2020.04.22

43年ぶりの優勝に五輪出場、豪中韓を倒したアジア4連覇の軌跡【FIBA CLASSIC GAMES日本女子編】

女子日本代表のアジア4連覇の偉業を振り返る[写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 FIBAの公式YouTubeで毎日配信されている『FIBA CLASSIC GAMES』を紹介する第3弾は『女子日本代表アジア4連覇の軌跡』。CLASSIC GAMESに配信されているのは2017年のFIBA女子アジアカップ決勝だけだが、アーカイブとして残る映像からアジア4連覇を振り返ってみたい。

 アジアカップの戦いは日本がバージョンアップしていく歴史そのものだ。2013年はこれまでなかなか勝てなかった中国と韓国の両国を倒し、2015年は12年ぶりとなるオリンピックへの扉を開け、2017年からは世界有数の強豪オーストラリアを倒している。4連覇を振り返れば、走力を生かした戦い方は不変でありながらも、3ポイントとピック&ロールを使った戦術が多様化し、インサイドのディフェンスが強化され、進化していることが分かる。

文=小永吉陽子

2013年決勝 日本 65-43 韓国
アジア3位からの脱却。黄金期を告げる43年ぶりのアジア制覇

●決勝フルゲーム
https://www.youtube.com/watch?v=c5Osk0K0fsw

 2012年のロンドンオリンピック出場を逃し、再スタートを切った大会。スタメンは長くガードコンビを組んでいる大神雄子と吉田亜沙美(JX-ENEOSサンフラワーズ)、インサイドの要である大﨑佑圭、そして足首の負傷から復活した渡嘉敷来夢(JX-ENEOS)とシューターとして台頭した宮元美智子という顔ぶれ。この大会ではシューターの宮元とディフェンスマンの櫻木千華(三菱電機コアラーズ)ら初の代表入りを果たした三菱電機組が存在感を示した。また渡嘉敷が平均17.1得点、8.9リバウンドと縦横無尽の活躍でMVPを獲得している。

 グループラウンドでは韓国に延長までもつれ込む戦いをしいられ(78-71)、中国にも苦戦(62-55)するも、決勝で再戦となった韓国戦ではフルコートディフェンスを仕掛ける日本の脚に韓国はついてこられなかった。大会を通しては7試合で平均失点54.4という堅守で、1970年以来となる43年ぶりのアジア制覇へと駆け上がった。中国が若手育成中、韓国が世代交代期に差し掛かる中、日本は大会終盤になっても走れる選手層を見せつけ、これからアジアで黄金期が始まることを告げた大会になった。

 試合後の映像にもぜひ注目してほしい。敵将のウィ・ソンウHC(ウリ銀行)と日本の選手一人一人が讃え合うシーンは、互いを知り尽くすアジアのライバルとしてリスペクトしあう心が伝わってくる。貴重な映像として、記憶に残しておきたいシーンだ。

2015年決勝 日本 85-50 中国
アウェイで中国を一蹴し、12年ぶりの五輪出場を決めた大会

●決勝中国戦ハイライト
https://www.youtube.com/watch?v=d9cy1iD6CjY

●グループラウンド中国戦ハイライト
https://www.youtube.com/watch?v=ACacOU8zMh0

 決勝ではアウェイの地で中国に35点もの大差をつける圧勝。アジア連覇を果たすとともに、アテネ大会以来、12年ぶりとなるオリンピックの出場権を獲得した。

 圧巻の走りを展開した決勝だけ見れば、日本の強さが際立つだろう。しかし準決勝までは苦戦をしいられている。渡嘉敷来夢がWNBAでプレーするシアトルから大会直前に合流し、チーム練習がほとんどできないままに挑んだ大会だったからだ。

 しかし、そうした苦労は百も承知で日本のエースは海外に修行に出ている。渡嘉敷がWNBAで身につけたのはどんな状況でもエースとして働く対応力であり、チームもエースが加わった戦術に徐々に適応していった。そうして、選手個々の役割が徹底され、チーム力が融合したのが決勝であり、その爆発力たるや「私たちはまだまだ伸びる!」と選手の誰もが今後への手応えをつかんだほどだった。

 そんな中でこの大会のハイライトとなったのは、グループ1位をかけた中国との戦い。激闘のフィナーレは「自分が責任を背負う」と誓ったキャプテン吉田亜沙美の覚悟が逆転へのラストショットへとつながったのだ。内海知秀ヘッドコーチは大会のポイントとして「若手が加わり、勢いがある新しい日本代表を見せたい」と語っていたが、その勢いの象徴となった本川紗奈生(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)や山本千夏の爽快な走りっぷりも印象深い。

 残念ながらこの大会はフルゲームでの配信が残っていないが、グループラウンドと決勝の中国戦のハイライトで興奮を味わってほしい。

2017年決勝 日本 74-73 オーストラリア
藤岡、水島の台頭と支えたリオ組。強敵オーストラリアを倒してV3

●決勝フルゲーム
https://www.youtube.com/watch?v=9Tw6qvSvR38&t=5872s

 長い歴史を振り返ったとき、2017年はターニングポイントとして記憶に残る大会になるだろう。リオデジャネイロオリンピックで20年ぶりのベスト8へ躍進したその翌年、アジアにオセアニア勢が加わった新たな局面の中で3連覇を達成したのだ。

 そして、代表キャリアが長い選手たちにとってみれば難しい大会でもあった。リオ五輪の翌年とあって、吉田亜沙美、髙田真希(デンソーアイリス)、大﨑佑圭らはモチベーションやコンディション維持との戦いに直面していた。ついには膝の痛みを抱えていた吉田が大会途中で離脱。吉田はワールドカップの切符を獲得した準々決勝まで戦い、その責任を果たしたあとは後輩たちに託し、チームを支える役割に回った。

 そこで台頭したのがポイントガードの藤岡麻菜美(JX-ENEOS)だ。特に準決勝の中国戦では、得意のクロスオーバーからのドライブで19得点14アシストを記録し、独り立ちを超えてアジアトップのガードへと躍り出た。また準決勝では宮澤夕貴(JX-ENEOS)が16得点、長岡萌映子(トヨタ自動車アンテロープス)が14得点の活躍を見せ、次世代を担う同期トリオが目覚ましい成長を見せた。

 決勝ではさらなる激動のフィナーレが待ち受けていた。グループラウンドでは74-83で敗れたオーストラリアに対し、後半に大爆発したのが準決勝からスタメンに抜擢された水島沙紀。9本中7本(77.8%)という脅威の確率で3ポイントを決め、逆転勝利への突破口を開いた。

 そして忘れてはならないのが、決勝で窮地を救った町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)の存在だ。この大会では吉田、藤岡に次ぐ3番手ガードの位置づけだったが、連日の活躍でマークされた藤岡に変わり、速い展開から好アシストを次々に配給し、大会のエンディングを見事に務め上げた。そして髙田と大﨑もベテランらしく、勝負となる準決勝に照準を合わせ、安定感ある攻防でチームを支えたことを記しておきたい。

2019年決勝 日本 71-68 中国
3年ぶりのエース復帰とナコタイム。さらなる飛躍を誓う大会に

●決勝フルゲーム
https://www.youtube.com/watch?v=oUbZExNAcDg&t=6864s

 記憶に新しい2019年のアジアカップもまた激闘だった。リオ五輪以降、WNBA参戦と負傷により日本代表に参加できなかった渡嘉敷来夢が3年ぶりに戦列復帰を果たした。渡嘉敷の加入は何を変えたか? 一言で言えば、ディフェンスがより強固になったと言えるだろう。渡嘉敷が相手センターを守り切ることでダブルチームにいく場面が減ったことで、宮澤夕貴や赤穂ひまわり(デンソーアイリス)らフォワード陣がリバウンドに跳び込めるようになったのは大きな収穫。試合の入りでは高さに苦戦しても、リバウンドでは準決勝のオーストラリアに52対45本で上回り、決勝の中国には36対37本と互角に渡り合った。

 この大会のシンデレラガールになったのは司令塔の本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)。吉田亜沙美が一時的に代表から退き、藤岡麻菜美が負傷した中で、これまでとは違う速さと得点力を生かしたガードとしてかき回したのだから、相手にしてみれば厄介だったに違いない。特に決勝の第4クォーターで「ゾーンに入っていた」と本人が証言するほど神がかっていた『ナコタイム』はインパクト絶大で、大会MVPに選出された。また、コートに出れば3ポイントを決め切る仕事人、シューターの林咲希(JX-ENEOS)も鮮烈な代表デビューを飾った。

 毎大会、誰かが不在でも、誰かが新戦力として浮上し、成長していく中で遂げたアジア4連覇。「ウチは絶対にヘッドダウンしない」というトム・ホーバスHCの言葉のもと、今後はアジアでの戦いをステップとし、さらなる連携を高めたチーム作りを目指す。勝負は来年、東京オリンピックの舞台だ。