2020.11.06

吉田亜沙美から子どもたちへメッセージ。「活動が再開した今、バスケを楽しんで、目標を持ってほしい」

ゲストコーチとして参加していた吉田亜沙美をキャッチ [写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

「元気にやっていますよ」――そんな笑顔の挨拶からインタビューが始まった。3月に開催予定だったWリーグのプレーオフが中止になり、14年間在籍したJX-ENEOS(現ENEOS)を退団する発表があったのは5月末のこと。それ以降、吉田亜沙美が公の場に顔を出すのは初めてのことだった。

 11月1日、「三井不動産レジデンシャルpresents TOKYO SPORT PLAYGROUND Basketball Kid’s Academy」にゲストコーチとして参加した吉田亜沙美に、小中学生をコーチングした感想、コロナ禍の中で活動を再開した選手たちへのメッセージを聞いた。

文・写真=小永吉陽子

「こんな素敵なコートで子どもたちとバスケができて楽しかった」

「こんなに素敵なコートで子どもたちとバスケットができてすごく楽しかったです」と吉田 [写真]=小永吉陽子


――小中学生にバスケットボールのコーチングをした感想は?
吉田 すごく楽しかったです。バスケットボールに触るのも久しぶりでしたし、こんなに素敵なコートで子どもたちとバスケットができてすごく楽しかったです。久しぶりのバスケットだったので、子どもたちよりも自分が楽しんだかもしれません(笑)。子どもたちが楽しくやっていたから見に来ていた親御さんたちも楽しそうで、「今日、来てよかった」と思うイベントだったと思います。子どもたちはみんな真剣で、わからないことは素直に質問してきてくれたので、教えがいがありました。

――東京に新たにできたプレイスポット「TOKYO SPORT PLAYGROUND SPORT×ART」でバスケットボールをしてみた感想は?
吉田 はじめて、ここでプレーしたんですけど、この施設いいですね。東京を歩いてフラッとこの辺に遊びに来て、「ここは何だろう?」とのぞいてみたら、カラフルなコートがあって公園があるなんて、みんな楽しくなると思う。バスケットボールを知ってる人も、知らない人も、このカラフルなコートを見て興味を持ち「バスケやってみる?」となったらうれしいですね。

 日本は屋外にバスケットボールコートやリングがあまりないので、バスケットがなかなか身近に感じられないと思うんですけど、ここは期間限定だけど素敵なコートがあって、誰でも気軽にバスケットに触れ合えるのは、バスケットをやっていた身としてはうれしいし、ありがたいですね。

 実は、このコートは私の実家の近くなんです。実家の近くにはバスケットボールリングがある公園が一つしかないので、これからはここに来てバスケをしようかな(笑)

――以前、「教えることに興味がある」と言ってましたが、小中学生を指導するうえで大切だと思うことは何ですか?
吉田 私はミニバスでしっかりと基本を教わったので、小中学生には基本を大切に指導したい考えがありますが、それと同時にバスケットの楽しさを伝えたいです。特に、こういうイベントに自分が呼ばれる意味としては、バスケットの楽しさを広めることが役目だと思っています。

――オリンピックで活躍した日本代表選手がバスケの楽しさを伝えたら広まっていきますね。
吉田 女子バスケを幅広く認知してもらうには、日本代表で活躍した選手がこういうレッスンで広めていくのは大切ですよね。来年は女子も男子もオリンピックに出られるし、女子は国際大会で結果を残し続けているので、そういった意味では、小中学生にバスケを認知してもらえる環境は私が子どもの頃よりはあると思います。

 ただ、自分が小さかった頃は女子バスケットが強いとか、Wリーグの存在もオリンピックのことも知りませんでした。将来の夢として「オリンピックに出たい」「Wリーグでプレーしたい」という目標を持っている子どもたちもいると思うけど、この年代の選手はバスケットを好きになってもらうことがいちばん大切。

 そして、小学校、中学校の先までバスケを続けたいという選手がいたら、その気持ちを尊重して、どうやったらうまくしてあげられるか、ということを私は考えて教えてあげたいです。小中学校の年代はとにかくバスケを楽しんで、それから自分に合っている進路を見つけてほしいと思います。だから「バスケを楽しんで好きになったら、もっとうまくなれるよ」と伝えたいですね。

「Wリーグでの14年間に本当に感謝しています」

――今年の5月、JX-ENEOSを退団しました。Wリーグで14年間プレーして学べたことは何ですか?
吉田 勝ち続けなきゃいけないチームにいたので、メンタルやモチベーションを作って維持すること、戦う気持ちを持つことを学べたし、発揮できた14年間でした。勝つ楽しさも、勝ち続ける苦しさも両方を味わったので、これは他のチームではできなかったことだと思います。また、JX-ENEOSでも日本代表でもキャプテンをやらせてもらったので、責任感を学びました。チームをまとめるためにどう声掛けをするのか、どうやればチームが一つになれるか、本当に様々な事を考えながらキャプテンをやってきたので非常にいい経験ができました。Wリーグでの14年間に本当に感謝しています。

――吉田亜沙美にとって、Wリーグとはどんな舞台でしたか?
吉田 Wリーグというのは、100パーセントのパフォーマンスでプレーする自覚と責任があるところでした。100パーセントでやるから選手たちは楽しめているし、選手が楽しんでいるから見ている方たちも楽しかったと思う。「吉田亜沙美のプレーは楽しい」という声をファンの方から聞くとうれしかったし、自分もそう思いながらJX-ENEOSでやってきました。

――今は世界的なパンデミックで大変な状況ですが、活動を再開したバスケットボール選手たちにメッセージをお願いします。
吉田 今年はコロナの影響で満足にバスケットができず、大会がなくなったりして辛い思いをしたことと思います。今は徐々に日常に戻ってきているので、バスケットができることに感謝し、これまで我慢していたぶん、楽しんでバスケットをしてほしい。そして、自分の目標や夢を持ってそこに向かってほしいです。高い目標を持つことで頑張る力が沸いてくるので、目標を持つことはとても大事だと伝えたいです。

活動を再開した選手たちにメッセージを送ってくれた [写真]=小永吉陽子

 現在の吉田は競技からは離れており、去就についての答えは出ていない。2018-19シーズンにWリーグ11連覇を達成し、一度は現役を引退。しかし半年の休養後「東京オリンピック出場にチャレンジしたい」との熱い思いから、JX-ENEOSの選手として復帰。2年ぶりに日本代表にも選出され、東京オリンピックのアジア予選と世界予選の2つの国際大会に出場して存在感をアピールしてきた。

 だが、新型コロナウイルスの猛威によって東京オリンピックが1年延期。以前に大きな膝のケガをしている33歳の吉田にとって“あと1年”は「ものすごく長い」と明かす。

「現役続行も選択肢としてありますが、まだ決めることができません。焦らずに自分が感じる思いを大切にして決めたい。答えを出したときには自分からファンの皆さんに報告します」(吉田亜沙美)