/JX-ENEOSサンフラワーズ)やリツさん(髙田真希/デンソー アイリス)があそこまで頑張っているなかで自分が何もできないことが一番歯がゆくて……。心の中にいろんな葛藤が生まれていたんです。今大会はそのメンタルのバランスをいかに保つかが大変でした」
どんな選手であっても調子が上がらないときはある。ただ今回の長岡にとってはその時間があまりにも長すぎた。長すぎたからこそ、ネガティブに捉える時期もあったが、一方でそれでも自分に期待している(トム・ホーバス)ヘッドコーチの意気を、これまで以上に感じることができた。その経験は今大会のベンチスタートとともに、彼女にプレーヤーとしての新しい“羽根”を授けるだろう。
「ベンチからスタートすることで途中から試合に入っていく難しさもわかったし、歯がゆさなどいろんな思いを持ってベンチに座っていると知ることができました。これはすごくいい経験になりました。でもこれで終わりじゃないので、次に向けてレベルアップをして、またこの舞台に戻ってきたいと思います」
次に行われる世界規模の国際大会は、2020年の東京オリンピックである。スペインで誰よりも悔しい思いをした長岡だからこそ、2年後は“モエコらしさ”を出して世界に羽ばたくはずだ。
写真・文=三上太